2025年 RPAの教訓を活かしたAIエージェント提案
調査設計/分析/執筆: 岩上由高
ノークリサーチ(本社〒160-0022東京都新宿区新宿2-13-10武蔵野ビル5階23号室 代表:伊嶋謙ニ TEL:03-5361-7880URL:http//www.norkresearch.co.jp)はRPAの教訓を踏まえたAIエージェント提案のポイントについて考察/分析した結果を発表した。本リリースでは「2025年版 DX&AIソリューションの導入パターン類型化と訴求策の提言レポート」のデータを参照している。
<いきなり「AIによるタスクフローの自律実行」を提案してしまうと、RPAと同様の障壁に直面する>
■ 「AIエージェント」はRPAが登場した当初に期待を集めた「Cognitive RPA」の再来なのか?
■ 生成AIを利用中/利用予定の35%~50%がAIエージェントについても活用意向を示している
■ 一見すると遠回りだが、「まず単発のタスクでの生成AI活用の成功体験を積む」ことが大切
■ 「AIエージェント」はRPAが登場した当初に期待を集めた「Cognitive RPA」の再来なのか?
2025年はAIエージェント元年とも言われ、IT市場を活性化させる起爆剤としての期待が高まっている。一方、「AIエージェントはタスクを自律的に実行する」というフレーズを耳にした時、ユーザ企業だけでなくIT企業からも「RPAと何が違うのか?」といった質問を受けることが少なくない。
下図はRPAが注目を集めるようになった2017年当時、同分野の全体像を整理したものだ。RPAには
・Traditional RPA (広義のRPA) ルールを明記できる業務(Rule-based Task)の自動化
・Cognitive RPA (狭義のRPA) 認識/推論を伴ったヒトの判断が必要な業務(Judgemental Task)の自動化
の2通りがあり、「Cognitive RPA」によるタスクの自律実行はユーザ企業の業務効率を大幅に改善する手段として期待された。
しかし当時はこうした概念に技術が追い付かず、その後は「Traditional RPA」が主体となった。「Traditional RPA」では自動化の対象となるタスクフロー(業務シナリオ)を定義する必要がある。 この点は中堅・中小企業にとって敷居が高く、今日においても中堅・中小市場におけるRPAの普及を阻む大きな障壁の1つとなっている。
上記の経緯を振り返ると、現在の「AIエージェント」は「Cognitive RPA」の再来であるようにも見える。実際、RPA製品/サービスをAIエージェントとして刷新/再定義する動きも見られ始めている。そこで重要となるのはRPAで経験した「業務シナリオ定義」の障壁を繰り返さないことだ。次頁では2025年の最新データを参照しながら、この点について詳述していく。
■ 生成AIを利用中/利用予定の35%~50%がAIエージェントについても活用意向を示している
まずはAIエージェントとは何か?を改めて整理してみる。ノークリサーチではAIエージェントを『ユーザとの自然な対話を通じて情報システムのタスクフローを実行または定義できるアプリケーション』と定義している。 タスク実行の自律レベルや対象業務の範囲などによって細かく分類する流儀も幾つかあるが、 実際にAIエージェントをソリューションとして開発/提案する際に最も重要となるのが、「タスクフローを誰が定義するのか?」という点だ。つまり、AIエージェントは以下の2通りに大別できる。
・狭義のAIエージェント タスクフローの実行だけでなく、定義も自動で行える(下図の左側)
・広義のAIエージェント タスクフローの実行のみが自動化されており、定義は手動で行う必要がある(下図の右側)
先述の「Cognitive RPA」は自らタスクフローを定義することまでは言及していないので、「広義のAIエージェント」に相当すると捉えることができる。ただし、生成AIの登場によって
・マルチモーダル&非定型なデータの理解
・自然言語と業務フローロジックの橋渡し
が可能となった結果、 「広義のAIエージェント」は「Cognitive RPA」と比較して扱えるデータ種別や人間が理解しやすい入出力といった点で大きく進歩している。こうした「ヒトに優しい」といった点はAIエージェントが大きな期待を集める理由の1つと言える。
実際、生成AIを利用中/利用予定のユーザ企業におけるAIエージェント活用意向(利用中/利用予定の合算を集計した最新データ)(右グラフ)を見ると中小企業の値が相対的に低いものの、中堅企業/大企業のみならず小規模企業においても半数弱の高い値であることが確認できる。
とは言え、「広義のAIエージェント」はRPAと同様にタスクフローを定義する必要がある。 この課題に対処しないまま進むと、AIエージェントもRPAと同じ障壁に直面する可能性が高い。
では「狭義のAIエージェント」であれば、RPAが直面した障壁を乗り越えることが可能だろうか?次頁では、この点について考察していく。
■ 一見すると遠回りだが、「まず単発のタスクでの生成AI活用の成功体験を積む」ことが大切
近年では生成AIの技術が急速に進歩しており、その適用場面はAIチャットやコンテンツ生成のみならず、プログラミング作成や複雑な推論を伴う問題解決などにも拡大している。こうした急速な進歩を受けて、「狭義のAIエージェントによって、タスクフロー定義もAIに任せられるのでは?」という期待も高まっている。
だが、生成AIの技術的な進歩だけでは解決が難しい側面もある。例えば、「会議日程の調整」というシンプルなタスクフローを例に取って考えてみても、以下のようにAIだけでは判断が難しいポイントが幾つかある。
・誰の予定を最も優先するか ⇒ 参加者の役職、専門性、議題への関与など、いずれの基準を重視するのか?
・代理での参加を認めるか ⇒ 認める場合、代理を選択する基準や代理者が所属する部門の範囲は?
・社外の参加者への打診 ⇒ 異なるシステムを利用する社外の参加者との調整をどうするか?
これらは「どこまでをAIの判断に委ねるか?」の境界線を定めることに相当する。この判断は個々のユーザ企業の組織体制や
セキュリティ方針などに大きく左右されるため、生成AIが得意とする「不特定多数の大量データを学習した推論」だけでは適切な判断を導き出すことが難しい。
当然ながら、ユーザ側が 『役職の高い順に予定を優先、代理は同一部署内のみ認める、社外参加者の打診はAPI連携が可能な場合は相手方のスケジューラと自動連携、そうでない場合はメールで連絡』 などの指示を与えれば、AIエージェントは自律的に処理を進めることが可能だ。だが、これはユーザが自然言語でタスクフローを定義しているのと同じで、「広義のエージェント」と本質は変わりない。その結果、RPAと同じ課題を抱えることになってしまう。将来的には「狭義のAIエージェント」による判断も可能になるかも知れないが、当面はIT企業が上記の課題を回避する施策を講じる必要がある。
そこで現実解となるのが、「まず単発タスクでの生成AI活用の成功体験を積む」というアプローチだ。生成AIで何ができるか?どこまでAIに任せられるか?誤情報/誤判断はないか?などをユーザ側が十分に経験できていなければ、複数のタスクを繋ぐタスクフローを定義することも難しい。「2025年版 DX&AIソリューションの導入パターン類型化と訴求策の提言レポート」では以下のように多数の選択肢を列挙して、AIエージェント導入の入り口となる有望な生成AI活用の場面はどれか?を分析/提言している。 RPAの教訓をAIエージェント提案にも活かすには、こうした単発タスクからタスクフローへの段階的な提案を進めることが大切だ。(上記で触れた最新刊レポートの詳細は次頁を参照)
I4.生成AIサービスを適用する業務場面(複数回答可) (単発タスクの選択肢を抜粋して掲載)
<<文書の作成/編集>>
・ メールなどの非定型文面の自動作成 例) 顧客のクレーム内容を踏まえて最適な返答文の下書きを自動作成する
・ 定型書類(届け出など)の自動作成 例) スマホに記録した計測データを元に現場作業の報告書を自動作成する
・ 文章/図版の混在資料の自動作成 例) 文章で与えた論旨と図版概要を反映したプレゼン資料を自動作成する
・ 文書内容の要約や複数文書の統合 例) 複数の従業員が出した日報を統合/要約して課の日報を自動作成する
・ 文書内容のチェックや校正 例) 契約書を自動でチェックし、自社に不利な条件がないかなどを確認する
・ 音声からの文字起こし 例) 会議の音声データを元に議事録のテキストを自動生成する
・ 文書内容の翻訳 例) 文書をある言語から他の言語に翻訳する
<<従業員の業務や学習の支援>>
・ 履歴データに基づく対応の判断 例) 過去の取引履歴を元に、個々の事案での値引き可否を自動で助言する
・ 問い合わせに対する自動応答 例) FAQページやヘルプデスクにおいて従業員や顧客への回答を自動化する
・ 従業員のセルフラーニング支援 例) 生成AIサービス利用を通じて従業員のスキル向上を図る(外国語学習など)
・ 熟練者が持つスキルの継承 例) 熟練者の作業手順をAIが学習することで暗黙知も含めた技能継承ができる
・ アイデアの創出や練り込み 例) 企画のアイデアについて生成AIサービスと対話することで更なる改善を図る
・ 自然言語による情報検索 例) 「引っ越し」などの平易な言葉で転居届などの社内申請文書を見つけられる
<<顧客に提示する画像や音声>>
・ 販促などに用いる文言の自動作成 例) 販促資料に掲載するキャッチコピーを生成AIサービスと対話しながら作成する
・ 資料などに含める画像の自動作成 例) 生成AIサービスに文章で概略を伝えて、カタログ内の画像を自動作成する
・ 広告などに用いる動画の自動作成 例) 生成AIサービスに文章で概略を伝えて、販促サイトの動画を自動作成する
・ 顧客対応などでの音声の自動作成 例) FAQやヘルプデスクの返答内容を元に、応答時の音声を自動作成する
■前頁で触れた生成AIを適用する業務場面に関する分析を収録したレポート
『2025年版 DX&AIソリューションの導入パターン類型化と訴求策の提言レポート』
【レポートの概要と案内】 (リンク »)
【リリース(ダイジェスト)】
業種別の導入実態と課題に基づく「失敗しないDX提案」
(リンク »)
IoTやロボットを活用したDXは「無理のない足元からの取り組み」が有効
(リンク »)
ユーザ企業の生成AI活用状況と生成AIサービスの導入社数シェア
(リンク »)
企業における生成AIサービス活用の市場規模と有望な適用場面
(リンク »)
生成AIサービスが解決すべき課題と重要度の高いニーズ傾向
(リンク »)
導入パターン類型が示すユーザ企業毎の最適なDX提案
(リンク »)
ユーザの「無自覚課題」を顕在化する営業シナリオの作成方法
(リンク »)
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