工場ではより良いモノづくりを目指し、常に改善活動が続けられている。トランスミッションやブレーキ、エンジン関連部品などをトヨタ自動車をはじめとするアイシン精機(愛知県刈谷市、連結従業員11万4478人)の国内11カ所の工場の1つである工機工場(愛知県西尾市)でも、様々な改善に着手しているという。
アルミダイキャスト製品作成用の金型製造などを手がける工機工場は2017年7月に労務管理にかかる工数を削減するとともに、同工場で働く従業員全員の総労働時間を見える化するために、ビジネスインテリジェンス(BI)ツール「Yellowfin」を導入。200人ほどの従業員の労務管理ダッシュボードなどを作成し、集計などの作業時間を年間約600時間削減したという。3月28日、Yellowfin Japan(中央区)が発表した。
従業員が法律に則り、正しく、安全、快適、健康的に働くために重要な要素となる労務管理だが、工機工場では非常に煩わしい作業だったという。
全体の勤怠情報が存在する全社システムは権限管理されているため活用できず、各従業員の総労働時間や残業時間、休日出勤などを部署ごとにまとめる作業と、安全管理部門がまとめてレポートにするという作業が発生。
8時から17時の通常勤務のほか、フレックスタイム採用、昼勤、夜勤など様々な勤務形態がある上に、それぞれのデータは管理が別々で、大きな工場では専属の担当が必要なほどだったとしている。
工数管理も同様に煩わしさがあったという。金型生産は一品生産のため、型が変わる度に時間算出作業が必要。設計、製造、検査の各工程で各部署から提出される数値と合計値が異なると集計のやり直しが発生し、かなりの手間だったとしている。
一元管理を検討し、30ほどのBI製品を検討。ユーザーインターフェース(UI)の使いやすさ、権限設定などセキュリティ機能、コストの3つを要件に8つまで絞り、各社からの説明やデモ版でのトライアルなど検討を重ねたという。
最終的な決め手は、同業での活用事例とその声になるという。Yellowfinの営業担当が生の声を聴く機会を調整。詳しい話にはならなかったが、安心感につながったとしている。
各部署の勤怠集計担当者への使用データ調査から開始し、3カ月ほどで構築。2018年の年明けからYellowfinでの労務管理を開始しているという。削減できた各部署での集計作業時間は年間で552時間ほどになるとしている。労使懇談会などのために安全管理課が実施していた工場全体の集計作業も年間48時間ほど削減見込みで、あわせて600時間ほどの削減を見込むという。
ダッシュボードは労務管理のほか、金型の制作工数管理、原価管理、不良管理などを構築。数字の集計、レポート時間の削減を目指しつつ、他部署や他工場からも関心を寄せられる状態だという。働き方改革を実現するツールと捉え、全社導入を提案中としている。
現状の可視化に加え、今後は分析にも活用していくという。そのための課題がデータ精度だ。現在は調達方法がまとめて一式となる部品など、単価が不明瞭なデータが存在しているという。元となるデータをどこまで整備するかを見極めつつ、最適な調達だけでなく計画、人員配置などにも活用したいとしている。
活用を広げるための課題として、業務の見直しを挙げている。付帯的作業を改善するためには、ITを通して何を達成するかを考え、その施策をITで支援するという文化の根付きの必要性を感じているという。
現在は、トピックとなる“ストリーム”の作成、コメントやタスクの割り振りなどが可能で、SNS感覚で使えるYellowfinのプロジェクト管理機能「ディスカッションストリーム」を連絡の正式手段に統一。若手を中心にYellowfinの活用が進んでいるという。ダッシュボードをレポート提出の正式手段化するなど、さらなる浸透を目指すとしている。
画面イメージ(出典:Yellowfin Japan)