年頭リリース:2026年の中堅・中小向けIT市場を牽引する「4つの要素」

ノークリサーチは様々な調査データから導出した2026年の中堅・中小向けIT市場を牽引する「4つの要素」を発表した。

株式会社ノークリサーチ

2026-01-06 12:30

<2026年は今後数年に渡る中堅・中小向けIT市場の成長を大きく左右する一年となる> 要素1:AIエージェントは「業務フロー基盤を備えたERP」と組み合わせた実装と訴求が現実解 要素2:『100億宣言企業』などの行政支援を活用すれば、中小・小規模企業層を底上げできる 要素3:ひとり情シス増加を打開するためには、「既存人材の実績やスキルの可視化」が必要 要素4:サプライチェーン堅牢化の重要性を啓蒙し、無理のないデータ保護手段を提供すべき
PRESS RELEASE(報道関係者各位) 2026年1月6日

年頭リリース:2026年の中堅・中小向けIT市場を牽引する「4つの要素」

調査設計/分析/執筆: 岩上由高


ノークリサーチ(本社〒160-0022東京都新宿区新宿2-13-10武蔵野ビル5階23号室 代表:伊嶋謙ニ TEL:03-5361-7880 URL:www.norkresearch.co.jp)は様々な調査データから導出した2026年の中堅・中小向けIT市場を牽引する「4つの要素」を発表した。


<2026年は今後数年に渡る中堅・中小向けIT市場の成長を大きく左右する一年となる>
要素1:AIエージェントは「業務フロー基盤を備えたERP」と組み合わせた実装と訴求が現実解
要素2:『100億宣言企業』などの行政支援を活用すれば、中小・小規模企業層を底上げできる
要素3:ひとり情シス増加を打開するためには、「既存人材の実績やスキルの可視化」が必要
要素4:サプライチェーン堅牢化の重要性を啓蒙し、無理のないデータ保護手段を提供すべき

※グラフ・図表を含む本リリースは以下のURLよりご確認いただけます
(リンク »)


■まずは現状のAIエージェントと理想形(エージェンティックAI)の中間となる現実解を目指す
毎年、ノークリサーチでは「その年の始めに知っておくべき必修ポイント」を年頭リリースとして発表している。2026年は2025年に生じた変化の兆しが顕在化し、今後数年に渡る中堅・中小企業向けIT市場の成長を大きく左右する一年となる。本リリースではその中でも特に重要な「4つの要素」について述べていく。
1点目は「AIエージェントの課題と現実解」である。AIエージェントは2025年に最も注目を集めたIT関連キーワードの筆頭格だ。だが、技術仕様や先行事例が話題となる一方、中堅・中小企業の業務システムにどのように適用していくべきか?についてはまだ模索の段階だ。そこで、中堅・中小企業から見たAIエージェントの現状と期待される将来像を整理したものが下図である。
現在、AIエージェントの具体例は大きく2つに大別できる。1つ目は個人レベルのタスク自動化や情報の収集/加工/分析を担うサービスだ。ChatGPTやGeminiのエージェントモード、Perplexity AIエージェント、Genspark、Manusなどが該当する。 2つ目は大企業での活用例だ。その中の一部は先進的なマルチAIエージェントの事例として紹介されているが、実際にはLLMやRAGを組み合わせた「AI活用のモジュール化」に近いものも少なくない。 一方、AIエージェントが目指す理想形は社内外の様々なサービス/データを取捨選択し、ユーザの意図を汲み取って自律的にタスクを実行する仕組みだ。これを「エージェンティックAI」と呼ぶこともある。(AIエージェントよりも更に自律性が高く、複数のAIエージェントを適宜使い分ける点などが異なる) 諸々の状況を踏まえると、2026年にベンダや販社/SIerが目指すべきなのは現状と理想形の中間となる現実解だ。次頁ではその詳細を述べていく。


■業務フロー基盤を備えたERPから信頼できるLLM/MCPサーバを呼び出す形態が最も確実
中堅・中小企業におけるAIエージェント活用を考えた場合、個々の従業員がChatGPTやGeminiのエージェントモードを自由に利用する状況はIT統制との兼ね合いからも最善とは言えない。そのため、業務システム開発/運用の一環として前頁の右側に示した理想形に近づける方向性が堅実だ。しかし、理想形の実現にはまだ時間を要すると予想される。その最も大きな要因がセキュリティ対策である。例えば「MCP Rug Pulls Attack」は悪意のあるMCPサーバが初回には正常に動作して利用者の認証を得ておき、その後に不正な処理を行う攻撃手法だ。また、CursorやClaude Codeなどの開発ツールでは強い権限を持つMCPサーバを利用して、コーディング、テスト、デプロイに至る一連の流れをAIに委ねる「MCP God Mode」と呼ばれる手法も話題となっている。この発想を業務システムに適用した場合、複数のMCPサーバが連動することで想定外のデータ操作が実行される可能性もある(MCP God Mode Problem)。これらに対処するため、MCPを介した処理を監視/制御するMCPゲートウェイ製品も既に存在するが、中堅・中小企業にとっては敷居が高くなりやすい。
したがって中堅・中小企業がAIエージェントの利便性と安全性を両立するには、前頁の図版の左下に示したように企業で契約したLLMや業務アプリベンダが提供する信頼できるMCPサーバなどを管理された業務フロー基盤を介して利用する形が当面の現実解となる。ここでの業務フロー基盤とは、従来のワークフローやBPMではなく、Dify(ノーコードで様々なLLMを活用したワークフローやチャットが構築可能なOSS)のようなツールを用いた柔軟性/操作性の高い業務フロー基盤を想定している。
上記のように管理された業務フロー基盤上でAIエージェントを動作させると、「様々なサービスを柔軟に組み合わせる」という利点は半減する。だが、中堅・中小企業の業務システムにおいて業務フロー上で呼び出すサービスを頻繁に変更しなければならない場面はかなり限られるはずだ。 一方、管理された業務フローを介して信頼できるLLM/MCPサーバを利用し、曖昧な入力(会話、音声、画像など)を理解し、様々な出力を生成できるAIの利点を安全かつ手軽に享受できれば、中堅・中小企業のAI活用は大きな前進が期待できる。(その際には、まず中堅企業に訴求し、その成果を中小企業に展開するのが確実)
そこで、ベンダや販社/SIerが考えるべきなのが「管理された業務フロー基盤」の役割を担うのは一体何なのか?という点だ。申請/承認の処理を担うワークフローアプリを進化させる、RPAツールを適用する、ノーコード/ローコード開発ツールで新規に構築するなど、取り得る選択肢は幾つかある。ノークリサーチが最も現実的と考えるのが、「ワークフロー機能を備えたERP」をAI活用の業務フロー基盤として活用するアプローチだ。近年の中堅・中小市場では会計/販売などの個別の基幹システムからERPへのステップアップが継続しており、ERPは様々な業務データを集約できる位置付けにある。部門や職責を考慮したきめ細かな業務フローを実現できる点では従来型のワークフローも候補となる。しかし、業務に直結するマスタ情報の管理をワークフローに移行するよりも、ERPにワークフロー機能を組み込む方が負担は少ない。 上記の考察を補足する調査データについては、右記のリリースでも述べている (リンク »)
また、ベンダや販社/SIerとしては「どのような業務フローをAIエージェントで実現すべきなのか?」も把握しておく必要がある。ユーザ企業がAI活用によって効率化したいと考える業務場面は規模や業種によって異なるからだ。こうした背景を踏まえて、「2025年版 AIエージェント開発における業務シナリオ策定の実践レポート」(※1)では、下図のように有効回答件数800社の調査結果を元に年商や業種といった企業属性に応じて、「AIエージェントで実現すべき有望な業務フロー」は何か?を分析/提言している。
※1 (リンク »)


■中小企業層(年商5~50億円)では、政府の『100億宣言企業』向け支援策でIT市場も拡大
中堅・中小向けIT市場を牽引する「4つの要素」の2つ目は行政の方針やビジネス環境の変化を踏まえた「『100億宣言企業』へのIT活用支援」である。(『100億宣言企業』とは何か?については後述する)
まず、中堅・中小企業におけるIT支出の市場規模推移を確認しておく。以下のグラフは中堅・中小市場におけるIT市場規模(全てのIT商材/ソリューションの合算値)を年商規模別に集計した結果を2024年と2025年で比較したものだ。(IT市場規模に関する詳細は右記のリリースを参照 (リンク ») )
中小企業層(年商5~50億円)は市場規模全体に占める割合も高く、2024年~2025年にかけて値も増加している。2026年には同年商帯が更に伸びると予想される。その背景にあるのが、政府が2024年から始めた『100億宣言企業』向けの支援だ。(※2)
※2 (リンク »)
『100億宣言企業』とは、売上高100億円という目標を掲げ、その実現に向けた課題/措置を行政に提出した年商10~100億円の企業を指す。宣言企業は行政から様々な支援を受けることができる。2026年に執行される令和7年度補正予算(※3)においても以下の支援が提供される。
中小企業成長加速化補助金: デジタル化・AI導入補助金(旧:IT導入補助金)や小規模事業者持続化補助金、事業承継・M&A補助金などを含む中小企業生産性革命推進事業(計3400億円)の一環として、100億宣言企業の財政を支援
賃上げに向けた大規模成長投資支援:中堅・中小企業の賃上げに向けた労働生産性向上などを支援する枠組み(計4121億円)のうち、1000億円程度を100億宣言企業向けに確保
※3 (リンク »)
100億宣言企業の対象年商は中小企業層とほぼ一致する。つまり、2026年は中小企業層向けの財政支援が活発となるため、ベンダや販社/SIerにとっても同年商帯に向けたIT導入提案の好機になると予想される。
小規模企業層もIT市場規模全体に占める比率は高いが(企業数が多いため)、上記のグラフが示すように2024年~2025年は数値が減少している。だが、2026年には小規模企業層についても以下の支援策がある(上記と同様の令和7年度予算 ※3)
プッシュ型による伴走支援体制の強化: 業務の省力化やインボイス対応などを促進するため、各種の支援機関(商工会・商工会議所、よろず支援拠点など)の体制を強化(376億円の枠内/内数として)
つまり、2026年はベンダや販社/SIerが小規模企業層向けに業務の省力化やインボイス対応を訴求する際、各種の支援機関との協力体制を新たに構築できる可能性がある。
このように、2026年は令和7年度補正予算に盛り込まれた行政の取り組みも踏まえながら、中小企業層および小規模企業層に向けたIT導入提案を進めていくことが重要だ。


■人事管理システムには従業員の業務経験やスキルを記録/検索できる機能が必要となる
前頁に述べた『100億宣言企業』へのIT活用支援では旧来のIT導入補助金とは異なり、各企業の本業に寄与するIT活用提案が求められる点に注意する必要がある。
つまり、PCや基本的な業務システムの導入支援ではなく、AI/データ分析、IoT、ウェアラブル、ロボット、ドローンなど個々の業種/業態に即した幅広いDX提案も必要となってくる。
ノークリサーチのDX/AI関連調査レポート「2025年版 DX&AIソリューションの導入パターン類型化と訴求策の提言レポート」(※5)では、有効回答件数800社の調査を元に、左図に示した多岐に渡るDX分野がどの年商/業種に有効か?を明らかにしている。
※5 (リンク »)
昨今ではIT企業のみならず、中堅・中小企業も人材不足の影響を受けている。IT管理/運用を担うユーザ企業社内の人材不足はベンダや販社/SIerにとってもIT導入提案を停滞させる大きなマイナス要因だ。実際、中堅・中小企業全体で見ても、いわゆる「ひとり情シス」(社内のIT管理/運用を1名のみで担っている状態)の割合は2023年~2025年にかけて増加している。(※6)
※6 (リンク »)
つまり、行政による財政面の支援があったとしても、ユーザ企業社内でIT商材/ソリューションを理解できる人材がいなければIT導入提案は進めることはできない。とは言え、中堅・中小企業がIT管理/運用を担う人材を新たに採用するのは難しいのが実情だ。そこで着目すべきなのが、給与・人事・勤怠・就業管理システムの課題を尋ねた以下のグラフである。
中堅・中小企業が給与・人事・勤怠・就業管理システムを利用する上では、採用(※B)よりも人材育成やスキル継承(※A)に課題を感じていることがわかる。つまり、人材を新たに採用することは難しいため、既存の人材を如何に有効活用するか?を考えた際に直面する課題が多く挙げられているわけだ。「ひとり情シス」が増加する中、ユーザ企業がIT管理/運用を担う人材を社内で補うには「限られた人材の中で、一番適任なのは誰か?」を判断する手段が必要だ。そのためには給与・人事・勤怠・就業管理システムに「従業員の業務経験やスキルを記録し、検索できる機能」が求められてくる。こうした「既存人材の実績やスキルの可視化」が2026年の中堅・中小向けIT市場を牽引する「4つの要素」の3つ目である。

■ランサムウェア被害を想定し、本格的なエアギャップよりも手軽なデータ保護手段を講じる
2026年の中堅・中小向けIT市場を牽引する「4つの要素」の4つ目は「サプライチェーン堅牢化の重要性」である。日本の中堅・中小企業には特定の分野において世界的にも高いシェアを誇る「グローバルニッチトップ(GNT)」と呼ばれる企業も多数存在する。日本の中堅・中小向けIT市場を活性化していくためには、こうしたGNT企業を創出/支援する取り組みが重要となる。
一方、近年ではランサムウェアの被害が拡大しており、2025年にもアサヒグループ、アスクル、サンリオ、西友が利用する外部の勤怠サービスなど、著名な企業に対するランサムウェア攻撃や不正アクセス、またはその可能性が高いと推測される事例が相次いだ。こうした攻撃では大企業の取引先である中堅・中小企業が踏み台となるケースも多々ある。GNT企業を目指す中堅・中小企業には「自社もサプライチェーンを構成する重要な一員である」ことを意識し、必要な対策を講じる姿勢が求められてくる。
だが、サプライチェーンの堅牢化に対する意識は規模の小さな企業層ではまだ十分とは言えない。以下のグラフは小規模企業層(年商5億円未満)、中小企業層(年商5~50億円)、中堅企業層(年商50~500億円)に対して、セキュリティを始めとする守りのIT対策を担う製品/サービスに対するニーズを尋ねた結果の一部を抜粋したものだ。
「セキュリティ責任者の代わりとなる相談サービスがある」と異なり、「取引先への影響も含めた対策の重要性を啓蒙してくれる」の値は中堅企業層と比べて小規模企業層や中小企業層では低いことが確認できる。「自社のセキュリティ対策の不足によって取引先が危険に晒される可能性がある」という啓蒙を更に進めていくことが大切だ。
ランサムウェア被害で業務が長期間停滞する原因の1つが「バックアップデータを削除/封印されることで、データの復旧が困難になる」という点だ。そこで、バックアップ対策における機能ニーズとして「ネットワークから隔離してバックアップを保管できる」の回答割合を年商別に集計した経年変化が以下のグラフである。
いずれの年商帯においても回答割合が増加していることがわかる。とは言え、本格的なエアギャップ環境の構築は中堅・中小企業にとって敷居が高い。例えば、ストレージ筐体内に隔離された領域を設けるなど、IT管理/運用を担う人材が限られている場合でも導入/運用しやすい仕組みが求められてくる。 このように2026年は中堅・中小企業に対して「サプライチェーン堅牢化の重要性」を啓蒙し、ランサムウェア被害に遭った時にも業務の停滞を回避するための無理のないデータ保護手段を提供する取り組みが大切だ。

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