本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉をいくつか取り上げ、その意味や背景などを解説している。今回は、デルの町田栄作 執行役員と、SAPジャパンの堀田徹哉バイスプレジデントの発言を紹介する。
デルの町田栄作 執行役員
「今回の新製品はDellの転換点を象徴するものである」(デル 町田栄作 執行役員
デルが7月2日、垂直統合型のアプライアンス製品「Dell Active Infrastructure」を発表した。同社執行役員でエンタープライズ・ソリューションズ統括本部長を務める町田氏の冒頭の発言は、その発表会見で、まさしく今回の新製品が同社にとって重要な位置付けであることを表したものである。
Dell Active Infrastructureは、統合管理ソフトウェア「Active System Manager」、および同ソフトとサーバ、ストレージ、ネットワーク機器をあらかじめ組み込んだ統合システム「Active System」、そしてITサービスの実装を行う「Active Solutions」で構成される。
これにより、従来に比べて6倍速く新たな仮想化インフラを実装できるなどITサービスのデプロイを加速し、データセンターの効率化やITサービスの品質向上を図ることができるとしている。
用途としては、規模を問わずプライベートクラウド構築のソリューションとして利用できるほか、データセンター事業者やシステムインテグレータ向けのホスティングパッケージとしても活用できるという。
町田氏によると、Dell Active Infrastructureの最大の注目点は、新たなITデプロイメントモデルを追求していることにある。従来、ITデプロイメントモデルには、スケールアップとスケールアウトがあるが、スケールアップはベンダーロックインになってしまい、TCOが下がらない。一方のスケールアウトもサイロになりがちで運用管理が煩雑になるという課題があり、どちらの手法にも一長一短がある。
そこでDellが採用したのが、「アクティブスケール」と呼ぶ新たな手法だ。これによって、スケールアップやスケールアウトの長所を取り入れたようなスケーラブルかつオープンで標準化・自動化された環境を提供できるようになるとしている。さらに、Dell Active Infrastructureには他社のハードウェアをサポートする仕掛けも施されており、ヘテロジニアスな環境でも対応できるという。
では、なぜDell Active InfrastructureがDellの転換点を象徴するものなのか。町田氏によると、「Dellは今年で創業29年目、来年は30周年で、企業として大きな節目を迎える。株式非上場化もその節目に向けた動きと捉えることができる。ビジネスとしても長らくPCが中心だったが、現在ではIT基盤を構成するほとんどの製品やサービスを提供している。その流れで今後、ITの自動化を進めていくための転換点になるのが、今回の新製品だ」という。