クラウドコンピューティング、そしてプラットフォーム戦争の再勃発

文:Dion Hinchcliffe(Special to ZDNet.com) 翻訳校正:村上雅章・野崎裕子 2009年04月06日 11時22分

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Sun Microsystemsは米国時間2009年3月18日、同社の新たなクラウドコンピューティングサービス「Sun Open Cloud Platform」がストレージレベルでAmazonの有名な「S3」サービスとAPIコンパチブルなものになると発表した(関連英文記事)。このことは、クラウドコンピューティング市場においてプラットフォーム戦争が勃発しようとしている最初の証となるだろう。コンピューティングの進化において次なる大きな飛躍を生み出そうと参戦してくる企業の多さを考えた場合、この戦争は重要なものとなり、かつ長期化する可能性が高いと言えるのだ。

 この戦争によって、極めて予測可能性の高い、しばしば何度も繰り返されるイベントのサイクル(以下の図を参照)が始まることになる。このサイクルは、過去におけるPCのハードウェアやオペレーティングシステム、データベース、そしてウェブそのものといった数々のプラットフォーム戦争の際にも見られたものであり、勝ち残った一握りの者たちだけが勝利の美酒に酔うことができるのだ。

 数年後に今を振り返って見た場合、クラウドコンピューティングはソフトウェアの歴史において重要かつ大きな方向転換だったと認識されることになるだろう。未来のコンピューティングプラットフォームは、その多くがユーティリティ企業と呼ばれるものによって構築、運営されることになるはずだ。こういったコンピューティングの未来像は、一見するとつまらないものに思えるかもしれないが、現代におけるソフトウェアの規模とスコープを考慮した場合、費用対効果を一定以上に保ち続けるためには新たな経済モデルが必要となるということを考えると、これは必然的かつ実用的な進化と言えるのだ。事実上、今日におけるオンラインアプリケーションはすべて、可能な限り迅速かつ安価に、数百万人規模のユーザーに対応できなければならないのである。

 しかし、コストというものは、クラウドコンピューティングにおける興味深い側面の1つでしかない。クラウドコンピューティングは市場の規模も莫大なのである。:The Wall Street Journal紙の3月26日付けの記事によると、クラウドコンピューティング市場は2012年までに420億ドル規模、すなわちソフトウェアビジネス全体の半分近くにまでに達すると予想されるという。

コンピューティングプラットフォームのライフサイクル コンピューティングプラットフォームのライフサイクル:12時の位置から左回りに「強力なものを提供する企業が台頭する」→「市場の再編が起こり、プラットフォームの安定化が図られる」→「新型プラットフォームによって混乱が引き起こされる」→「新型プラットフォームが台頭する」→「プラットフォームが収斂し、初期の規格が出現する」→「最も一般的な規格が採用される」

 ソフトウェアの世界は最近になって(少なくとも現時点では)、日常化され、仮想化され、オープンソース化されたソフトウェアという未来に向かって徐々にではあるが着実に歩み始めている。そして現時点のクラウドコンピューティングは、クラウドコンピューティング自体が持つ独自の特徴とともに、大規模ベンダーによる昔ながらのコンピューティング形態(それが意味する善いことも悪いこともすべて引っくるめた)への回帰を予兆させるものとなっているように感じられる。

 これによって、古くからある多くの問題が再び持ち上がってくることになる。その問題とは、プロプライエタリな、すなわち商用システムによるアプリケーションの実行にまつわる問題や、ベンダーに囲い込まれるという現実的なリスク、カスタマイズしにくく大は小を兼ねるというコンセプトに基づいたコンピューティングモデルへの業務の適合に際する問題といったものだ。企業によっては、コンピューティングプラットフォーム戦争の最終ラウンドを引きずってまだこういった問題と格闘しているものの、オープンソースやLAMP、非商用ベンダーによる軽量アプリケーションスタックといったオープンで共同作業が行えるものの採用に踏み切る企業も増加しつつある。また、クラウドコンピューティングも同様に新たな懸念を数多く投げかけているという点も見過ごせない。つまり、クラウドに基づいたアプリケーションの実行時におけるレイテンシやパフォーマンスにまつわる懸念に加えて、リスクや信頼といったガバナンスの懸念も持ち上がってくるのだ。

クラウドコンピューティングの成長

 しかし、近代的なネットワーク時代の到来によって、SaaSやWeb 2.0サービスへの扉が開かれたことで、ITの世界で昔から成立してきた、自らですべてを実装すれば効率は高くなるという古典的なものの見方が成立しなくなってきている。リソースを有効利用して、コストを分散し、共有される価値を蓄積するために、ネットワークに内在する力を活用するという新しいコンピュータモデルは、2008年に製品としてしっかりと実現されたからこそ、大きな説得力を持つようになったのである。また、こういったモデルは今やビジネスにおいて信頼して使用できる準備が(ほとんど)整ったものともなっているのである。このことは、クラウドコンピューティングに関する議論において、現時点での話題の中心となっているストレージやプロセッシング、インフラといった、より水平型に特化したクラウドコンピューティング形態だけでなく、よりアプリケーションに特化したクラウドコンピューティング形態についても言えることなのだ。

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