鋼板加工機器がウイルスに感染、2年間不審なDNSクエリ--開発中に感染か

ZDNET Japan Staff

2018-10-26 15:40

 情報処理推進機構(IPA)や国内企業、業界団体らで構成するサイバー情報共有イニシアティブ(J-CSIP)は10月26日、2018年7~9月期の活動状況を発表した。鋼板加工機器でのウイルス感染事例などを紹介している。

 それによると、期間中にはサイバー攻撃など519件の情報提供があり、うち30件が標的型攻撃メールを見られるものだった。全体の約75%は、「IQY」形式のファイルを添付する不特定多数を狙った日本語の攻撃メールだったが、IPAでは初めて日本語による「ビジネスメール詐欺(BEC)」を確認している。また、参加組織から産業用機器へのウイルス感染事例の情報提供もあった。

 鋼板加工機器でのウイルス感染事例は、2018年8月に新規導入した不正侵入検知システム(IDS)で不審なDNSクエリを検知したことで分かったという。当該組織では、約2週間後にリクエスト元を特定して機器をネットワークから切断、その約1週間後に機器メーカーがウイルス検査を実施したところ、Windows Embeddedを搭載する機器の制御用コンピュータでのウイルス感染が判明した。この機器は2016年に設置されたといい、DNSサーバのログ調査で、機器を設置した時期から2年近くに渡って不審なDNSクエリが発生し続けていたことが分かった。

 感染したウイルスは、インターネットバンキングの情報を窃取するタイプで、制御システムや産業用機器を狙ったものではなかったという。当該組織では、当該機器から社外ホストに対するIPアドレスの解決を不可にするとともに、当該機器から社外サーバへのアクセスを不可とする運用にしていたため、実質的な被害は発生しなかった。9月に機器メーカーから報告があり、ウイルスは当該機器の開発期間中に感染した可能性が高いという。

 J-CSIPは、万一外部通信を必要としない破壊的なワームなどが工場のシステムや機器に侵入すれば、より重大な被害が起きかねないと指摘。制御用コンピュータなどを導入する際にウイルス感染や不審な通信の有無を事前に確認する運用などを考慮すべきとの見解を示す。

 また、9月にはマクロを悪用するMicrosoft WordのWIZ(Wizard)ファイルを使った攻撃情報を確認。「保護ビュー」を有効にすることで被害を防げるが、今後国内で攻撃が横行する恐れがあるとして詳しい解説を提供している。

「WIZ(Wizard)ファイル」を添付した攻撃メールは、以前から多発する似た手口を同様にOfficeのマクロ機能を有効にしなければ被害を防げるとしている(出典:IPA)
「WIZ(Wizard)ファイル」を添付した攻撃メールは、以前から多発する似た手口を同様にOfficeのマクロ機能を有効にしなければ被害を防げるとしている(出典:IPA)

 9月時点でJ-CSIPには、のべ11業界の238組織が参加。新たに、約5500組織が参加する医療業界4団体とも情報連携体制を構築している。

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