続々と計画される新機能で、効率的な運用を実現
大規模なラック群を運用するデータセンタ向けにアラクサラではAX3830Sのさらなる機能追加を計画している。
まず、スタック対応。データセンタでは従来に増してL2ネットワークが拡大する。そのため高速で信頼性の高い冗長化手法が求められる。これに対応するため、スタックによる装置跨りリンクアグリケーションという手法の将来サポートを計画中だ。リンクアグリゲーションを使うことで、サーバとLANスイッチとを接続する複数のリンクを1本に束ねることができる。通常、ネットワークの冗長化には、スパニングツリー プロトコルという手法を使いループを避けるが、LANスイッチのCPU負荷増大等でループ障害が発生するリスクがある。スタックの装置にまたがったリンクアグリケーションはループフリーの冗長を実現し、複数リンクにトラフィックを負荷分散することが可能になる。
仮想化環境でのネットワーク設計には様々な課題がある。
物理サーバ内に複数の仮想マシンを収容すると、物理サーバ内に仮想マシン間のトラフィックを中継するための仮想スイッチが必要になるが、仮想スイッチはソフトウェア処理のため、物理サーバのCPUに余計な負担がかかる。
AX3830Sでは、物理サーバのCPU負担を軽減するため、仮想マシン間のスイッチング処理を外部の物理スイッチにオフロードするEVB(Edge Virtual Bridging)の将来サポートを計画中である。
EVBを使用すると、ネットワーク関連の設定が外部の物理スイッチに集約され、物理サーバ管理者とネットワーク管理者の作業分担が明確になるメリットもある。
また、仮想環境においては仮想マシンのライブマイグレーションへの対応も、大きな課題となる。仮想マシンのライブマイグレーションとは実行中の仮想マシンを別のホストに無停止で移動させる技術である。仮想マシンが物理サーバ間を移動する場合、ネットワークのポリシーをどう追随させるかが重要になる。
ライブマイグレーションに伴い必要となるネットワーク機器の設定変更作業としては、VLANやフィルタの移動がある。AX3830Sで将来サポートが計画されているのは、仮想マシン間の通信をコアスイッチ経由にし、コアスイッチにVLANやフィルタを設定するモデルを検討している。仮想マシンのライブマイグレーションを行う場合にはコアスイッチ内の設定のみで済み、運用・管理コストが軽減される。

図2:コアスイッチ経由の仮想マシン連携
また、データセンタでの利用において有り難いオプションがAX3830Sではサポート予定機能として検討されている。柔軟なエアフロー機能だ。AX3830Sは前面吸気・背面排気、背面吸気・前面排気(*1)の両方に対応できる。通常はインタフェース面をラック前面に向けるが、サーバに合わせてインタフェース面をラック背面に向けることもある。これは、サーバルーム全体の温度管理体制によってケースバイケースだが、サーバに合わせてスイッチのインタフェース面を背面にすることで温度管理がしやすい場合には有り難いオプションとなるだろう。さらにAX3830Sは室温50℃にも耐えられる設計となっており、その堅牢性は折り紙付きだ。
