カリフォルニア州パロアルト発--SunのScott McNealyとMicrosoftのSteve Ballmerは米国時間13日、両社の進める技術協力について進捗状況の報告を行った。このなかで両氏は、以前両社を隔てていたあるネットワーキング技術が、共同の取り組みの第一弾となっていると述べた。
両氏の説明によると、この技術はログイン時にコンピュータユーザーと管理者を悩ませてきた亀裂を埋めるのに役立つものだという。SunとMicrosoftがデモした「シングルサインオン」ソフトウェアが普及すれば、一度ネットワークにログインするだけでよくなり、以前のように何度も認証を繰り返す必要がなくなる。
「われわれは、すでに実験段階を終え、一緒にこの技術を市場に投入しようとしているところだ」(Ballmer)
Ballmerによると、このソフトウェアはおそらく2006年に登場する両社の製品に搭載されることになるという。いまのところ、この技術は最も具体的な両社の協力例となる。両社はかつて熾烈な争いを繰り広げていたが、2004年に訴訟に和解し、特許の相互利用と両社ソフトの互換性実現に合意していた。
「この部分が最大の争点だった」とCurrent AnalysisアナリストのShawn Willettは 語る。
この分野での協力は見られるものの、MicrosoftとSunの間には、たとえばMicrosoftのWindowsとSunのSolaris OS、それからSunのJavaソフトウェアとそれに似たMicrosoftの.Netなど、政治的ではないとしても技術的に大きな溝のあるソフトウェア製品がまだ残っている。
それでも、共同で作業を進める社員同士の会話を成立させるだけで半年かかったほど文化やエンジニアリングのスタイルの異なる両社にとって、この協力には非常に大きな意義がある。
McNealyが「遠心力のような離れる力や、侵入者に対抗する抗体が働いて、うまくいかないかと思うことが何度もあった」と語れば、Ballmerは経営陣が短気だったとし、「自己紹介はもういいから仕事を始めろ、という話ばかりしていた」と付け加えた。
両社は今後も多数の分野で協力を行うことになっている。具体例としては、ストレージソフトウェア/ハードウェア、統合システム管理、メッセージングおよびイベントトラッキングのWebサービス標準、そして負荷の高い計算処理を中央のサーバに任せてPCをシンクライアントのように機能させるWindowsターミナルサービスなどが上がっている。
Linuxはどこに
McNealyとBallmerは、両社の提携を顧客が求めていたこと、そして顧客がその進展に非常に満足していることを繰り返し力説した。しかし一部には、他のライバル各社との協力にもメリットがあるとする意見もある。
Enterprise Strategy GroupアナリストのWilliam Hurleyは、「言及も質問もなかった話題が1つある。Linuxだ。この話題が軽く扱われやことに失望した。WindowsやSolarisを利用する顧客の大半はLinuxも利用している」と語っている。
実際のところ、Linuxは完全に無視されたわけではなかった。McNealyは、長期的に存続すると自らが予測したOSのリストから露骨に同OSをはずしたのだ。
「市場では明らかに2つのOSが生き残る。SolarisとWindowsだ。長期的に見た場合、3位に何が来るかは分からない」(McNealy)
両社の協力が発表された当初、MicrosoftはSunに対し、Sunが起こした独禁法裁判の和解、特許の使用許諾、そして技術共有の目的で19億5000万ドルを支払った。Microsoftは今年、特許契約延長の名目でさらに5400万ドルをSunに支払っている。
しかし、McNealyは13日の記者会見で、現在はお金の流れが逆になりつつあることを明かした。同氏は、「双方向に流れている」と語ったが、同氏もBallmerもSunが支払った金額については公表を差し控えた。