NTT Comで技術開発部長を務める山下達也氏
「何でもできるSD-WAN機器は今のところ市場に存在しない。自社の要求を満たした製品を選ぶといい」。NTTコミュニケーションズ(NTT Com)で技術開発部長を務める山下達也氏は12月12日、都内で会見し、SD-WAN分野を中心に、ソフトウェア定義型ネットワーク技術の現況を解説した。
NTT Comは、市場で入手できるSD-WAN製品を複数集め、テストを実施した(図1)。ユースケースとして、SaaS型クラウドサービスへの接続、NFV(仮想アプライアンス型のネットワーク装置)との連携、既存システムからのマイグレーションという3パターンを設定し、ユーザーがSD-WANに期待している通りの機能を備えているかどうかを検証した。
図1 SD-WANに期待する機能をSD-WAN製品が備えているかテストした
具体的には、検証したすべての製品について、SD-WAN機器を遠隔拠点に設置する際に、本当に手動での設定が不要なのかどうか、ネットワークを用途別に分離できるか、複数のネットワークをマルチテナント型で共存させられるか、遠隔拠点からインターネットへの直接接続は可能かなどを調べた。総括として「完全な製品はないので、要件に最も合う製品を使うしかない」と結論付けている(図2)。
図2 テストしたSD-WAN製品
SD-WANは、新興ソフトウェアベンダーやネットワーク機器ベンダーが主に市場を形成しており、導入事例も増えてきている。会見では、こうした事例をいくつか紹介した。現在では「WAN回線はメールやウェブと一緒で、アプリケーションの一種」との認識がユーザーの間で浸透しており、既にユーザー主導でWANを設計できるようになっているという。
SD-WANの今後について山下氏は「NFVの連携がキモになる」と指摘。例えば、映像を扱う用途で帯域を動的に変えるといった例がある。「ネットワークカメラの監視映像に変化が現れたことをトリガーに、ネットワーク帯域を一時的に拡大し、より高精細な監視映像を記録する」といった具合だ(図3)。
図3 SD-WANとNFVの連携例の1つとして、監視映像の変化に応じてネットワーク帯域を動的に変更する使い方がある
SD-WANとNFVの運用では、「オーケストレーションの仕組みが重要になる」と山下氏は指摘。NTT Comでは、自社開発のSD-WAN/NFV連携基盤ソフト「CLOUDWAN」を開発したという。
会見では、SD-WANのほかに、構内ネットワークを対象としたSD-LANや、データセンター同士をつなぐSD-Exchangeについても、それぞれ解説した。このうちSD-LANでは、無線LANと有線LANの一元管理が可能になることや、標的型攻撃を受けた際のインシデントレスポンスを効率化できることなどが注目されている。