SAPジャパンは5月18日、SAP版のサービス指向アーキテクチャ(SOA)となる「Enterprise Services Architecture(ESA)」の導入を促進するための新たな専任組織を設立し、導入支援プログラムとなる「ESA Adoption Program」を提供開始すると発表した。
ESAは、SAPが2003年に発表したコンセプトで、「ビジネスとITのギャップを埋め、変化にすばやく柔軟に対応できるITを、コストをかけずに提供するための基盤だ」と、SAPジャパン バイスプレジデント ソリューション統括本部長の玉木一郎氏は説明した。ESAが必要な理由として玉木氏は、「これまでのITはコスト削減や業務の効率化が主な目的となっており、こうした方法でITを活用すれば収益を確保できた。しかし今では内部効率化による収益確保に限界がきている。他社と差別化し、競争力をつけるためのITが必要で、ビジネス戦略にあわせて柔軟に変化できるITを実現しなくてはならない」と述べた。
- SAPジャパン バイスプレジデント ソリューション統括本部長 玉木一郎氏
そこでSAPは、従来のカスタム開発における個別案件への柔軟な対応性と、パッケージ製品における短期間導入と低コストの良さを組み合わせ、SAP NetWeaverというプラットフォーム上にて既存システムとSAP製品を再構成したシステムを提供する。「これまでのパッケージ製品は、完成した自動車を提供していたようなもの。これからは、自動車の部品を提供し、顧客と共同でSAPが自動車を作り上げていくイメージだ」(玉木氏)
ESA Adoption Programを提供するための専任組織は30人体制となる。同プログラムでは、顧客のIT環境およびビジネス戦略を理解した上で、SAPの製品やサービスを組み合わせたIT環境のESA化を提案する。これは、「Discovery(発見)」「Evaluation(評価)」「Implementation(導入)」「Operation(運用)」という4つのフェーズに分けて行われる。
Discoveryフェーズでは、顧客にESAの本質を理解してもらい、経営戦略とIT戦略の同期をとるために何が必要かを明確にし、対応策を検討する。Evaluationフェーズでは、顧客のITシステムや業務アプリケーション環境を実際に分析し、ESA化のためのロードマップを描く。Implementationフェーズでは、そのロードマップをプロジェクト化し、導入を開始する。Operationフェーズは実際に運用を開始し、サポートを行う。
専任組織となるNetWeaver アドバイザリー・オフィスでNetWeaverアドバイザの役目を担う長船利彦氏は、「ESA Adoption ProgramをまずSAPの既存顧客に提案し、2005年末までに30社以上での採用を見込む」と述べた。