「全米7位の新聞系ウェブサイトのStar Tribuneだが、滞在時間では全米1位だ」
米Limelight Networksの最高マーケティング責任者(CMO)、Kirby Wadsworth氏は話す。ウェブコンテンツのインターネット経由での配信に最適化したネットワークであるCDN(Contents Delivery Network)の提供で知られ、世界に1450社の顧客を持つLimelightだが、最近になり少し異なる戦略を打ち出している。
ビデオなどのリッチなものを含めたデジタルコンテンツを管理し、「だれが、いつ、どの端末でコンテンツを閲覧したか」などを把握して、営業やマーケティングに生かせるようにする取り組みに注力しているのだ。
米Limelight NetworksのCMO、Kirby Wadsworth氏
これにより、顧客となる企業がデジタルプレゼンス--いわば「オンライン上の存在感」--を高められるようにすることを支援する。Limelightはデジタルプレゼンスマネジメントを「企業がコンテンツを制作、管理、配信および最適化し、ウェブ、モバイル、ソーシャル、大画面のスマートテレビやデジタルサイネージなどを通じて、顧客との関係を構築できるようにすること」と定義する。
コーポレートウェブサイトやサービス紹介ビデオなど、自社の持つデジタルコンテンツを効率的に管理し、閲覧してもらい、ブランド向上や売上拡大につなげるための取り組みだ。
具体的には、デジタルプレゼンスマネジメントを実現するための総合スイート製品として「Limelight Orchestrate」シリーズを展開。ウェブコンテンツ管理、ビデオなどのコンテンツ配信、解析などをSaaS形式で利用できるサービスを提供する。6月6日には「Orchestrate V2.0」を発表した。
差別化の武器はやはりCDN
アジア太平洋と日本地域を担当するAndrew Clark氏。日本でのビジネスに注力することを強調した
こうした取り組みは、ビジネスを遂行するに当たって蓄積されるデータを解析し、マーケティングなどに活用しようとする最近のエンタープライズITのトレンドに沿ったと見ることもできる。そのWadsworth氏はそれについては認めた上で「われわれにはネットワークという強い差別化のための武器がある」と強調する。
LimelightのCDNを導入している国内の企業には、ウェブサイト高速化のために導入したトヨタ自動車、日本マイクロソフト、日産自動車、共同通信社、オンデマンドでの動画配信に利用するテレビ東京やソニー・ピクチャーズ エンタテインメント、コンテンツ配信で活用している任天堂、グリーなど各業界の大手の名前が挙がる。
同社は、ウェブを高速化する利点について、いくつかの事例を使って説明する。例えば、米Amazonではサイトの読み込み時間を100ミリ秒縮めるごとに売り上げが1%増えるという。Yahooはページ読み込み時間を400ミリ秒縮めるごとにトラフィックが9%増えると説明。CDNをメインビジネスにしている自社の強みを数値で裏付ける。
いずれにしても、画像や動画をはじめウェブ上のコンテンツが今後大幅に増えていくことは間違いなく、インフラ部分のCDNを基盤にしながら、デジタルプレゼンスマネジメントという言葉を前面に押し出し、データ解析などのアプリケーションレイヤのサービスを提供する戦略は的を射ているように見える。
一方で、AkamaiやLevel3といった競合との競争も激化しているといわれる。5月末には米国でLimelightにM&Aに関するうわさ話が上がるなど、いろいろな意味で動きのありそうな分野とも言えそうだ。