ガートナーが語る2020年に向けた注目ポイント--取るべきアクションも提言

藤代格 (編集部)

2019-03-26 07:15

 ガートナージャパン(港区)は3月25日、「2020年に向けてITやセキュリティ領域に大きな影響を与える注目すべきイベントと推奨」を発表した。同社アナリストでシニアディレクターの礒田優一氏は、2019年を「新しい時代の幕開けに向けた“期待”と“不安”、あるいは新たな“機会”と“リスク”が交錯し、混沌とした状況になりつつある」とコメント。環境の急速な変化とデジタル化のスピードに乗り遅れることなく、予測困難な時代においても自社のビジネス環境に関連する事象を冷静に分析し、活路を見いだす必要があるという。

 2020年に向けて予定される主なイベントでIT/セキュリティリーダーが特に考慮すべき点を「サイバーセキュリティとプライバシー」「システム開発/運用」「デジタルワークプレイス」「デジタルトランスフォーメーション」の4つのカテゴリに分類。企業が2019年から開始すべきアクションまでを解説している。

サイバーセキュリティとプライバシー

 2019年6月のG20大阪サミット、9月のラグビーW杯、2020年の東京五輪など、世界からの注目度も高まる国際的なイベントは、テロやサイバー攻撃などの脅威が懸念されるという。

 2019年4月に施行される改正サイバーセキュリティ基本法では「サイバーセキュリティ協議会」が新設。官民での脅威の情報共有が期待されているという。リーダーはこうしたイベントを好機に国内外の脅威と対策を理解し、自社のセキュリティ体制の強化を図るべきとしている。

 2019年3月に開始する「情報銀行」(情報信託機能)の事業者認定では、個人データの活用が収益機会の拡大につながるという期待の声と、個人情報漏洩などの多発に伴うプライバシー侵害などの脅威拡大への不安の声が混在しているという。

 一方、グローバルの動きとして、2019年1月に日本と欧州連合(EU)の間でデータ越境移転について十分性認定の枠組みが発効。2019年中にはEUの“クッキー法”とも呼ばれるeプライバシー規則(ePrivacy Regulation)、2020年1月にはカリフォルニア州消費者プライバシー法(California Consumer Privacy Act:CCPA)の施行が予定されており、いずれも日本国内にも影響が及ぶ可能性があるという。プライバシーに関しては、国内のみではなくグローバルの動きを踏まえる必要があるとしている。

システム開発/運用

 2019年5月1日の改元では、政府による新元号の公表からの期間が限られ、影響を最小限に抑えるために事前準備が重要になるという。具体的には和暦を使う業務アプリケーションとシステム、その連携システムの洗い出し、改修と検証スケジュールの立案などを挙げている。

 10月に予定されている消費税率変更も官民問わず同様で、システムへの影響分析、入念な準備が必須としている。

 2020年4月の施行を見込む改正民法は、ITシステム開発委託などのアウトソーシング取引に影響する変更を含み、契約類型に関連するという。リーダーは法務の専門家と協働し、外部委託取引に新条項が適用された場合のメリットとデメリットの認識、適用する案件の条件決定など、施行に備える必要があるとしている。

デジタルワークプレイス

 2019年4月1日から施行する働き方改革関連法は、労働者の生産性向上に対する本格的な取り組みと表現。

 公益財団法人日本生産性本部の2018年発表資料によると、経済協力開発機構(OECD)の労働者生産性比較で日本は21位。差別化できる高品質な製品やサービスの創出、国際競争力向上が求められ、生産性向上、効率化を実現する有効な手段としてITを活用する必要があると指摘。企業は「付加価値を生まない時間の削減」を実現し、イノベーションを起こし、アイデアを生み出しやすい働き方にいかにして変えていくかを真剣に考える必要があるとしている。

 企業にとっての課題となるIT環境のセキュリティ対策は、新たなテクノロジを組み合わせればユーザーの利便性や生産性を損なわずに対策できると説明。リーダーはデバイスやデータを「持ち出さない」ことを前提とする従来の防御偏重の発想を捨て、ユーザーの行動を基準にして対策する必要があるとしている。

デジタルトランスフォーメーション

 あらゆる分野でデジタルトランスフォーメーションが急速に進むグローバルと比べ、日本は十分なスピード感をもって対応できているとは言い難いと説明。

 政府が2018年6月に策定した「未来投資戦略2018」では、重点分野における計画と関連施策などが挙げられており、「基盤づくり」としてITとセキュリティ分野をまたぐ施策も述べられているという。将来的に日本の成長戦略の行方を左右する重要な内容も含んでおり、企業は今後の議論や動向を注視する必要があるとしている。

 同社アナリストでティングイッシュトバイスプレジデントの亦賀忠明氏は「今後のデジタルトレンドによってもたらされる、かつてない競争や環境変化に対応するため、人材面の新しいリテラシ、スキル、マインドセット、スタイル(芸風)が不可欠。相当な時間とエネルギーが必要で、数年たってようやく重い腰を上げるといったやり方はそれ自体が大きなリスクになる。企業は人材投資などの具体策に基づく人材の競争力強化に速やかに着手すべき」とコメントしている。

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