Gartnerが有名な「ハイプ曲線」を用いた報告書の数々をまとめるときに誰に話を聞いているのか筆者には定かでない。もっとも彼らが企業に話を聞いているとは信じがたい。最近、筆者は同社の報告書「Hype Cycle for Open-Source Software, 2007」を通読していたのだが、自分がこれまで「だまされて」いたことを知って仰天した。筆者は顧客が金を払ってくれるだろうと信じていたが、実は金を払っていなかったというのだ。
すなわち、Gartnerは以下の分野のオープンソースソフトウェアを企業が採用するようになるまでまだ数年かかることを示唆しているのである。
- コンテンツ管理(5〜10年)
- エンタープライズサービスバス(ESB)(5〜10年)
- J2EEアプリケーションサーバ(2〜5年)
- IP電話(2〜5年)
「メインストリーム」というのはすべての企業がそれをすでに購入しているという意味だろうか。それとも、著名な「アーリーアダプター(早期採用者)」のみならず市場の大部分の企業が採用しようとしているという意味だろうか。
後者であれば筆者は声を大にしてGartnerに異議を表明する。
筆者はコンテンツ管理企業のAlfrescoに勤務している。また、それ以外の10社のオープンソース企業の顧問になっているし、Red HatやMySQLなどのその他の企業とも密接な関係を保っている。はっきり言って最近ではオープンソースを積極的に評価または採用しようとしていない企業を見つける方が困難である。
筆者は先日、「レイトアダプター(後期採用者)」に属する2つの企業で過ごした。1社は自動車業界内の大手メーカーで、もう1社は大手小売業者である。だが両社とも、オープンソースのコンテンツ管理ソフトウェアを購入するのにあと5年かそれ以上かかるようには思えない。
JBossはオープンソースのミドルウェアソリューションをメインストリーム企業に販売している。同社がGartnerの報告書をみたら、明らかに理解できないと思うだろう。また、MuleSourceは金融サービス市場の中核企業を超えて幅広い顧客に製品を販売することをやめられないようだ。同社の動きもどうやらGartnerの報告書と合致しそうにない(実は筆者はMuleSourceの顧問を務めている)。
確かに多くのアーリーアダプターはオープンソースを受け入れている。しかし、多くのオープンソースソフトウェア市場はすでに成長の「アーリーアダプター」段階は十分にクリアしており、「アーリーマジョリティ(初期多数採用者)」段階に突入しているのだ。
Gartnerはこのことを理解しているが、ハイプ曲線の計算からは除外しているようだ。Gartnerは次のように述べている。
今日、幅広い業界の市場区分にわたってメインストリーム企業のIT部門はオープンソースの影響力を回避または無視することはできなくなっている。もし回避または無視してしまうと成熟かつ安定し、十分なサポート態勢が整えられたオープンソーステクノロジを活用し、大幅なROI(投資利益率)達成とTCO(総所有コスト)削減の機会を得ている競合他社と比べてきわめて不利な状況に置かれてしまうだろう。さらに、オープンソースはIBM、Oracle、BEA Systems、SAPといったさまざまなベンダーが販売している市場をリードする製品(それらの製品そのものはオープンソースではない)に埋め込まれる形で企業のIT部門に入り込んでいる。
しかり。われわれはハイプ曲線の図で示されているこの現実をとにかく直視する必要がある。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをシーネットネットワークスジャパン編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ