IBMの社長兼最高経営責任者(CEO)Ginni Rometty氏は、企業が今後、人工知能(AI)、あるいはブロックチェーンや量子コンピューティングなどの技術をビジネス全体に広げるためには、適切な人材を抱えているかどうかが「重要な成功要因」の1つになると語った。
同氏は「われわれは、今後はすべての仕事が変化するという確信を持っている」と述べたが、これは今ある仕事がまったく別のものになってしまうわけではなく、仕事の一部が変化するだけだと付け加えた。
Rometty氏は、企業が必要なスキルを持つ人材を獲得することは可能だと考えており、それには企業が人材獲得の手段の幅を広げればよく、大学の学位ではなく、スキル重視で雇用すればよいと主張した。
同氏は、現地時間11月12日にオーストラリアのシドニーで開催されたIBM主催のイベント「Cloud Innovation Exchange」の基調講演で、「このデジタル時代を『インクルーシブ』なものにしようとわれわれ自身が努力しなければ、インクルーシブではない時代になってしまうのではないかと心配している。雇用する人材の幅を広げるべきだ」と述べた。
同氏はそのような取り組みの例として、IBMが進めているプログラム「Pathway to Technology Schools」を紹介した。この取り組みは、十分な公的サービスを受けられていない、社会的・経済的に恵まれないコミュニティの高校生などに技術的なトレーニングを提供することで、自社の将来的な「人材プール」を増やそうとするものだ。
Rometty氏は、「現在は20万人の学生のパイプラインがある。オーストラリアでは12校でこの取り組みを行っており、近く10校増やす予定だ。この取り組みは、わが社のクラウド事業の多くで、サイバーセキュリティを担う優れた従業員を生み出している」と説明した。
同氏はまた、IBMは「スキルをベースとした文化」を築いており、「Netflix for learning」というようなやり方で、自社のスキル不足の問題に対処していると述べた。
Rometty氏は「CES 2019」の冒頭でも、AIの影響で「すべての仕事は今とは違うものになる」と発言している。
この日の基調講演では、340億ドル(約3兆8000億円)を投じたRed Hat買収の背景にある同社の戦略についても語られた。
同氏は「Linux、コンテナ、Kubernetesは、次の時代のスタンダードになる。それがRed Hatを買収した理由だ。Red Hatはオープンソース界のリーダーであり、スタンダードとなるそれらのプロジェクトのリーダーだ」と述べ、オープンソースは、バックエンドのミッションクリティカルなアプリケーションをモダナイズしようとする企業を支援する際の鍵になると強調した。
Rometty氏は、「すでに業務の20%がクラウドに移行したが、80%はまだ残っている。それらのミッションクリティカルなアプリケーションのあるものは、よく見ればどれもそれぞれ異なっている。使われている場所も、セキュリティも、規制環境も違うため、移行には複雑さが伴う」と述べた。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。