事業分野を絞り、敏捷に動くことを目的に1年前に分社化したHewlett Packard Enterprise(HPE)。11月末に英ロンドンで開催した「HPE Discover London 2016」ではハイブリッドコンピューティングとインテリジェントエッジの2つに絞ってビジョンと製品戦略を披露した。ここでは、「新しいフロンティア」とするインテリジェントエッジについてをまとめる。
全てがコンピュートする時代に
基調講演のステージに立った最高経営責任者(CEO)のMeg Whitman氏は、2020年には現在の3倍以上の210億台のスマートデバイスがあり、2020年のIoT市場規模は1兆7000億ドルに達するなどの予想を紹介しながら、「すべてのものがコンピュートする時代になる」と宣言した。2020年には人間一人に対し26台のスマートオブジェクトがインターネット上にある計算になるという。
増加の主な要因は、IoTを構成するセンサなどだ。「さまざまなことが起きているのはエッジだ。クラウドでもデータセンターでもない」「人、場所、モノが交わるところにインテリジェントを加える。このインテリジェンスを利用して、体験を改善できる」とWhitman氏。
具体的には、エッジとはこれまでのPC、そしてスマートフォンに加えて、マシン、センサ、監視カメラと多様化しており、単にデータを収集するだけでなく、ローカルで分析して意味ある洞察を得られるようにする。これにより、事業上の意思決定を高速化できるという。
インテリジェントエッジがもたらすのは、1)ワークプレース(職場)体験、2)ブランド体験、3)オペレーションの効率化/ITとOTの融合、の3つだ。製品分野としては、1)と2)が、2015年に買収したArubaブランドのネットワークソリューション、3)はエッジゲートウェイ「Edgeline」となる。
HPEのCEO、Meg Whitman氏
音声コマンド、インドアの位置情報を統合
1)と2)を説明したのは、Arubaの共同創業者でHPE Arubaのシニアバイスプレジデント兼ゼネラル・マネージャとして事業部を率いるKeerti Melkote氏だ。
例えば、会議。会議が行われるミーティングルームを自動的に知らせるだけでなく、システムがユーザーの位置情報を検出することで、特定位置に来ると自動でコラボレーションセッションがスタートする。ステージでは、従業員が会議室に行く途中に資料の印刷を忘れた社員が、最寄にある共有プリンターを検出して印刷するというデモを行って見せた。従業員向けのアプリはインドアマップもあり、他の社員がどこにいるのかの位置情報もわかるという。
会議では、すぐに調べなければならない情報を「Amazon Echo」に語りかけて取得するというデモも行った。
将来の職場として従業員向けのアプリを見せた
土台になっているのはArubaのネットワークアクセス制御「ClearPass」だ。モバイルデバイスのオンボード向けのポリシー設定や管理ができるため、デバイスが適切な情報にアクセスできるようにする。IoTインフラの接続と保護も可能で、Amazon Echoを各会議室に設定するなど拡張性もあるという。
Whitman氏によると、職場体験の改善は同社のエグゼクティブセンターを訪問する顧客の中で優先順位が高まっているという。いつでもどこでも安全にコラボレーションや作業ができる環境を提供することは、生産性のアップだけでなく、優秀な社員のリテンションにもつながる。このような環境の構築は、「もはやCIOの課題ではなく、CEOの課題になっている」とWhitman氏は指摘する。
HPEはこの日、セルラー網を利用したIoT機器の接続と管理ができる「Mobile Virtual Network Enabler(MVNE)」、企業向けIoTソリューション提供でのNokiaとの提携、M2M相互運用性標準を利用したマルチベンダー/マルチネットワークのための「HPE Universal IoT Platform」などを発表している。