2024年 非プライムの販社/SIerがSaaSによって業務システム導入を促進する方法
調査設計/分析/執筆: 岩上由高
ノークリサーチ(本社〒160-0022東京都新宿区新宿2-13-10武蔵野ビル5階23号室 代表:伊嶋謙ニ TEL:03-5361-7880URL:http//www.norkresearch.co.jp)は非プライムの販社/SIerが業務システム導入を促進する手段としてSaaSが有効である点に着目し、その分析結果を発表した。本リリースは調査レポートに追加の集計や分析を行う「ブリーフィングサービス」の実施例として、「2023年版 中堅・中小企業のITアプリケーション利用実態と評価レポート」に追加の集計/分析を行ったものである。
<SaaSは非プライムの販社/SIerが業務システム導入提案を成功させるための有効な手段>
■SaaSのワークフローでは非プライム販社/SIer経由の割合がプライム販社/SIerの約3倍
■「個人単位の業務フロー効率化」がSaaSのワークフローにおける今後の差別化ポイント
■給与・人事・勤怠・就業管理のSaaSではタレントマネジメントの要素を取捨選択して提案
■SaaSのワークフローでは非プライム販社/SIer経由の割合がプライム販社/SIerの約3倍
専任のIT部門を擁する大企業と異なり、中堅・中小企業ではIT活用の意思決定を一手に担う役割や組織が定まっていないことも多い。その結果、相談や購入の窓口も多岐に渡り、尚且つ変化しやすい。とは言え、日頃から支援を受けている「最も主要な販社/SIer(プライムの販社/SIer)」の影響力が大きい点も無視できない。実際、会計、販売、人事給与などの基幹系から始まり、グループウェアやWeb会議などの情報系、CRMなどの顧客管理系などといった業務システムではプライムの販社/SIerが提案する製品/サービスが受け入れられやすい傾向にある。
では、非プライムの販社/SIerは中堅・中小企業に業務システムを提案する機会がないのか?と言えば、必ずしもそうではない。
以下のグラフは計10分野の業務システムの導入状況を集計/分析した調査レポートから、ワークフロー・ビジネスプロセス管理について更なる分析を行った結果である。上段はプライムの販社/SIerから導入した場合、下段は非プライムの場合に該当する。
さらに、青帯はパッケージを社内設置している場合、赤帯はSaaSの場合を指す。
非プライムの販社/SIerはプライムの販社/SIerの場合と比べてSaaSの割合が約3倍に達していることがわかる。つまり、社内設置のパッケージ導入では従来からユーザ企業との密な接点があるプライムの販社/SIerが有利となりやすいが、新たにSaaSを導入するパターンであれば、非プライムであっても提案を進められる可能性が十分ある。後述するように他の業務システム分野でも同様の取り組みは可能だ。このようにSaaS提案を工夫することによって、非プライムの販社/SIerも中堅・中小市場で新たな顧客を開拓できる。本リリースではその際に留意すべきポイントを分析した結果の一部をサンプル/ダイジェストとして紹介している。
まず、次頁ではワークフロー・ビジネスプロセス管理でのSaaS提案の留意点について述べる。
■「個人単位の業務フロー効率化」がSaaSのワークフローにおける今後の差別化ポイント
本リリースの元となる調査レポートでは以下の選択肢を列挙して、ワークフロー・ビジネスプロセス管理の製品/サービスが今後持つべきと考える機能や特徴は何か?(今後のニーズ)を尋ねている。
P6-6C.最も主要な「ワークフロー・ビジネスプロセス管理」製品/サービスが今後持つべきと考える機能や特徴(複数回答可)
<<システム連携に関連する項目>>
・複数の業務システムを横断する業務フローも管理できる
・会計や販売などのマスタ情報を申請/承認に利用できる
・会計や販売などからも申請/承認の機能を呼び出せる
・Web会議やビジネスチャットからも承認/申請を行える
・システム連携のハブとしての役割を担うことができる
・RPAツールと連携して業務フローを自動化できる
・ノーコード/ローコード開発ツールを包含している
<<業務の効率化に関連する項目>>
・操作が直感的で分かり易く、手軽に導入/運用できる※1
・経費の申請/承認におけるペーパレス化を促進できる
・電子印鑑サービスと連携して脱印鑑化を実現できる※2
・個人レベルの作業フローも効率化することができる※3
・データ内容から業務フローの分岐を自動判別できる
<<申請/承認の処理に関連する項目>>
・Excelで作成した申請フォームをそのまま転用できる
・紙面で作成した申請フォームをそのまま再現できる
・申請/承認の経路や書式を部品化して再利用できる
・決裁や承認の状況を一目で分かり易く表示できる
・承認途中で人事異動があっても不整合が生じない
<<システム形態に関連する項目>>
・SaaSのみで全ての要件を満たすことができる
・パッケージとSaaSを選択/併用できる
・様々なクラウドサービスと連携できる
<<クライアント環境に関連する項目>>
・スマートデバイスでも全ての機能が利用できる※4
・Webブラウザで全ての機能が利用できる
以下のグラフは上記の中から※1~※4の回答割合を「プライムの販社/SIerから社内設置のパッケージを導入した場合」(青帯)と「非プライムの販社/SIerからSaaSを導入した場合」(赤帯)で比較したものだ。
SaaSのワークフローの中にはUIの分かり易さを差別化ポイントとしてアピールしているものもあるが、実際には「操作が直感的で分かり易く、手軽に導入/運用できる」(※1)の割合はプライム&パッケージと非プライム&SaaSで同程度となっている。また、「電子印鑑サービスと連携して脱印鑑化を実現できる」(※2)のニーズはプライム&パッケージと比べて非プライム&SaaSの方が低い。これはSaaSのワークフローでは既に電子印鑑サービス連携が盛んに行われているためと考えられる。つまり、「UIが分かり易く、電子印鑑サービスと連携できる」というだけでは、多数存在するSaaSのワークフローの中で頭一つ抜き出ることは難しい。そこで着目すべきなのが、「個人レベルの作業フローも効率化することができる」(※3)と「スマートデバイスでも全ての機能が利用できる」(※4)の値だ。この2つは非プライム&SaaSがプライム&パッケージを上回っている。そのため、非プライムの販社/SIerがSaaSのワークフロー導入を促進するためには「外出先などからもスマートデバイスで操作可能であり、個人単位の業務フローも効率化できる」といったニーズに応えていくことが重要となってくる。
次頁では他の業務システム分野での分析例について述べる。
■給与・人事・勤怠・就業管理のSaaSではタレントマネジメントの要素を取捨選択して提案
前頁まではワークフロー・ビジネスプロセス管理について述べたが、給与・人事・勤怠・就業管理も非プライムの販社/SIer経由でのSaaS導入が多い業務システム分野の1つである。(ここでは導入状況のグラフは割愛する) そこで、同分野における課題を尋ねた結果を元に、非プライムの販社/SIerがSaaSの給与・人事・勤怠・就業管理の導入を進める際の留意点を確認していく。
P5-6B.現時点で抱えている「給与・人事・勤怠・就業管理」の課題(複数回答可)
<<製品/サービスの構成や形態に関連する項目>>
・1つの製品/サービスでは対応できる機能が限定される※1
・複数の製品/サービスを組み合わせることができない
・プログラムを改変しないと個別要件を満たせない
・SaaSのみでは要件を全て満たすことができない※2
・パッケージをIaaS/ホスティングで利用できない
・パッケージとSaaSを選択/併用できない
・自社の業態に適したラインアップがない
・テンプレートがない、または種類が少ない
<<給与に関連する項目>>
・給与を上げるべきかどうかの判断ができない
・社員が納得する給与体系を実現できていない
・給与明細の発行/配布サービスと連携できない
・給与デジタル払いへの対応が不明確である
<<人材の育成や管理に関連する項目>>
・従業員の配置を最適化する方法が分からない※3
・どの従業員が成果を上げているか分からない
・業務内容に基づくジョブ型の採用/評価ができない
・人材の育成/管理を支援する機能が不足している
・人材の募集/採用を支援する機能が不足している※4
・従業員の生涯設計を支援する機能がない
・従業員のメンタルヘルスを考慮できない
<<法制度対応に関連する項目>>
・中小企業の残業割増率変更に伴う対処ができていない
・改正育児介護休業法に伴う対処ができていない
・電子申告/申請(e-Tax/eLTAX/e-Gov)と連携できない
以下のグラフは上記の中から※1~※4の回答割合を「プライムの販社/SIerから社内設置のパッケージを導入した場合」(青帯)と「非プライムの販社/SIerからSaaSを導入した場合」(赤帯)で比較したものだ。
※1と※2の値を見ると、パッケージでは他の製品/サービスと組み合わせた機能拡充が難しく(※1)、一方のSaaSでは全ての要件を満たすことが難しい(※2)といった状況であることがわかる。したがって、非プライムの販社/SIerがSaaSの給与・人事・勤怠・就業管理を訴求する際には既にプライムの販社/SIerによって導入されているパッケージを補完する形で提案することが有効だ。その際の差別化ポイントとして着目すべきなのが「従業員の配置を最適化する方法が分からない」(※3)と「人材の募集/採用を支援する機能が不足している」(※4)といった課題だ。これらの課題を解決するSaaSを提案できれば、他社のSaaSと比較した場合の優位性を保ちながら、既存パッケージを補完して中長期的にはリプレースするといった戦略を進めることができる。※3と※4は「タレントマネジメント」に該当する領域だが、同領域は人材の採用から育成まで多岐に渡るため、タレントマネジメントを掲げる製品/サービスは高機能かつ高価格となりやすい。非プライムの販社/SIerがSaaSの給与・人事・勤怠・就業管理を訴求する際は、中堅・中小企業が必要とするタレントマネジメントの機能要素は何か?を適切に見極めることが大切だ。(ここでは割愛しているが、実際に※3や※4の他にも差別化ポイントとなる項目が存在する)
次頁では、本リリースで取り上げていない業務システム分野の分析結果などに関する案内を掲載している。
本リリースの元となる調査レポートとブリーフィングサービスのご案内
本調査レポートは「2023年版 中堅・中小企業のITアプリケーション利用実態と評価レポート」に追加の集計/分析を加えた内容をWeb会議にて解説する「ブリーフィングサービス」の実施例を紹介したものです。
「2023年版 中堅・中小企業のITアプリケーション利用実態と評価レポート」の詳細
(リンク »)
【調査レポートの対象企業属性】(有効回答件数:1300社)
年商: 5億円未満 / 5億円以上~10億円未満 / 10億円以上~20億円未満 / 20億円以上~50億円未満 /50億円以上~100億円未満 / 100億円以上~300億円未満 / 300億円以上~500億円未満
業種: 組立製造業 / 加工製造業 / 建設業 / 卸売業 / 小売業 / 流通業(運輸業) /IT関連サービス業 / 一般サービス業 / その他:
その他の属性: 従業員数(10区分)、地域(9区分)、「IT管理/運用の人員規模」(12区分)、「ビジネス拠点の状況」(5区分)
【調査レポートで分析対象となっている業務システム分野】
P1. ERP
P2. 生産管理
P3. 会計管理
P4. 販売・仕入・在庫管理
P5. 給与・人事・勤怠・就業管理
P6. ワークフロー・ビジネスプロセス管理
P7. コラボレーション(グループウェア/ビジネスチャット/Web会議)
P8. CRM
P9. BI
P10. 文書管理・オンラインストレージサービス
【本リリースで分析を行った設問項目】
*には1~10の数値が入り、上記に列挙したP1~P10の分野が該当します
P*-2S2.最も主要な製品/サービスの導入元
P*-5A.最も主要な製品/サービスの運用形態(複数回答可)
P*-6A.最も主要な製品/サービスに関して評価/満足している機能や特徴(複数回答可)
P*-6B.現時点で抱えている課題(複数回答可)
P*-6C.最も主要な製品/サービスが今後持つべき機能や特徴(複数回答可)
【ブリーフィングサービスのご案内】
本リリースでは「非プライムの販社/SIerがSaaSの業務システム提案を成功させるためには何が必要か?」という命題の元に以下の分析を行っています。(2ページ目と3ページ目の分析結果は標準の調査レポートには含まれていません)
本リリース1ページ目: ワークフロー・ビジネスプロセス管理について、設問「P*-2S2」を軸として設問「P*-5A」を集計することで、導入元別の運用形態の割合を比較し、非プライムの販社/SIer経由でのSaaS導入割合が高いことを確認
本リリース2ページ目: ワークフロー・ビジネスプロセス管理について、設問「P*-2S2」と設問「P*-5A」を軸として設問「P*-6C」を集計することで、導入元別かつ運用形態別の今後のニーズを分析し、非プライムの販社/SIerがSaaSのワークフローを提案する際の差別化ポイントを提言
本リリース3ページ目: 給与・人事・勤怠・就業管理について、設問「P*-2S2」と設問「P*-5A」を軸として設問「P*-6B」を集計することで、導入元別かつ運用形態別の課題を分析し、非プライムの販社/SIerがSaaSの給与・人事・勤怠・就業管理を提案する際の留意点を提言
上記のように個々のIT企業のニーズ(命題)に沿って、調査レポートのデータを個別に集計して今後の施策を提言するものが「ブリーフィングサービス」です。市販の調査レポートに加えて、個別の集計データ(Excel形式)と説明スライド(PPT形式)が納品物として含まれ、分析結果を説明するWeb会議(1時間程度)を実施します。価格は調査レポート込みで48万円~(税別)となります。(分析対象となる業務システム分野や設問の数によって費用は変動します) ご用命の際には弊社ホームページの「調査に関するお問い合わせ」フォームにてお問合せ/お申込みください。 (リンク »)
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