米国大統領による一般教書演説に学ぶ--リーダーとしてのテクニック

文:John McKee(Special to TechRepublic) 翻訳校正:村上雅章・野崎裕子

2010-03-17 07:00

 より良い結果を生み出すためのリソースが不足していると感じたことはないだろうか?本記事では、企業経営者に対するコーチでありリーダーシップに関するコーチでもある筆者が、リソースに資金を投入するよりも効果的であり、生産性と士気の向上のために多くの企業で昔から実践されている方法を紹介する。

 米国では、大統領が1年に1度、自国の利害関係者に向けて演説を行うことになっている。そしてその際には、国の現状や、そういった状況に至った理由、今後進んでいく方向についての見解を語るのである。

 あなたは自らのチームに対して、こういったことを行っているだろうか?もし行っていないのであれば、あなたは企業内のさまざまなものごとを大きく改善できる素晴らしい機会を逃していることになる。

 米国大統領による一般教書演説は、1790年に初めて行われて以来、毎年行われている。その目的には、純粋に政治的なものもあれば、情報を提供するというものもある。つまり、大統領は一般教書演説において、どういったことが、どういった理由で行われているのかについて、他の人々が理解できるよう(平易な言葉で)説明するわけである。また、大統領はこの機会を利用し、今後の変革に関する自らのビジョンを分かち合おうとする。こういったことは、どのような時でも重要であるものの、厳しい時期にはさらに重要となってくる。また、一般教書演説の場には、上下両院議員や最高裁判所判事などが出席するため、自らに対する支持を取り付ける必要のある人々に訴えかけるためにも利用されている。

 こういったコミュニケーションを、ほとんどの企業で採用されている手法や形態と比べてみてほしい。あなたの組織や会社ではどうだろうか:あなたは自らのチームに対して、自身のビジョンを分かち合おうとしているだろうか?同様のアプローチを採っている企業は多いものの、その効果が最大限に活かされていると言えるところは少ないのが現状である。

 組織が効率的であろうとすれば、チームメンバーは勤務場所や自らの立場にかわわらず、以下のことを理解していなければならない。

1.現状に至った経緯--チームメンバーは、組織内で進行しているものごとの事情や理由に関する上司の視点を理解していなければならない。つまり上司は、経済や業界に関する内容、あるいは自社の施策や問題に関する内容を彼らに語って聞かせておく必要があるということだ。こういった機会を設けなければ、彼らは誤解したり、根拠のない否定的な意見を鵜呑みにしてしまうことになりかねない。人間であれば、またチームのメンバーであれば、大人として扱われ、自身とは異なった視点に立つ人の考えに接し、より良い理解を得られることに喜びを感じるはずである。

2.今後の見通し--会社、そして特に上司であるあなたが、今後に起こるであろう変化と、そういった変化に要する期間についてしっかり把握しているということをチームに伝えておくのも重要である。予測される事態に対応するための計画や対策を彼らに伝えておくことで、次のような2つのメリットがもたらされる。1つ目のメリットは、情報を伝えておくことにより、計画への参加を彼らに促し、ひいてはその計画の達成確度を高めるというものである。2つ目のメリットは、会社の方向性に関するあなたの考えを伝えることにより、新たなアイデア(三人寄れば文殊の知恵である)が生み出されることを期待するとともに、多くのマンパワーを要する作業も可能にするというものである。あなただって何かを見過ごすこともあるだろう。

3.障害があっても、一致団結すれば乗り越えられるということ--多くの素晴らしい計画が頓挫している。その原因は、計画内容の充実度や、費用便益比とは関係がないことも多い。また、完全に政治的な理由によって失敗することもある。すなわち、計画の達成を望まない人から、さまざまな手を使って妨害されるということもあるわけだ。本記事で採り上げているような意思表明の場を設けることには、こういった失敗への道を避けられるというメリットも(見過ごされることが多いものの)存在している。リーダーは人々に直接語りかけることで、あらゆる方面からの協力を取り付けられる見込みを高めるられるようになる。少なくとも、一斉攻撃に遭う危険性を減らすことはできるはずだ。

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