Adobe MAX 2014が米国時間10月4日から8日の予定で米ロサンゼルスで開催している。毎年米国で開催しているクリエイター向けのイベントで、日程が従来の5月から10月へと変更されたため実質1年半ぶりの開催となった。
前回のAdobe MAX 2013ではクラウドベースのソフトウェア提供が大きな話題となった。今回のAdobe MAX 2014では、デスクトップだけでなくモバイル端末やクラウドを本格的に利用した新しいワークフローが紹介され、Adobe Systemsのクラウドとモバイル戦略の成熟を感じさせる内容となった。
最初に登場した最高経営責任者(CEO)を務めるShantanu Narayen氏は、オープニングスピーチで「今日のスマートフォンはPhotoshopを実行できるほどパワフルだ」と語った。Adobeは、モバイルデバイスをすでにプロの品質を確保するにも十分な環境と位置づけている。
最高経営責任者(CEO)のShantanu Narayen氏
実際に、基調講演で紹介された新しいモバイルアプリ群では、「Photoshop CC」をはじめとするプロ向けデスクトップツールの機能の一部をモバイル環境でも利用できる。モバイルアプリで作業したデータをそのままデスクトップ環境に取り込めるため、手元にあるモバイル端末で作業を始め、デスクトップ環境で仕上げるといったことも品質の劣化を気にせず実施できると紹介された。
デモでは「Adobe Shape」というキャプチャアプリを使ってiPhoneのカメラで撮影した文字をデータ化し、それをiPad上の「Illustrator Draw」というアプリでデザインに組み込んで配置、そのデザインデータをデスクトップ上の「Illustrator CC」で仕上げる様子が紹介された。
「Adobe Shape」というキャプチャアプリを使ってiPhoneのカメラで撮影した文字をデータ化し、それをiPad上の「Illustrator Draw」というアプリでデザインに組み込んで配置する。
新しいモバイルアプリは、本格的なデザインワークフローに使うこともできる。機能や操作性が単純であるため、初心者でも使い始められそうだ。Adobe IDを取得すれば無料で利用できる。
種々のデバイスやデスクトップ環境を結びつけるのが、クリエイティブクラウドの新しいサービスであるクリエイティブプロファイルだ。ユーザーのIDを使って、写真、カラーパレット、テキストスタイルなどが自動的に管理される仕組みとなっている。
モバイルアプリやデスクトップアプリは、クリエイティブプロファイルを使ってユーザーのアセットを自動的に最新の状態に同期する。これにより、ユーザーは、デバイスとデスクトップ、あるいはPhotoshopとIllustrator、どの環境からも常に最新のアセットを利用できる。グループ内での共有機能もあるため、複数人にまたがるワークフローにも対応する。
さらに、これらのアプリやサービスで利用されている技術を部品化し、アプリ開発用にパッケージした「Adobe Creative SDK」のパブリックベータも発表された。同日から公開さ れている。現在公開されているのはiOS版のみ。日本発売が発表されたばかりのInk&Slideを制御するAPIも含まれている。