世界はOpenStackの上で動いている
NTTソフトウェアイノベーションセンタ第三推進プロジェクトの主幹研究員
水野伸太郎氏
続けて、NTTソフトウェアイノベーションセンタ第三推進プロジェクトの主幹研究員で、日本OpenStackユーザ会の会長も務める水野伸太郎氏が登場し、基調講演を行った。
水野氏は「OpenStackはオープンソースであるだけでなく、開発プロセスも含め、全てがオープンだ。アーキテクチャも非常にオープンな構造で、APIを介してさまざまなアプリケーションを開発したり、多様な製品、OSSを自由に組み合わせて使うことができる。OpenStackの回りにあるエコシステムやビジネスが発達していることも特徴だ」と述べた。そうした文化ゆえか、OpenStackの開発には世界188カ国からエンジニアが参加し、50以上のプロジェクトが動いている。コミュニティを支えるスポンサーも多く、NTTもその1社だ。
OpenStackの最新状況を把握できる場として、年に2回の「OpenStack Summit」が開催されている。2016年10月に開催された「OpenStack Summit Barcelona 2016」は、約5200名が参加する大規模なイベントとなった。
このサミットでは「The World Runs on OpenStack」(=OpenStackの上で世界が動いている)というテーマが示す通り、「色々なビジネス、色々な業界でOpenStackの利用が進んでいることが示された」(水野氏)。サミットに合わせて行われたアンケートによると、OpenStack導入企業の80%以上が製造、教育、通信、交通、金融など非IT企業で占められていた。また規模も必ずしも大規模とは限らず、5000名以下の企業が半数以上を占めていたという。
用途も多様化している。サミットの基調講演では、いわゆるIaaSだけでなく、業務アプリケーションを動かしたり、ビッグデータ分析に活用したりといったさまざまな事例が紹介され、「色々な分野でOpenStackの基盤が当たり前のように使われている、というメッセージが伝えられた」(水野氏)。同時に、OpenStackのAPIを介して、異なる事業者が提供する複数のクラウドを横断して同じ環境を構築する「マルチクラウド」というコンセプトも紹介されたという。
水野氏は続けて、NTTグループにおけるOpenStackへの取り組み状況を紹介した。NTTコミュニケーションズのパブリッククラウドサービス「ECL 2.0」の基盤をはじめ、プライベートクラウドやNFVの基盤、システムインテグレーションやサポートサービスなどで活用しているが、「別に『導入しろ』という命令があったわけではない。各社で技術を検討していった結果、自然とOpenStackがサービス基盤として使われていた」(水野氏)
同時に、コミュニティ活動にも積極的に参加している。研究所に所属する3名のコアレビューアを中心に、パッチの投稿やバグ報告、修正といった活動を行っており、OpenStackの最新リリース「Newton」には、NTTグループから26名のエンジニアが46のモジュールにコードを貢献したそうだ。
「オープンソースは、バグがあれば簡単に直すことができるが、独自パッチが増えてくると、バージョンアップのたびに適用し直さなければならず、非常に苦労する。そこで、なるべく独自のパッチを持たず、アップストリームを行ってコミュニティに還元し、オープンソース自体を良くする取り組みを行っている。色々な人が少しずつ貢献することでプロジェクトが活性化し、ひいてはOpenStackがどんどん活性化し、盛り上がってほしいと考え、活動している」(水野氏)
ソースコードの書けない人にも貢献できる方法はある。バグ報告や機能の要望も立派な貢献だ。水野氏は、OpenStackの運用者が集まる「OpsMeetup」や「日本OpenStackユーザ会」、日本で年に1度開かれる「OpenStack Days Tokyo」といった場に積極的に参加してコミュニティを盛り上げてほしいと呼びかけ、講演を締めくくった。