経産省DX支援ガイダンスに照らして考える:地場SIerが地域のDX振興で留意すべき点
調査設計/分析/執筆: 岩上由高
ノークリサーチ(本社〒160-0022東京都新宿区新宿2-13-10武蔵野ビル5階23号室 代表:伊嶋謙ニ TEL:03-5361-7880URL: (リンク ») )は経産省が策定した「DX支援ガイダンス」と同社の調査レポート「2025年版 DX&AIソリューションの導入パターン類型化と訴求策の提言レポート」のデータを照らし合わせた際に、地場SIerが地域のDX振興において留意すべき点を分析した結果を発表した。
<「当たり前」になったDXを地域で着実に進めるためには地場SIerの戦術整理が不可欠>
■DXのビジョン/戦略を策定するにはユーザ企業が「自社のDX段階を意識する」ことが必要
■企業や経営層におけるDXの必要性に対する理解度は関東地方と東北地方でほぼ同程度
■業務分担を整理することで兼任情シス担当を「専任化」することも人材不足の有効な対策
■DXのビジョン/戦略を策定するにはユーザ企業が「自社のDX段階を意識する」ことが必要
大企業ではDXが既に当たり前の取り組みとなり、中堅・中小企業においても注目キーワードがDXからAIへと移りつつある。
(ただし、DXの単なる置き換えとしてAIを訴求することは避けるべき (リンク ») )しかしながら、大都市圏ではない地域では中堅・中小企業のDXが依然として進行中だ。経産省も中堅・中小企業のDX振興を担う支援機関(地場のSIer、金融機関、コンサルタントなど)に向けて 「DX支援ガイダンス」 を2024年3月に公表し、2025年3月には多くの事例を盛り込んだ別冊を拡充している。( (リンク ») )
以下のグラフはノークリサーチの「2025年版 DX&AIソリューションの導入パターン類型化と訴求策の提言レポート」から、DXの取り組み状況を首都圏を含む関東地方(茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県)と東北地方(青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県)で比較したものだ。
関東地方ではDXの3つの取り組み段階のうち、デジタライゼーションの割合が相対的に高いことがわかる。(ただし、「段階が不明」も多い点に注意が必要) 一方、東北地方では3つの段階の割合はいずれも僅かに留まり、「段階が不明」が関東地方と比べても高い。そのため、地場のSIerが地域のDX振興に取り組む際は、まずユーザ企業に「自社のDX段階を意識する」ことを促す必要がある。「DX支援ガイダンス」に記載されたDX実現に向けた4つのプロセスの最初は「1. 意思決定(経営ビジョン・戦略策定)」である。このプロセスを実践するためにも、まずは経営層が自社の立ち位置を認識する必要があるわけだ。以降では、「DX支援ガイダンス」とノークリサーチの調査レポートを照らし合わせながら、地場SIerが留意すべき点は何か?を解説していく。
■企業や経営層におけるDXの必要性に対する理解度は関東地方と東北地方でほぼ同程度
前頁に掲載したようなデータを提示すると、「そもそも大都市圏以外ではDXの必要性がないのでは」という見解が出されることもある。しかし、以下のグラフが示すように「DXを不要と考えている」の割合は関東地方と東北地方でほとんど差がなく、「取り組みを検討している」の割合は東北地方の方が関東地方よりも高い。つまり、ユーザ企業がDXを必要とする割合自体は地理的に大きな差はなく、取り組みの進捗が早いか/遅いか?が主な違いということになる。
では、その違いを生んでいる要因は何なのか?以下のグラフは冒頭で触れた調査レポートにおいて「DXに取り組む際の課題」を尋ねた結果の一部を抜粋したものだ。
「経営層がDXの必要性を理解していない」の割合も関東地方と東北地方でほぼ同程度である。上段のグラフと同様に経営層のDXに対する理解度という点でも地理的な差異は見られないことになる。一方で、「社内にはDXを主導できる人材がいない」の値は東北地方が関東地方を大きく上回っている。大都市圏への人口集中は昨今大きな問題となっており、それがDXの取り組みにも影響を与えていることがわかる。この点は「DX支援ガイダンス」に記載されたDX実現に向けた4つのプロセスの2番目である「2. 全体構想・意識改革(全体を巻き込んだ変革準備)」の障壁にもなっている。
とは言え、地域で新たなDX人材を募ることは容易ではなく、中堅・中小企業にとっては費用と時間をかけてDX人材を育成することも難しい。地場SIerによる地域のDX振興がここで止まってしまうことが多い。だが、次頁で述べるようにユーザ企業の体制変更を後押しすることによって、この障壁を低減できる可能性がある。
■業務分担を整理することで兼任情シス担当を「専任化」することも人材不足の有効な対策
冒頭で触れた調査レポートでは、中堅・中小企業におけるIT管理/運用の体制を人数別や兼任/専任の種別に分類し、それらに応じた傾向差についても詳細に集計/分析している。そこで 「社内にはDXを主導できる人材がいない」という課題を挙げた割合をIT管理/運用の体制別に集計した結果の一部を抜粋したものが以下のグラフである。
IT管理/運用を担う人員数が「1名」および「2~5名」の場合には人数は同じであっても、「兼任」(総務/人事などのバックオフィス業務や現場業務と兼ねている場合)と比べて、「専任」(IT管理/運用が主な職責である場合)の方がDX推進における人材不足の課題を挙げる割合が低いことがわかる。つまり、「IT担当が他の業務に追われてDXの計画が立てられない」「現場の社員もPC管理などに苦労している」といった場合は、IT担当を専任化してIT管理業務を集中させることが有効と考えられる。人員数が6名以上の場合にはユーザ企業の規模も大きくなり、IT管理/運用を担う担当/部門の負担も兼任/専任を問わず増していくため、上記の対策による効果は期待できない。だが、地場のSIerが「少人数情シス」のユーザ企業のDXを支援する場合は「IT担当の専任化」を助言/提言してみる価値がある。さらに、冒頭で触れた調査レポートでは中堅・中小企業の拠点数(店舗、工場、倉庫などのビジネス拠点の数)を軸としたデータ集計も行っている。以下のグラフは「本業の現場部門がデジタル化に消極的」というDXの課題を挙げた割合を拠点数を軸に集計したものだ。「DX支援ガイダンス」に記載されたDX実現に向けた4つのプロセスの3番目である「3.本格推進(社内のデータ分析・活用)」を進めるためには、複数の拠点に跨る現場部門の協力を得られるか?が成否を大きく左右することになる。
拠点数が増えると、複数の現場で働く現場部門の協力を得づらくなりがちなことがグラフからも読み取れる。注意すべきなのは拠点数6カ所以上では、ITインフラを統一管理している場合の方が個別管理の場合と比べて「本業の現場部門がデジタル化に消極的」という課題を抱える割合が高くなっている点だ。拠点数が6カ所以上の中堅・中小企業は本業も活発であり、現場部門も業務に忙しい。そうした状況下でITインフラが統一管理されていると、現場部門はIT活用を「他人事」と捉えてしまいやすい。
地場の販社/SIerがこうしたケースに遭遇した場合は、ユーザ企業の代わりに自身が伝達役となって現場部門の従業員がDXを身近に感じられるように啓蒙していくことが大切だ。このように「DX支援ガイダンス」と調査レポートを照合しながら戦術整理を行うことが地場のSIerにとっては有効な取り組みとなってくる。
本リリースの元となる調査レポート
『2025年版 DX&AIソリューションの導入パターン類型化と訴求策の提言レポート』
DXソリューションを技術視点(9分野、計48項目)および業務視点(8分野、計38項目)に基づく、5つの導入パターン類型に整理し、個別分析サービス(オプション)による個々のユーザ企業に向けたDX提案の施策/提言までカバーした次世代型の調査レポート。昨今注目を集める生成AIについても、サービスシェア、適用する業務場面、ユーザ企業の課題/ニーズといった最新動向を網羅。
【対象企業属性】(有効回答件数:800社、調査実施期間:2025年5月)
年商: 5億円未満(241社) / 5億円以上~50億円未満(222社) / 50億円以上~100億円未満(127社) /100億円以上~300億円未満(85社) / 300億円以上~500億円未満(65社) / 500億円以上(60社)
業種: 組立製造業(114社) / 加工製造業(106社) / 建設業(101社) / 卸売業(101社) / 小売業(74社) /運輸業(76社) / IT関連サービス業(103社) / 一般サービス業(125社)
従業員数: 20人未満 / 20人以上~50人未満 / 50人以上~100人未満 / 100人以上~300人未満 /300人以上~500人未満/ 500人以上~1,000人未満 / 1,000人以上~3,000人未満 /3,000人以上~5,000人未満 / 5,000人以上
地域: 北海道地方 / 東北地方 / 関東地方 / 北陸地方 / 中部地方 / 近畿地方 / 中国地方 /四国地方 / 九州・沖縄地方
IT管理/運用の人員規模(12区分): IT管理/運用を担う人材は専任/兼任のいずれか?人数は1名/2~5名/6~9名/10名以上のどれに当てはまるか?
ビジネス拠点の状況(5区分): オフィス、営業所、工場などの数は1ヶ所/2~5ヶ所/6ヶ所以上のいずれか?ITインフラ管理は個別/統一管理のどちらか?
職責(4区分): 経営層またはIT活用の導入/選定/運用に関わる職責
【分析サマリ(調査結果の重要ポイントを述べたPDFドキュメント)の章構成】
第1章: DXの取り組み概況
企業全体としてのDX実施段階およびDX分野別(技術視点9分野/業務視点8分野)の取り 組み状況を集計/分析
第2章: 実施済み/実施予定のDXソリューション
技術視点48項目、業務視点38項目のDXソリューションの実施状況(実施済み/実施予定)を集計/分析
第3章: DXの課題とIT企業に求める支援策
DXに取り組む際の課題(計23項目)およびIT企業に必ず実施して欲しいと考えるDX支援策(21項目)を集計/分析
第4章: DX導入パターン類型と追加個別分析サービス(オプション)
企業属性、DXの全体状況、DX分野別の取り 組み状況に基づく5つのDX導入パタ ーン類型について詳述し、さらにオプションとして利用可能な追加個別分析サービス(個々のユーザ企業の属性やDX活用状況を元にDX導入パターン類型を特定し、実現したいDX提案のために何をすべきかを分析/提言)の実施内容を解説
第5章: 生成AIの活用概況とサービスシェア
生成AIの活用状況(実業務に適用 or 試験利用など)および8カテゴリ、37項目に渡る生成AIサービスの利用中および利用予定の社数シェアを集計/分析
第6章: 生成AIサービスを適用する業務場面
4カテゴリ/20項目に渡る業務場面を提示し、生成AIサービスの適応有無を集計/分析
第7章: 生成AIサービスの課題とニーズ
生成AIサービスを活用する際の課題(計18項目)および活用する際に必須と考える事柄(ニーズ)(16項目)を集計/分析
第8章: 生成AIサービスに拠出する費用
生成AIサービスの利用に際して年間で拠出する合計費用(万円)を集計/分析し、それを元に2025年の生成AIサービス市場規模を年商別、業種別、地域別に算出
【発刊日】 2025年6月16日 【価格】 225,000円(税別) 【レポート案内】 (リンク »)
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