ソフトウェア契約、課金形態に変化の兆し--データ量での課金に増加か

藤代格 (編集部)

2019-07-25 07:15

 ガートナージャパン(ガートナー、港区)は7月24日、国内企業のソフトウェア契約交渉に関する調査を発表した。変革期のまっただ中で、適切な対応を即時に取れない企業はデジタル化に翻弄されるという。国内のユーザー企業で選定、導入に関与する担当者のみを対象に5月に調査。課金形態や第三者保守についてまとめている。有効回答数は207件。

データ量での課金が増えていくか

 ソフトウェアの課金形態(メトリック)において最も一般的なユーザー数ベース。利用中ソフトの調査でも半数近くを占めたという。

利用中ソフトウェアの契約形態(出典:ガートナー)
利用中ソフトウェアの契約形態(出典:ガートナー)

 ガートナーのアナリストでバイスプレジデントの海老名剛氏は「モノのインターネット(IoT)、人工知能(AI)、ロボティックプロセスオートメーション(RPA)といったデジタルテクノロジーを経由するソフトなどでアクセス方法が多様化。接続する“デバイス”の数の測定が難しくなり、何をもって“ユーザー”とするかの定義が曖昧になりつつある」と指摘。多種多様なアクセス、利用が広がり、ソフトが処理するトランザクションの量がこれまで以上のペースで増加するという。

 データボリュームをベースとする課金はベンダーにとって新たな“商機”として広がりつつあるという。業務ソフトでは11.1%、デスクトップソフトでは8.6%と、現在の採用率はさほど高くないものの、ボリューム以外の課金形態で業務ソフトウェアを契約するユーザーに「ベンダーから変更提案があったか」の調査項目では、77.4%があると回答。今後も業務ソフトを中心に課金形態の変更を迫られるユーザーが増加するとしている。

 ボリュームベース課金はデジタル化を背景に一般化しつつあるが、ユーザー数やデバイス数の不足など、ライセンス監査によくある指摘がなくなるというメリットもあるという。不確定かつ未成熟な新形態という側面を念頭に、現在の利用状況の棚卸し、従来とのコスト差や測定方法をベンダーと協議する時間の確保など、十分な準備が望まれるとしている。

第三者保守サービスから読み解くニーズ--効果の協議が重要

 「SAP ERP」と「Oracle E-Business Suite」のユーザーには、第三者保守サービスの利用、検討状況についても調査。過半数で利用、検討経験があったという。

国内SAP、Oracleユーザーの「第三者保守」の利用/検討状況(出典:ガートナー)
国内SAP、Oracleユーザーの「第三者保守」の利用/検討状況(出典:ガートナー)

 利用中の企業27社に対する5段階の満足度調査は、「大変満足」が3.7%、「満足」が33.3%、「普通(可もなく不可もなく)」が59.3%、「不満」が3.7%という結果で、最も低い「大変不満」はなかったという。満足度は総じて良好だが、第三者保守サービスはある程度割り切っての利用が珍しくない点、分かりやすいコスト削減効果がある点を割り引いて考える必要があるとしている。

 海老名氏は「デジタルテクノロジーとの連携やクラウド化を進めるべく製品のメジャーバージョンアップで旧バージョンのサポートの終了するベンダーがあるが、こうした強化を今すぐに必要としないユーザー企業も存在する。自社ソフトウェアの現バージョンの延命は、新たなテクノロジーを取り入れる最適なタイミングや機会を得る“打ち手”になる可能性があり、今回の調査結果はこうしたユーザー企業の意識の表れである。打ち手を有効活用するため、実際の効果を得るまでの“シナリオ”を社内の関係者と慎重に協議、共有する必要がある」とコメントしている。

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