IP InnovationとTechnology Licensing Corporationの2社が米国時間10月9日、Linux販売大手のRed HatとNovellを提訴した。テキサス州東部地区の連邦地方裁判所に提出された訴状(PDFファイル)によると、Red HatとNovellが販売するソフトウェア製品が、米国特許5072412号「ディスプレイシステムオブジェクトを共有するための複数の作業領域を備えたユーザーインターフェース」と、他の2件の同様の名称の特許を侵害しているという。IP Innovationらは、損害賠償と今後一切の侵害を禁じる終局差し止め命令を求めている。
Red Hatの広報担当のLeigh Day氏は12日、同社は提訴を認識しており、「今後の対応を検討する」とだけ述べた。また、Novellの広報担当のBruce Lowry氏は、現在、訴状の内容を検討中であり、「NovellとRed Hatにとって、手を組むのが得策か否かを語るのは、戦略的に考えて時期尚早だ」と語った。
しかし、オープンソースソフトウェアを法律面から支援している米国の団体であるSoftware Freedom Law Center(SFLC)が9月にデジタル家電販売大手のMonsoon Multimediaに対して起こした特許権侵害訴訟と同様に、今回IP Innovationらが起こした訴訟も波紋が広範囲に及ぶ可能性が高い。SFLCの訴訟では、Monsoon Multimediaは無料かつオープンソースのプログラミングの使用の行使について争っている。
長年オープンソース関連の法律問題を手掛けてきたDLA Piper法律事務所の知的財産権担当弁護士であるMark Radcliffe氏は、自身のブログで「私を含め、オープンソース業界に携わる多くの弁護士は、かなり前からオープンソース企業に対する特許侵害訴訟について懸念してきたが、恐らく今回の訴訟は、パテントトロールがオープンソースライセンサーに対して起こした初めての訴訟と思われる」と述べている。米証券取引委員会(SEC)の企業ファイルによると、IP InnovationはAcacia Technologiesの子会社となっている。
Acaciaによると、同社はさまざまな業種の企業に保有特許のライセンス供与を行っているという。Acaciaはそれらの企業の例として、Dell、Hewlett-Packard、Intel、Samsung、Exxon、J.C. Penney、Walt Disney Co.、Wendy's、Revlon、Orbitz、General Electric、3Mなどを挙げている。同社の売り上げは、2006年第3四半期から2007年第2四半期までで4680万ドルとなっている。
企業にとって、特許ライセンスの購入は特許侵害訴訟を回避する最も素早い方法である場合が多い。しかし、企業がそのような方法を取る理由はそれだけではない。長期に及ぶ特許権侵害訴訟を戦うには、莫大な費用がかかる上に、多くの従業員の労働時間が訴訟のためだけに費やされることになる。それなら、ライセンスを購入した方が企業にとっては安上がりなのだ。しかし、オープンソースソフトウェアに関して言えば、特許のライセンシングはそんなに単純な問題ではない。