「通信事業者やデータセンター事業者などのサービス事業者は、新しいビジネスモデルに移りたくても移れない、という課題を抱えている」――Dell EMCでサービス事業者向けの製品戦略を担当しているKevin Shatzkamer氏は、サービス事業者が置かれた状況を、こうとらえる。
米Dell Technologiesの企業情報システム分野のブランドであるDell EMCのインフラストラクチャソリューションズグループでサービスプロバイダ戦略およびソリューション担当バイスプレジデントを務めるKevin Shatzkamer(ケヴィン・シャッツケイマー)氏
Kevin氏が指摘するサービス事業者の課題は、抱えている既存システムが足かせになって新しい挑戦が出来ないことにより、成長とイノベーションが失速していることだ。さらに、ネットワーク資源への投資を増やすにつれて設備投資(CapEx)や運用費(OpEx)も同様に増えてしまっていることだ。
新しいサービスやビジネスモデルは、新しい技術やアーキテクチャに投資することによって実現する。こうした新しいツールの代表がNFV(仮想アプライアンス型のネットワーク機器)だとKevin氏は説く。
Kevin氏によれば、NFVはこれまで大きく3つの波を乗り越えてきた(図1)。(1)そもそも動くのか、物理アプライアンスを仮想化できるのかを問うフェーズ、(2)CPUの性能向上によって性能をスケールできるかを問うフェーズ、(3)特定のユースケースにおいて経済性を出せるのかを問うフェーズ、だ。
図1 NFVの歴史。これまで、NFVは動くのか、NFVはスケールするのか、NFVは経済的か、という3つの波を経験した。今後は第4の波として、大規模での実用が始まる
Dell EMCはこれまで、新しいビジネスモデルがNFVによってもたらされるかどうかを、PoC(概念実証)やフィールド試験によって探ってきた。現在も、サービス事業者を支援する形で、同時進行で10件ほどのPoCが動いている。
NFVの実用化にはパートナ企業の支援が必要
NFVには、第3の波の次にくる、第4の波がある。NFVのオペレーショナライゼーション、つまり、NFVを大規模な形で本番活用するフェーズだ。
しかし、Kevin氏によると、NFVはまだ大規模な形では使われていない。サービス事業者においては小規模な使われ方に限定されており、事業の中核を成すワークロードにおいて使われているわけではない。
サービス事業者の中核事業でNFVが使われていない理由は、NFVを目の前にしたサービス事業者の本音として、「どこから始めていいのか分からない」(Kevin氏)という認識だからだ。
例えば、製品の実装面では、ハイパーバイザとコンテナ、オープンソースとベンダー製などのように2極化が見られ、どちらを選べばよいのか分からない。また、NFVをどのシステムに適用すべきなのか、機械学習によるビッグデータ分析などを含めるべきなのかなど、難しい判断を迫られる。
分からないことが多いので、サービス事業者は「誰かにリードしてもらいたい」と考えているとKevin氏は指摘する。「リーダーとなってくれる企業がどこであれ、その企業にビジネスパートナーになってほしい」(Kevin氏)のだ。