AGCの化学品事業である化学品カンパニーは、全体的なデジタル変革(DX)の取り組みの一環として、化学品プラントのデータ活用を進めている。5月には、データ分析のプロセスを自動化するプラットフォームとして「Alteryx」を導入した。
化学品カンパニーは、 基礎化学品、機能化学品、ライフサイエンスなど幅広い製品を扱い、製品開発から製造、販売まで担っている。AGCでは現在、全社的にDX化を進めており、化学品カンパニーではその一環として、化学品プラントのスマート化に取り組んでいる。
化学品プラントのスマート化では、「データを活用できる形で収集・蓄積し、 データを見えるようにして課題を発見する(見える化)」「見えるようになったデータを分析し、 課題を明確化する(分かる化)」 「データから得られた洞察を実務に落とし込み活用し、 変化を促す(変わる化)」の3ステップで推進。これらに対応可能なデータ分析基盤としてAlteryxを2020年に試験導入し、2021年5月から本格導入している。
Alteryxは、GUIを用いた直感的な操作で、ノンプログラミングによるデータブレンディング、空間分析、予測統計分析などの機能を、ユーザー自身がセルフサービスで利用できるデータ分析基盤。Alteryxでは、分析プロセス自動化(Analytic Process Automation:APA)プラットフォームと呼んでいる。
化学品カンパニーでは、これまで社内外のシステムエンジニアがシステムを構築して、収集したデータの加工集計や整理を行っていた。Alteryxの導入後は、プログラミングの知識がない社内の従業員も構築できるようになり、社外のシステムエンジニアに委託した場合と比べて、 開発費用を80%以上削減できるシステムがあることも明らかになった。従業員のほとんどが、導入後1~2週間でデータの取得から分析まで使いこなせるようになっているという。
また、データの提供を受けてから分析結果をフィードバックするまでに1~2カ月費やしていた作業が、数日でフィードバックできるようになった。課題を抱えている部門にとっては、自分たちが提供したデータがどのように活用されているのかが、すぐに分かるというメリットがあるという。データを提供する価値が実感できるようになり、データ収集、提供、活用に対するモチベーションが上がったとしている。
Alteryxのユーザーインターフェースによって、処理画面を実際に提示できるようになり、分析内容の社内共有を簡単にできるようになった。一方で、想定通りの分析ができていない場合には、不足情報の発見や把握したいデータにつながるアクションに気が付くようになるなど、データ活用に対するリテラシーが向上している。
化学カンパニーが2019年に始動した化学品プラントのデータ収集・可視化システム「CHAMP(チャンプ)」では、 データ収集の効率化、高度化を進めるとともに、 収集したデータの可視化による問題解決、価値創造を目指しており、 Alteryxの導入によって開発期間の短縮や開発費用の削減などの効果を得ている。今後は課題解決や価値創造にAlteryxの活用範囲を広げていく計画という。