ハイパーオートメーションを目指す取り組みがRPA市場の再活性化につながる
調査設計/分析/執筆: 岩上由高
ノークリサーチ(本社〒160-0022東京都新宿区新宿2-13-10武蔵野ビル5階23号室 代表:伊嶋謙ニ TEL:03-5361-7880URL:http//www.norkresearch.co.jp)は中堅・中小企業におけるRPAツール活用に関する調査を行い、同市場を再活性化させるためにIT企業が取り組むべき事柄を分析した。本リリースは「2024年版 中堅・中小企業におけるRPAおよびノーコード/ローコード開発ツールの活用実態レポート」のサンプル/ダイジェストである。
<AI活用が注目を集める状況を「複数業務の自動化」を実現するチャンスとして役立てるべき>
■「導入済み&拡大」と回答したユーザ企業の実態から「成功パターン」を見出すことが重要
■RPAツール活用における「ユーザ企業の認識」や「適用する場面や用途」を再確認すべき
■「自動化すべき業務内容の判断」よりも「自動化できる業務内容の拡大」の方が重要課題
■AIの力を借りたハイパーオートメーションは中堅・中小向けRPA活用でも必要とされている
対象企業: 年商500億円未満の中堅・中小企業1300社(日本全国、全業種)(有効回答件数)
対象職責: 情報システムの導入や運用/管理または製品/サービスの選定/決済の権限を有する職責
※調査対象の詳しい情報については本リリース5ページを参照
■「導入済み&拡大」と回答したユーザ企業の実態から「成功パターン」を見出すことが重要
以下のグラフは年商500億円未満の中堅・中小企業(有効回答件数1300社)に対して、RPAツールの活用状況を尋ねた結果を2023年と2024年で比較したものである。2023年はレイトマジョリティに向けてRPA導入を如何に進めるか?が焦点だった。(※)
※「2023年 中堅・中小市場のレイトマジョリティに向けたRPA導入提案における留意点」 (リンク »)
だが、その後に起きた生成AIの台頭などによって、RPAツールを取り巻く状況も変化している。以下のグラフでは「導入予定」が減少し、「導入無&予定無」が増加しているため、これまでと同様の訴求方法では更なる市場拡大は見込めない可能性がある。
さらに「導入済み&縮小」や「導入あり&廃止」は微増に留まるものの、「導入済み&維持」は減少、「判断不可」が増加となっており、縮小や廃止が今後増える展開も考えられる。こうした中で中堅・中小企業におけるRPA活用を再び活性化させるには概ね横ばいとなっている「導入済み&拡大」の企業層における実態を把握し、それを手本とした「成功パターン」を見出す必要がある。
導入済み&拡大:
既に導入済みであり、今後は活用範囲を更に拡大する場合
導入済み&維持:
既に導入済みであり、今後も現在の活用範囲を維持する場合
導入済み&縮小:
既に導入済みであり、今後は現在の活用範囲を縮小する場合
導入あり&廃止:
過去に導入していたが、現在は活用していない場合
導入予定:
現在は導入していないが、今後導入する予定の場合
導入無&予定無:
現在は導入しておらず、導入する予定もない場合
判断不可:
現在は導入しておらず、今後は判断できない場合
本リリースの元となる調査レポート「2024年版 中堅・中小企業におけるRPAおよびノーコード/ローコード開発ツールの活用実態レポート」では、有効回答件数1300社のユーザ企業を対象とした調査データを元に上記に述べた「成功パターン」を集計/分析し、中堅・中小向けRPA市場の再活性化に向けてIT企業が取り組むべき事柄を提言している。次頁以降ではそうした分析や提言の一部をサンプル/ダイジェストとして紹介していく。
■RPAツール活用における「ユーザ企業の認識」や「適用する場面や用途」を再確認すべき
本リリースの元となる調査レポートでは下図に示すように、中堅・中小企業におけるRPAの認識(※A)、RPAツールを適用する場面や用途(※B)、RPA活用における課題(※C)および取り組み/方針(ニーズ)(※D)といった多角的な観点から集計/分析を行っている。(カッコ内のF*は調査レポート内の該当する設問番号) ユーザ企業が前頁のグラフで触れた「判断不可」の状態に陥ることを未然に防ぐには、「そもそも、ユーザ企業はRPAツールというものをどう認識しているのか?」を把握しておく必要がある。これが※Aに該当する観点だ。調査レポートでは「RPAツールと言った場合に、PCの操作内容を記録するアプローチと操作手順を定義するアプローチのどちらが多く想起されるのか?」や「Excelのマクロ記録機能とRPAツールはきちんと区別できているのか?」などといった点での集計/分析を行っている。 また、RPAツール活用の「成功パターン」ではどのような場面/用途の活用が多く見られるか?も重要だ。これは※Bに該当する。調査レポートでは以下のような多岐に渡る場面/用途を列挙して、RPAツール活用の拡大につながる活用シーンはどれか?を明らかにしている。
F5-1. RPAツールを適用する場面や用途(複数回答可)
<<データの転記や照合に関する項目>>
・書式が定まった紙面の転記/照合 例) マークシート方式で記入する申込書をシステムに転記する作業を自動化する
・非定型である紙面の転記/照合 例) 名刺のように書式が一定でない紙面のデータを転記する作業を自動化する
・手書きを含む紙面の転記/照合 例) 手書きの自由記述を含むアンケートをシステムに転記する作業を自動化する
・Webサイトの転記/照合 例) 競合他社の価格情報を検索して一覧に整理する作業を自動化する
・メール文面の転記/照合 例) メールで送られた注文を販売管理システムに入力する作業を自動化する
<<データの配置や配信に関する項目>>
・ファイルを定期的に配置する 例) 毎日所定の時刻に売上速報をアップロードする作業を自動化する
・メールを定期的に配信する 例) 定例会議の前に事前資料をメールで送信する作業を自動化する
<<データの作成や加工に関する項目>>
・資料やレポートの作成 例) 会計システムのデータを経営層向けにグラフ化する作業を自動化する
・データの集約と修正 例) 店舗や拠点の売上データを統一された書式にまとめる作業を自動化する
・データや書式の変換 例) システムAのデータをシステムBに読み込むための変換作業を自動化する
<<高度な判断を伴う処理に関する項目>>
・Q&Aサイトの自動応答 例) 過去の履歴などを元にQ&Aサイトに書かれた質問に対して自動的に応答する
・メールの自動返信 例) 過去の履歴などを元にメールで送られた問い合わせに対して自動的に応答する
・ワークフローの分岐 例) 過去の履歴などを元にワークフローにおける条件分岐を自動的に判断する
・データ分析と予測 例) 顧客情報や履歴データを元に優良顧客や要注意顧客(支払遅延など)を推定する
<<その他>>
・その他:
次頁および次々頁では※Cおよび※Dに関する分析/提言の一部を調査レポートから抜粋して紹介している。
■「自動化すべき業務内容の判断」よりも「自動化できる業務内容の拡大」の方が重要課題
本リリースの元となる調査レポートでは前頁に述べたRPA活用における課題(※C)について、以下のような選択肢を列挙して詳細を尋ねている。(補記: 当該レポートではRPAとノーコード/ローコード開発ツール(NLDツール)の双方をテーマとしているため、<<>>で記載した設問グループ名称にはRPAツールに固有のものと両者に共通するものの2通りがある)
F3.RPAツール活用における課題(複数回答可)
<<RPAツールに固有の項目>>
・自動化できる業務内容がごく一部に限られる※1
・自動化できる業務内容がどれか判断できない※2
・ヒトによる手作業が残るため、導入効果が低い
・自動処理中にヒトの判断を挟むことができない
<<共通:ツール自体に関連する課題>>
・ツール固有のノウハウやスキルが必要になる
・従来通りに業務システムを構築した方が確実
・他システムとの連携が困難または煩雑である
・既存の開発ツールや運用/保守と合致しない
・処理性能やセキュリティ対策を強化できない
・ツール自体が将来的になくなる恐れがある
<<共通:その他>>
・その他:
中堅・中小企業がRPAツール活用において最も直面しやすい課題の代表例が「自動化できる業務内容がごく一部に限られる」(※1)および「自動化できる業務内容がどれか判断できない」(※2)である。そこで※1と※2をRPAツールの活用状況別に集計した結果が以下のグラフだ。「導入済み&拡大」のユーザ企業では※1の値が※2と比べて高く、また他の活用状況と比較した差異も大きい。 つまり、RPAツールを導入済みのユーザ企業に対してツール活用の更なる拡大を促すには、※2の課題よりも※1の課題を解決することを優先すべきということになる。RPAツール活用を提案するIT企業側としては、単一の業務における自動化で終わらせるのではなく、複数の業務にも視点を広げていくことが大切だ。
さらに、次頁ではRPA活用における取り組みや方針(※D)について述べていく。
■AIの力を借りたハイパーオートメーションは中堅・中小向けRPA活用でも必要とされている
前頁で述べたRPA活用における課題(※C)に加えて、調査レポートでは以下の選択肢を列挙してRPA活用における取り組み/方針(ニーズ)(※D)についても詳しく尋ねている。(<<>>で記載した設問グループ名称に関する補記は前頁の※Cと同様)
F4.RPAツール活用における取り組みや方針(複数回答可)
<<RPAツールに固有の項目>>
・業務の自動化を例示したテンプレートを利用する
・複数業務が連携した自動化を提案してもらう
・PC操作を元に自動化すべき業務を診断する
・自動化の適用範囲をペーパレス化に絞る
<<共通:ツールの導入/運用に関連する取り組みや方針>>
・まずは既存システム自体の改善を検討する
・既存システムをRPA/NLDツールで代替する
・RPA/NLDツールの代わりに生成AIを活用する
・IT企業に頼らず、自力でツールを活用する
・IT企業の支援を受けてツールを活用する
・反復的なアジャイル開発手法を採用する
<<共通:ツールの活用目的に関連する取り組みや方針>>
・デジタル化する業務を拡大するために活用する
・システム開発を短期化する手段として活用する
・システム改変を容易にする手段として活用する
・性能やセキュリティの確保手段として活用する
・IT担当/部門の負担軽減のために活用する
・IT支出を削減する手段として活用する
<<共通:費用やシステム形態に関連する取り組みや方針>>
・有償でも導入支援コンサルティングを利用する
・機能が限られても、無償/安価なツールを選ぶ
・処理量やデータ量に基づく従量性課金を選ぶ
・RPA/NLDツールの成果物はクラウドで運用する
<<共通:その他>>
・その他:
上記の中から、「複数業務が連携した自動化を提案してもらう」(※3)および「自動化の適用範囲をペーパレス化に絞る」(※4)を抜粋し、RPAツールの活用状況別に集計した結果が以下のグラフである。※4では「導入あり&廃止」の値が相対的に高く、※3では逆に「導入あり&廃止」 の値が低く、代わりに「導入済み&拡大」、「導入済み&維持」、「導入予定」が3割超となっている。※3では「導入済み&縮小」も3割弱である点に注意が必要だが、RPAツール市場の拡大という観点では自動化の範囲をペーパレス化に絞るよりも複数業務が連携した自動化を提案した方が有効であることが確認できる。
前頁と上記の結果を踏まえると、「複数業務が連携した自動化」を実現することがRPA市場の拡大には不可欠な要素となる。だが、業務が日々変化する状況下でデータ書式/構造が異なる複数のシステムを連携させることは容易ではない。そこでAIを活用したシステム間の連携によって、業務プロセス全体の自動化を目指す取り組みが「ハイパーオートメーション」である。本リリースの冒頭ではRPA市場に影響を与えた要因の1つとして生成AIの台頭を挙げた。 しかし、今後は中堅・中小向けのRPA活用においてもAIの力を借りたハイパーオートメーションの取り組みが求められていくと考えられる。
本リリースの元となる調査レポート
『2024年版 中堅・中小企業におけるRPAおよびノーコード/ローコード開発ツールの活用実態レポート』
ユーザ企業における認識、適用される場面や用途、課題/ニーズ、ツールの導入済み/導入予定シェア、支出額といった多角的な視点からAI活用と歩調を合わせた業務の自動化や迅速なシステム開発を実践するための成功パターンを提言
【対象企業属性】(有効回答件数:1300社、調査実施期間:2024年7月~8月)
年商: 5億円未満 / 5億円以上~10億円未満 / 10億円以上~20億円未満 / 20億円以上~50億円未満 /50億円以上~100億円未満 / 100億円以上~300億円未満 / 300億円以上~500億円未満
従業員数: 10人未満 / 10人以上~20人未満 / 20人以上~50人未満 / 50人以上~100人未満 /100人以上~300人未満 / 300人以上~500人未満/ 500人以上~1,000人未満 /1,000人以上~3,000人未満 / 3,000人以上~5,000人未満 / 5,000人以上
業種: 組立製造業 / 加工製造業 / 建設業 / 卸売業 / 小売業 / 流通業(運輸業) /IT関連サービス業 / 一般サービス業 / その他:
所在地: 北海道地方 / 東北地方 / 関東地方 / 北陸地方 / 中部地方 / 近畿地方 / 中国地方 /四国地方 / 九州・沖縄地方
その他の属性: 「IT管理/運用の人員規模」(12区分)、「ビジネス拠点の状況」(5区分)
【分析サマリ(調査結果の重要ポイントを述べたPDFドキュメント)の概要】
本調査レポートは中堅・中小企業における「RPA」および「ノーコード/ローコード開発」の2つのツール活用をテーマとしている。
そのため、調査結果の重要ポイントをまとめた分析サマリ(PDF形式)の章構成も以下のように2部構成となっている。
第1部: RPA
1-1. RPAツールの活用状況
「導入済み&拡大」「導入済み&維持」「導入済み&縮小」「導入あり&廃止」「導入予定」「導入無&予定無」「判断不可」といった詳細な選択肢を設けて、RPAツールの活用状況を2023年と2024年で比べた集計/分析を行っている。
1-2. RPAツールに対するユーザ企業の認識
そもそもユーザ企業はRPAツールをどのように認識しているのか(Excelのマクロ機能などと区別できているのか?など)を確認している。
1-3. RPAツールを適用する場面や用途
Webサイトや紙面の転記/照合などの基本的な自動化から、資料/レポートの作成やワークフローの自動分岐などの高度な自動化まで、計14項目の選択肢を列挙して、RPAツール活用を拡大するためにはどのような場面/用途の訴求が有効か?を分析/提言している。
1-4. RPAツール活用における課題やニーズ
RPAツール活用における課題(計21項目)およびRPAツール活用における取り組みや方針(計20項目)を集計/分析している。
1-5. RPAツールの社数シェアと導入費用
計38項目に渡る具体的な製品/サービス名を列挙した上で導入済み/導入予定のRPAツール社数シェアを集計/分析、さらにRPAツールの導入費用の傾向についても明らかにしている。 第2部: ノーコード/ローコード開発ツール(NLDツール)
2-1. NLDツールの活用状況
「導入済み&拡大」「導入済み&維持」「導入済み&縮小」「導入あり&廃止」「導入予定」「導入無&予定無」「判断不可」といった詳細な選択肢を設けて、NLDツールの活用状況を2023年と2024年で比べた集計/分析を行っている。
2-2. NLDツールに対するユーザ企業の認識
そもそもユーザ企業はNLDツールをどのように認識しているのか(HP作成やモバイルサイトに特化したツールも含めて捉えているのか?などを確認している。
2-3. NLDツールを適用する場面や用途
新規の業務システム開発、レガシーマイグレーション、クラウドサービス間の連携、Excel代替など、計10項目の選択肢を列挙して、NLDツール活用を拡大するためにはどのような場面/用途の訴求が有効か?を分析/提言している。
2-4. NLDツール活用における課題やニーズ
NLDツール活用における課題(計20項目)およびNLDツール活用における取り組みや方針(計20項目)を集計/分析している。
2-5. NLDツールの社数シェアと導入費用
6カテゴリ計43項目に渡る具体的な製品/サービス名を列挙して導入済み/導入予定のNLDツール社数シェアを集計/分析、さらにNLDツールの導入費用の傾向についても明らかにしている。
【発刊日】 2025年4月21日(予定)
【価格】 225,000円(税別) RPAツールとNLDツールのどちらか一方のみの販売は行っておりません
本データの無断引用・転載を禁じます。引用・転載をご希望の場合は下記をご参照の上、担当窓口にお問い合わせください。
引用・転載のポリシー: (リンク »)
当調査データに関するお問い合わせ
株式会社 ノークリサーチ 担当:岩上 由高
〒160-0022 東京都新宿区新宿2-13-10 武蔵野ビル5階23号室
TEL 03-5361-7880 FAX 03-5361-7881
Mail: inform@norkresearch.co.jp
Web: www.norkresearch.co.jp
お問い合わせにつきましては発表元企業までお願いいたします。