「怖い存在になりそうだね。決め(意思決定)がこれまで以上に速くなるんじゃないかな」——。
富士通のある幹部は、米IBMの新CEOに就任するバージニア・M・ロメッティ氏をこう評価してみせた。
IBMは、2012年1月1日付けでロメッティ氏を社長兼CEO(最高経営責任者)とするトップ人事を発表した。歴代9人目となるCEOは、IBMにとっては初の女性CEOだ。これにより、今年9月に米Hewlett-Packard(HP)のCEOに就任したメグ・ホイットマン氏とともに、コンピュータベンダー大手2社のトップが女性になる。
一方、これまで社長兼CEOを務めていたサミュエル・J・パルミサーノ氏は、会長に退く。先頃60歳になったばかりのパルミサーノ氏は、「60歳でCEOを退く」という同社の不文律から、同社恒例の1月1日付け人事での退任が予想されていた。
次期CEO候補の名前はなかなかあがってこなかったが、蓋を開けてみれば、初の女性CEOという注目を集めるトップ人事となった。
金融とサービス--中核事業を知り尽くすロメッティ氏
ロメッティ氏は現在、営業部門、マーケティングおよび戦略を担当する上級副社長兼グループ・エクゼクティブを務めているが、それ以前にはIBMグローバル・ビジネス・サービス事業担当の上級副社長を務め、プライスウォーターハウスクーパーズ・コンサルティングとの統合に手腕を発揮。10万人以上のビジネスコンサルタントとサービスの専門家から構成するグローバルチームを確立した。さらに、米国におけるIBMグローバル・サービス事業、IBMグローバル・インシュアランス&ファイナンシャル・サービス部門のゼネラル・マネージャーなどを歴任している。
冒頭の富士通幹部は「金融、サービスを知り尽くしているのは、まさにIBMの中核部門に携わってきたことの証明。これまでのIBMのビジネスを継承し、加速することになるたろう」と語る。「怖い存在」という意味もここにありそうだ。