2024年 中堅・中小市場における会計管理パッケージと経費精算サービスの役割分担
調査設計/分析/執筆: 岩上由高
ノークリサーチ(本社〒160-0022東京都新宿区新宿2-13-10武蔵野ビル5階23号室 代表:伊嶋謙ニ TEL:03-5361-7880URL:http//www.norkresearch.co.jp)は中堅・中小市場における会計パッケージと経費精算サービスの役割分担に関する調査を実施し、その結果を発表した。本リリースは「2024年版 中堅・中小企業のITアプリケーション利用実態と評価レポート」内の会計管理分野に関するサンプル/ダイジェストである。
<「会計パッケージ」「会計SaaS」「機能特化型サービス」に分けて市場を整理することが大切>
■勘定奉行が導入済み社数シェア首位を堅持する一方、今後はERP製品/サービスも伸びる
■経費精算サービスとSaaS形態の会計サービスでは導入元などの市場構造が異なっている
■「予実管理」を会計管理パッケージと経費精算サービスのどちらが担うか?が今後の課題
調査時期: 2024年7月~8月
対象企業: 年商500億円未満の中堅・中小企業1300社(日本全国、全業種)(有効回答件数)
対象職責: 情報システムの導入や運用/管理または製品/サービスの選定/決済の権限を有する職責
※調査対象の詳しい情報については本リリース5ページを参照
■勘定奉行が導入済み社数シェア首位を堅持する一方、今後はERP製品/サービスも伸びる
本リリースの元となる調査レポート「2024年版 中堅・中小企業のITアプリケーション利用実態と評価レポート」では、10分野の業務システム製品/サービスの社数シェアやユーザ評価を集計/分析している。以下はその中の会計管理における導入済み/導入予定の社数シェア上位の製品/サービスを中堅・中小企業全体(年商500億円未満)で集計したものだ。
導入済み社数シェアで「勘定奉行」が首位を堅持する一方、今後の導入予定シェアでは「SMILEシリーズ」「OBIC7」「GLOVIAシリーズ」といったERP市場でシェア上位に位置する製品/サービスが高い値を示している。また、2024年版の調査レポートでは従来の会計パッケージやSaaS形態の会計サービスだけでなく、経費精算サービスも選択肢に追加して最新動向の集計/分析を行っている。実際、上記のグラフでも「楽楽精算」や「HRMOS(ハーモス)経費/eKeihi」といった経費精算サービスがシェア上位に位置している。次頁以降ではそうした分析結果の一部を調査レポートのサンプル/ダイジェストとして紹介している。
■経費精算サービスとSaaS形態の会計サービスでは導入元などの市場構造が異なっている
4ページに列挙されているように、本リリースの元となる調査レポートでは50項目超に渡る製品/サービスの具体名を挙げて、導入済み/導入予定の社数シェアを集計/分析している。以下のグラフはそれらを<<主要なパッケージ(クラウドを選択できる場合も含む)>>、<<SaaSとして提供されているもの>>、<<経費精算に特化したサービス>>、その他の製品/サービス、ERP/基幹系システムの一機能として利用、独自開発システムの6つのカテゴリに分けて集計した結果である。
中堅・中小企業における会計管理分野の製品/サービスは「勘定奉行」「弥生会計」「PCA会計」などの中小向けに強みを持つ老舗ベンダのパッケージ(クラウドも含む)(※1)、「SMILEシリーズ」「OBIC7」「GLOVIAシリーズ」などのERP市場でもシェア上位に位置する製品/サービス(※2)、「マネーフォワードクラウド会計」「freee会計」などの新興クラウドサービス(※3)が混在する状況となっている。昨今では会計や販売といった個々の基幹系システムからERPへの移行が進んでおり、それが前頁のグラフで※2の導入予定シェアが高いことや「ERP/基幹系システムの一機能として利用」(※4)の導入済みシェアが高いことの背景となっている。つまり、ERPを構成する会計管理パッケージとして導入が検討されて(※2の導入予定シェアが高い状態)、導入後はERPとしての活用が進む(※4の導入済みシェアが高い状態)といった段階を踏んでいる。上記のグラフで<<主要なパッケージ(クラウドを選択できる場合も含む)>>の導入予定シェア(橙帯)が導入済みシェア(青帯)を上回っているのも主にこうした要因による。もう1つ着目すべき点が、上記のグラフで<<経費精算に特化したサービス>>が<<SaaSとして提供されているもの>>の値を上回っていることだ。以下のグラフは上記3つのカテゴリ毎に会計管理の導入元を尋ねた結果である。 <<SaaSとして提供されているもの>>は開発元ベンダからの導入が比較的多い一方で、<<経費精算に特化したサービス>>は<<主要なパッケージ>>と似た傾向を示している。従来、経費精算は会計管理パッケージのオプション機能と捉えられてきたがペーパレス化による業務改善や法制度対応(特にインボイス制度導入に伴って3万円未満の経費も領収書が必要になった点)の必要性が高まってきた。こうした変化に対処するため、経費精算に特化したクラウドサービスを既存の会計パッケージと併用することが現実解の1つになっていると考えられる。このように経費精算サービスの普及はSaaS形態の会計サービスとは構造が異なる。中堅・中小向けに基幹系の製品/サービスを訴求する際にはこうした違いを理解しておくことが大切だ。本リリースの元となる調査レポートでは年商別の傾向なども加味しながら、こうした市場構造について詳しく分析/解説している。
■「予実管理」を会計管理パッケージと経費精算サービスのどちらが担うか?が今後の課題
さらに、本リリースの元となる調査レポートでは、以下の項目を列挙して「会計管理の製品/サービスが今後持つべきと考える機能や特徴(今後のニーズ)」についても尋ねている。(同様に「導入済み製品/サービスに関する課題」も尋ねている)
会計管理におけるニーズ項目
<<経営支援に関連する項目>>
・AIを活用した経営の分析やシミュレーションができる
・経費を迅速に把握し、予実管理の精度を向上できる
・収益予測やシミュレーションによる予実管理ができる
・予算の超過が発生したことを自動的に通知してくれる
・会計データを金融機関の与信判断に活用できる
<<仕訳や監査に関連する項目>>
・申請/承認によって仕訳のミスや改ざんを事前に防げる
・AIを活用した監査支援や異常値検出を行える
・一部の仕訳作業を自動化できる
<<決算処理や連結会計に関連する項目>>
・決算の早期化/短期化によって経営判断を迅速化できる
・連結会計やグループ決算に対応できる
・複数企業を跨ぐ会計処理(JV会計など)に対応できる
・特定の国独自の会計制度にも対応できる
・e-TaxやeLTAXなどの電子申告と連携できる
<<インボイス制度や電子帳簿法に関連する項目>>
・OCR読み取りで請求書や領収書を自動で仕訳/区分できる
・売掛/債権データを入金データと照合して自動で消込できる
・クラウド経由で様々なデータ連携を一括で行う仕組みがある
・適格請求書を保存するためのストレージサービスを利用できる
・デジタルインボイスの標準規格に沿ったデータ連携ができる
・改正電子帳簿法のJIIMA認証を受けた製品/サービスである
・改正電子帳簿法の検索/改ざん防止要件に対応できる
・改正電子帳簿法のタイムスタンプ要件に対応できる
<<クラウドに関連する項目>>
・パッケージとSaaSを選択/併用できる
・様々なクラウドサービスと連携できる
<<その他>>
・その他:
以下のグラフは上記に列挙したニーズ項目を<<主要なパッケージ>>、<<SaaSとして提供されているもの>>、<<経費精算に特化したサービス>>のカテゴリ別に集計した結果の中から、経費精算サービスの今後を考える上で重要と考えられる項目を抜粋したものだ。 経費精算サービスは主要な会計パッケージやSaaS形態の会計サービスと比較すると、経営の分析/シミュレーションのニーズ(※1)はやや低いが、予算超過の自動通知(※2)や適格請求書保存のためのストレージ(※3)のニーズは高いことがわかる。
この結果は前頁に述べた経費精算サービスが普及した背景とも合致している。ただし、予実管理の機能(※2)は主要な会計パッケージにも備わっていることが多いため、経費精算サービスに予実管理機能を安易に実装すると「予実管理のサイロ化」を引き起こす可能性もある。さらに昨今では既存の会計パッケージとの併用を前提として予実管理の機能を提供するクラウドサービスも登場してきている。ここではその結論は割愛するが、本リリースの元となる調査レポートではその他の課題/ニーズを踏まえた上で、こうした様々な機能をどのように実装/実現していくのが最善か?を分析/提言している。
補記:社数シェア集計/分析の対象となっている会計管理製品/サービスの一覧
本調査において選択肢に記載した会計管理製品/サービスの一覧は以下の通りである。選択肢に掲載される製品/サービスは過去の調査結果や最新の市場状況などを踏まえた上で選定される。自由回答の中で多く挙げられたものは選択肢として新たに取り上げ、逆に一定期間以上シェア数値がないものは割愛するという方針で年毎に調整を行っている。製品/サービス毎の評価や導入費用の集計/分析はサンプル件数が一定以上の条件(件数が少ない場合は参考値扱いとなるケースもある)を満たした(※)のみが対象となる。
<<主要なパッケージ(クラウドを選択できる場合も含む)>>
GLOVIA SUMMIT/iZ 会計/smart 会計/きらら 会計 富士通(※)
OBIC7 オービック(※)
SMILEシリーズ(V/BS/Air) OSK(大塚商会) (※)
EXPLANNER/Z NEC (※)
スーパーカクテルCore会計 内田洋行(※)
勘定奉行(クラウドを含む) OBC(※)
財務大将(MJSLINK/Galileopt)/ACELINKシリーズ ミロク情報サービス(※)
かんたん!シリーズ/かんたんクラウド ミロク情報サービス
PCA 会計(hyperを含む)(クラウド/サブスクを含む) ピー・シー・エー(※)
Core Plusシリーズ 日本事務器
弥生会計(オンラインを含む) 弥生(※)
大蔵大臣 応研(※)
会計王 ソリマチ(※)
FXシリーズ、e21まいスター TKC (※)
JDL IBEXシリーズ JDL (※)
達人シリーズ NTTデータ(※)
ProActive会計 SCSK
ビズインテグラル会計 NTTデータ・ビズインテグラル(※)
SuperStream-NX スーパーストリーム
HUEシリーズ ワークスアプリケーションズ
OPEN21シリーズ ICSパートナーズ(※)
GrowOne 財務会計 ニッセイコム
ZeeM 会計 クレオ
経理上手くん 日本ICS
Weplat 財務応援 セイコーエプソン
ジョブカン会計/ツカエル会計 DONUTS/ジョブカン会計(※)
らんらん財務会計/わくわく財務会計 コラボ
会計らくだ BSLシステム研究所
<<SaaSとして提供されているもの>>
freee会計 freee (※)
マネーフォワードクラウド会計 マネーフォワード(※)
SmileWorks(会計ワークス) スマイルワークス
A-SaaS Mikatus、freee
フリーウェイ経理Lite フリーウェイジャパン(※)
BlackLine ブラックライン
円簿会計 円簿インターネットサービス
<<経費精算に特化したサービス>>
楽楽精算 ラクス(※)
HRMOS(ハーモス)経費/eKeihi イージーソフト(ビズリーチ) (※)
Concur Expense コンカー
TOKIUM経費精算 TOKIUM
J'sNAVI NEO JTBビジネストラベルソリューションズ
TravelersWAN 日立システムズ
Spendia TIS
経費BANK SBIビジネス・ソリューションズ
rakumoケイヒ rakumo
バクラク経費精算 LayerX
jinjer経費 jinjer
経費の獅子 エス・エー・エス
<<その他>>
その他の製品/サービス
ERP/基幹系システムの一機能として利用
独自開発システム
本リリースの元となる調査レポート
『2024年版 中堅・中小企業のITアプリケーション利用実態と評価レポート』
従来の社数シェアやユーザ評価に加えて、各アプリ分野の重要トピックに関する新たな分析/提言まで網羅した進化版レポート
【調査時期】 2024年7月~8月
【対象企業属性】(有効回答件数:1300社)
年商: 5億円未満 / 5億円以上~10億円未満 / 10億円以上~20億円未満 / 20億円以上~50億円未満 /50億円以上~100億円未満 / 100億円以上~300億円未満 / 300億円以上~500億円未満
従業員数: 10人未満 / 10人以上~20人未満 / 20人以上~50人未満 / 50人以上~100人未満 /100人以上~300人未満 / 300人以上~500人未満/ 500人以上~1,000人未満 /1,000人以上~3,000人未満 / 3,000人以上~5,000人未満 / 5,000人以上
業種: 組立製造業 / 加工製造業 / 建設業 / 卸売業 / 小売業 / 流通業(運輸業) /IT関連サービス業 / 一般サービス業 / その他:
地域: 北海道地方 / 東北地方 / 関東地方 / 北陸地方 / 中部地方 / 近畿地方 / 中国地方 /四国地方 / 九州・沖縄地方
その他の属性: 「IT管理/運用の人員規模」(12区分)、「ビジネス拠点の状況」(5区分)、「職責」(2区分)
【対象分野】
P1. ERP
P2. 生産管理
P3. 会計管理
P4. 販売・仕入・在庫管理
P5. 給与・人事・勤怠・就業管理
P6. ワークフロー・ビジネスプロセス管理
P7. コラボレーション(グループウェア/Web会議/ビジネスチャット)
P8. CRM
P9. BI
P10. 文書管理・オンラインストレージサービス
【設問構成】
有効回答件数1300社の中堅・中小企業に対して、まず最初に上記に列挙した10分野の業務アプリケーションのうちで 導入済み/導入予定の分野を尋ねる。その後、「導入済み/導入予定」と回答した分野について、製品/サービス名称を列挙した社数シェア、運用形態、端末形態、導入年、導入費用、課題とニーズ(分野によって選択肢は異なる)など、計31問を尋ねた結果を集計/分析している。また、上記の10分野とは別に業務アプリケーションの導入/更新に関する全般的な方針についても尋ねている。
【集計データ】
10分野のそれぞれについて、計31問に渡る設問を年商/業種/地域といった計7区分の属性別に集計したMicrosoft Excel形式の集計データが収録されている。シート数は10分野 × 31設問 × 7属性 = 2170に達し、これに設問同士を掛け合わせた幾つかのシート(設問間クロス集計データ)が加わる。
さらに、2024年版では「導入済みと導入予定のシェア比較」、「運用形態(オンプレミス/クラウド)や端末環境の変化」、「ニーズ項目に関する今後と現状の比較」など、販促やマーケティングの施策にすぐに利用できる要約データをまとめたMicrosoft Excel形式のファイルも新たに収録されている。
【分析サマリ】
各分野について、以下の章構成からなる分析サマリ(PDF形式、 10~20ページ)が収録されている。
第1章:製品/サービスの導入状況とシェア動向
第2章:運用形態と端末環境
第3章:製品/サービスの評価、課題、ニーズ
付表:選択肢として記載した製品/サービス一覧
さらに、2024年版では「クラウドERP/コンポーザブルERP」、「クラウド経費精算」、「生成AI」、「中小向けHRTech」、「中小向け業務フロー改善」など、分野固有の重要トピックについて従来よりも更に詳細な集計/分析を行い、今後の有効策を提言している 【発刊日】 2024年10月23日(予定) 【価格】 225,000円(税別) 特定分野のみの個別販売は行っておりません
本データの無断引用・転載を禁じます。引用・転載をご希望の場合は下記をご参照の上、担当窓口にお問い合わせください。
引用・転載のポリシー: (リンク »)
当調査データに関するお問い合わせ
株式会社 ノークリサーチ 担当:岩上 由高
〒160-0022 東京都新宿区新宿2-13-10 武蔵野ビル5階23号室
TEL 03-5361-7880 FAX 03-5361-7881
Mail: inform@norkresearch.co.jp
Web: www.norkresearch.co.jp
お問い合わせにつきましては発表元企業までお願いいたします。