「生産性の低かった旧システムから、5カ月でkintoneを使った新しいシステムに移行した」--。5月26日に開催されたサイボウズ主催の「kintone hive Vol.3」において、ANA成田エアポートサービス AMC生産管理部の長谷川純子氏が講演した。
ANA成田エアポートサービス AMC生産管理部 長谷川純子氏
同社は、航空機誘導や貨物手荷物の搭降載業務といったグランドハンドリング事業の請求業務のシステムにkintoneを活用した。kintoneはノンプラミングで業務アプリケーションを作成できるサイボウズのクラウドサービスだ。システムの構築は、ANA成田エアポートサービスと内田洋行が共同で手掛けた。
新システムは、旧生産管理システム「NTON」をリプレースする形で導入した。NTONは 10年ほど使った自社開発システムで、請求帳票作成、実績管理、勤務管理、生産管理など20個ほどの機能があったという。
長谷川氏は「NTONからデータを取得するのが非常に大変だったり、データが誤っていた場合に、データを入力した現場ではなく生産管理部が修正を担当しなくてはならないなど、使い勝手に問題があった」と振り返る。システムの維持費が高かったことに加え、データ入力に時間がかかることによる残業代など、多くのコストがかかっていたという。
そのNTONの保守切れのタイミングが2015年9月末であることを、長谷川氏が知ったのは同年4月。「更新時期が近いから、そのまま更新しようという流れだったが、コストや使い勝手などの面から違うシステムに切り替えたいと考えて提案した」(長谷川氏)
ANAグループのシステム会社と相談したところ、スクラッチ開発、パッケージのカスタマイズ、kintoneの活用の3つの提案があったという。その結果、「納期、保守費用、コストのすべての条件を満たしているのがkintoneだった。汎用性も魅力で、請求業務のシステム化が終わったあとに、他の部門にも展開できると想像できた」(長谷川氏)
kintoneの採用を決めたのは2015年6月。NTONが9月末で保守切れになるため、「10月には新システムの運用を始めることが決まっており、NTONの引き継ぎができる最低限の機能を開発することにした」(長谷川氏)。システムを使うユーザー200人の教育を考えると、9月には完成させる必要があったため、システムの完成までにかけられる期間は、検討を始めた4月から9月までの5カ月間しかなかった。
新システムに必要な機能を調べたところ、NTONの20機能のうち、5機能のみでいいことが分かったという。グループ全社で利用する勤務管理システムが別にあるなど、既に利用していないNTONの機能が多くあったためだ。
現場や経営者を説得し、7月にシステムの開発を開始。2カ月間かけて開発し、9月には完成した。10月からの本番環境での運用開始にも無事間に合った。
新システムを導入した結果、ランニングコストを85%削減できたという。システムの運用に関する工数や更新のための業務量も2割減った。長谷川氏は「今後は、自社システム内にあるANA便のダイヤ情報と、他社のダイヤ情報をkintone上で統合して管理するシステムを作りたい」と語った。