世界的な半導体不足の影響は、さらに多くの業界に広がり続けている。そんな中、米国内での半導体の製造を促すために520億ドル(約5兆7000億円)の巨額を投じるとする、画期的な法案が米連邦議会上院を通過した。
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この投資は、「US Innovation and Competition Act(米国イノベーション・競争法案)」と呼ばれる2500億ドル(約27兆4000億円)の包括パッケージの一環だ。このパッケージには人工知能(AI)や量子通信など、科学に関する多様な研究開発分野が網羅されている。
この新法の中でも米国における半導体業界の振興は、重要な条項の1つだ。Joe Biden米大統領はかねて半導体業界のてこ入れを公約として掲げており、3月の時点で連邦議会に対し、「Creating Helpful Incentives to Produce Semiconductors(半導体製造支援法)」の頭文字を取ったCHIPS法の推進のため、半導体の製造と研究に500億ドル(約5兆4800億円)を投じるよう連邦議会に要請しており、新法での振興策もこれを受けたものだ。
Biden氏の要請は業界の幅広い支持を獲得し、5月には振興のための資金を迅速に確保するよう後押しする取り組みの一環として、複数のセクターを横断する半導体企業のアライアンス、Semiconductors in America Coalition(SIAC)が立ち上げられた。
上院が法案を承認したことで、投資は実現に向けてさらに1歩近づいた。法案は現在、下院に送られており、ここでの議論を経た上で、ホワイトハウスに送られて大統領が署名をすると成立する。
この法が成立すれば、予算の大半が「CHIPS for America Fund」と呼ばれる基金に振り分けられ、今後5年にわたり、次世代半導体の開発を目指す米国各地の研究開発プログラムの推進に用いられる。また、一部の予算は、国防総省および情報機関のニーズに対応する取り組みに割り当てられる。
さらにこの法案は、米国の半導体サプライチェーンの脆弱な部分を特定し、こうしたボトルネックへの対応および状況の改善に向けた施策を行う、新プログラムの確立も目指している。
現在、半導体の製造はもっぱら米国外の地域に集中している。特に半導体ファウンドリーは、その大半が東アジアに拠点を置いているのが現状だ。
その理由は、ほとんどの企業がこの数年、複雑なプロセスを伴う自社製品向けの半導体製造を自前では行わず、サムスンと台湾積体電路製造(TSMC)という2つの大手企業に委託しているからだ。その結果、世界の半導体製造能力のおよそ4分の3を、中国、日本、韓国、台湾が占める状態となっている。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。