米国時間10月16日、IBMの会長、社長兼最高経営責任者(CEO)Ginni Rometty氏は、米オーランドで開催されているイベント「Gartner Symposium/ITxpo 2018」の基調講演で、企業は現在、史上もっとも技術的な変化が速い時代を経験しており、人工知能(AI)はあらゆる仕事に革命を起こそうとしていると語った。
特にIBMの「Watson」事業は、「この事業が100%の仕事、100%の業界、100%の職業を変えるという基本的な信念の下にスタートしている」と同氏は言う。「わが社は、ビジネスのためのAIに焦点を当てようとしている。これは消費者向けのAIとは異なるものだ」
Rometty氏は、AIに取り組み始めている企業はチェンジマネジメントについて考える必要があると述べている。「これは技術的な問題ではなく、チェンジマネジメントの問題だ」と同氏は述べた。「重要なのは、人々が仕事のやり方をどう変えるかということだ」
IBMは、特にWatsonのヘルスケア事業を通じてこのことを学んだという。医師は1日のうち短い時間しか患者の診察を行うことができない。Rometty氏は、医師が使えるテクノロジを増やしてもあまり役に立たず、ワークフローを変える必要があると語った。
また同氏は、AI導入に関して取り組むべきもう1つの大きな課題として、信頼の問題を挙げた。企業がAIを利用する際には、説明可能で、バイアスがかからないやり方を取る必要があるという。
Rometty氏は、世界は人間と機械を組み合わせて使うようになってきており、「人間は仕事がやりやすくなっていると感じている」と述べた。
また同氏は講演の中で、IBMがAIに関する取り組みの指針としている3つの原則を挙げた。
1.新たな技術の目的は、人間を助けることである。「技術が人間を楽にしているかどうかが問題だ」とRometty氏は言う。例えば、量子コンピューティングには素晴らしいことができるが、従来のほとんどの暗号を破る能力も持っている。このためIBMは、量子コンピューティングでも破れない新たな暗号技術を開発しているという。
2.データは所有者と作成者のものである。「データは顧客のものであり、IBMのビジネスモデルが顧客のビジネスモデルと衝突することはない。アルゴリズムと得られた知見の所有者は顧客だ」とRometty氏は述べた。
3.新たな技術は説明可能でなければならない。同氏は、これによってバイアスを避けることができると同時に、人間から恐れられるのを防ぐことができると話した。
「われわれは、これらのテクノロジを世界に広めなければならない」とRomettyは語った。「これらのテクノロジは、100%の仕事を変える。これは恐ろしく感じられるはずだ。(中略)確かに一部の労働はテクノロジに取って代わられるが、すべてが取って代わられるわけではない」
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。