セブン&アイ・ホールディングスとNECは2月17日、「流通とITの共創」をテーマに研究事業およびシステム開発事業を行う合弁会社「株式会社セブンインターネットラボ」を設立すると発表した。
設立予定日は2009年3月24日で資本金は2億円。出資比率は、セブン&アイ・ネットメディアが50%、NECが40%、セブンアンドワイが10%となっており、社長にはセブンアンドワイの社長である鈴木康弘氏が就任する。
セブン&アイ・ホールディングスグループでは「コンビニエンスストア」「スーパーストア」「レストラン」「スーパーマーケット」「百貨店」「金融サービス」「IT/サービス(自社EC事業)」の7事業を主要事業領域として掲げているが、新会社となるセブンインターネットラボは、「IT/サービス事業」を統括する「セブン&アイ・ネットメディア」の傘下に置かれる。
「ネット社会における小売業の新たな可能性の追求」を目指すというセブンインターネットラボの事業の柱となるのは、「研究事業」と「システム開発事業」の2つ。研究事業では、ネットと実店舗の双方を活用し、顧客ニーズと商品・サービス企画とのギャップを埋めていく新たなビジネスモデルの研究を行うほか、携帯機器などを含む新技術活用の研究、戦略的なデータ活用の研究などを行っていく。
一方のシステム開発事業では、IT投資効果の最大化を目指し、発注者と開発者の共同開発体制によるコミュニケーションロスの少ない効率的な開発プロセスの確立や、開発ノウハウの蓄積による生産性の向上、グループ間でのシステムの共通運用によるコスト削減などをテーマとして取り組むという。なお、スタッフは20数人程度の規模でスタートし、当初その大部分はシステム開発事業の担当となる予定。NECからも数名のスタッフが参加し、NECの研究開発部門と共同で開発を進めていくとする。
セブンインターネットラボ、代表取締役社長の鈴木康弘氏は、同社設立の経緯に関して、流通業界とIT業界、双方が現在抱えている課題に言及した。世界的な不況に端を発する需要の落ち込みや、顧客と提供側との意識のズレ、さらにアウトソーシングやサービスの細分化に伴うコスト増など、「双方の市場における課題の本質は似ている。ならば、業界の垣根を越え、共同でこれらの課題に取り組もうというのが今回の合弁の意義」(鈴木氏)とする。
NECとセブン-イレブンとの関係の始まりは、約30年以上前にさかのぼる。第一次オイルショックなどの影響もあり、日本が戦後初のGNPマイナス成長を記録した1970年代後半の不況期に、両社は日本初のチェーン店による発注のシステム化に共同で取り組み、現在のPOSシステムの前身となる情報システム「ターミナル7」を構築した。設立発表会に出席した、NEC代表取締役執行役員副社長の相澤正俊氏は、両社の協力による成果は過去に実績があることを引きつつ、ネットサービスとリアル店舗の融合による新たなビジネスの可能性に期待しており、ITと研究開発の両側面で全社的に協力を行っていくと述べた。
セブンインターネットラボの事業における、具体的な成果については、発表会に出席したセブン&アイ、NEC双方の関係者とも「現時点では見えていない」とする。鈴木社長自身も「(ネットとリアル店舗の理想的な融合が具体的にどのようなものになるかについては)現在、明確な答えはなく、その答えを導くために研究が必要とされている。セブン&アイの3万5000を越える店舗網と商品開発力、そこに集まる顧客の購買力とを結びつけ、市場全体が参加するようなものをイメージしている」と述べるにとどまった。当初は、具体的な数値目標などを設定せず、研究開発の中から、現在の市場状況の突破口となり得る新たな知見を導くことを目指すという。
「小売業の現場にいると、確かに消費者心理の冷え込みを感じる。しかし、それと同時に“何か新しいものを求める”感情があることも分かる。何かを期待されている今だからこそ、こうした事業を行うべきだと感じている」(鈴木氏)