松岡功の「今週の明言」

SaaSへのAI組み込みの速さを強調する日本オラクル社長の思いとは

松岡功

2025-02-21 10:30

 本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。

 今回は、日本オラクル 取締役 執行役 社長の三澤智光氏と、伊藤忠テクノソリューションズ 代表取締役社長の新宮達史氏の「明言」を紹介する。

「オラクルは圧倒的なスピード感をもってSaaSにAIを組み込んでいく」
(日本オラクル 取締役 執行役 社長の三澤智光氏)

日本オラクル 取締役 執行役 社長の三澤智光氏
日本オラクル 取締役 執行役 社長の三澤智光氏

 日本オラクルの三澤氏は、同社が先頃開催した年次イベント「Oracle CloudWorld Tour Tokyo 2025」のオープニング基調講演で、同社がSaaSとして提供している各種業務アプリケーションへの生成AIおよびAIエージェントの組み込みについて上記のように述べた。特に「圧倒的なスピード感をもって」と強調したのが印象的だったので、明言として取り上げた。

 オープニング基調講演の内容については関連記事をご覧いただくとして、ここでは三澤氏の冒頭の発言に注目したい。

 同氏はSaaSおよびAIについて、「クラウドビジネスでお客さまの業務に一番近いところにいるのが、各種の業務向けのアプリケーションだ。お客さまとしてはこのSaaSが、水道のように蛇口をひねれば水が出てくるように、ブラウザーにログインすれば全ての業務を行えるという形であることを望んでおられる。そう考えると、SaaSというのはコンピュータシステムの完成形ではないかと考えている。そのSaaSに当社は圧倒的なスピード感をもって生成AIやAIエージェントなどのAIを組み込んでいくことで、お客さまの業務の変革を強力にご支援していきたい」と語った。

 冒頭の発言はこのコメントから抜粋したものである。ちなみに、2024年後半から注目度が一気に高まっているAIエージェントについても、米国本社(Oracle)は同年9月に業務アプリケーション群「Oracle Fusion Cloud Applications Suite」内で利用できる50以上の用途別のプロダクトをいち早く発表している。

Oracleが提供する50以上の用途別AIエージェント一覧(出典:「Oracle CloudWorld Tour Tokyo 2025」のオープニング基調講演)
Oracleが提供する50以上の用途別AIエージェント一覧(出典:「Oracle CloudWorld Tour Tokyo 2025」のオープニング基調講演)

 だが、とりわけAIエージェントをSaaSへ組み込んでサービス提供する取り組みは、当然ながら競合他社も注力している。そうした動きも踏まえて、オープニング基調講演後に行われた講演内容についての記者会見の質疑応答で、改めてAIエージェントに対する同社の取り組みについて聞いてみた。すると、三澤氏は次のように答えた。

オープニング基調講演後の記者会見。左から、三澤氏、Oracle グローバルCIO(最高情報責任者)エグゼクティブバイスプレジデントのJae Evans(ジェイ・エバンス)氏、日本オラクル 専務執行役員 クラウド事業統括の竹爪慎治氏
オープニング基調講演後の記者会見。左から、三澤氏、Oracle グローバルCIO(最高情報責任者)エグゼクティブバイスプレジデントのJae Evans(ジェイ・エバンス)氏、日本オラクル 専務執行役員 クラウド事業統括の竹爪慎治氏

 「ほかのSaaSベンダーもAIエージェントを発表しているようだが、現時点で本当にお客さまが使えるプロダクトになっているのか。その点、当社のAIエージェントは既にプロダクトとしてSaaSの中でお客さまにご利用いただける形になっている。さらに強調しておきたいのは、AIエージェントの活用に不可欠なデータがきちんと整備されており、そのデータの流れに基づいた業務プロセスがしっかりと可視化できるようになっているか。それができていることで、そのプロセスにエージェントを組み込んでいけるわけだが、そうしたポイントがきちんとクリアできているどうかが非常に重要だ。その点で当社は全ての要件を満たしているという自負がある。だからこそ、圧倒的なスピード感をもってSaaSにAIを組み込んでいくと申し上げた。その上で、お客さまにはAIを意識することなく『蛇口をひねれば水が出てくるように』スイッチを入れればAIが組み込まれた業務アプリケーションを使っていただけるような利用環境を提供していきたい」

 どうやら三澤氏は、AIを難しく受け取られないようにするためにも「水道」を例えに使っているようで、今はこの点を最も訴えたいようだ。ただ、AIエージェントは今後、複数ベンダーのものが企業の業務全体に拡散していく中で、それらをどう連携し協調させていくかが大きな課題になる。これに対し、Oracleがどんなソリューションを用意するのかも注目していきたい。

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