事業分野を絞り、俊敏に動くことを目的に1年前に分社化したHewlett Packard Enterprise(HPE)。11月末に英ロンドンで開催した「HPE Discover London 2016」ではハイブリッドコンピューティングとインテリジェントエッジの2つに絞ってビジョンと製品戦略を披露した。最高経営責任者(CEO)のMeg Whitman氏に続き、事例を交えてHPEのエッジコンピューティングを紹介したの基調講演の様子を紹介する。
インテリジェントエッジがもたらすのは、1)ワークプレース(職場)体験、2)ブランド体験、3)オペレーションの効率化/ITとOTの融合、の3つだ。製品分野としては、1)と2)が、2015年に買収したArubaブランドのネットワークソリューション、3)はエッジゲートウェイ「Edgeline」となる。
2)のブランド体験は、小売りや施設が顧客と深い関係を構築し、収益アップにつなげるというもの。ここでは顧客として英国のプリマス病院NHSトラストでITインフラトップを務めるRob Harder氏が登場した。同病院は、患者数200万人、900人の入院が可能な大規模な施設だ。
部門は細かく200に分かれており、入り口は9つある。HP時代からHPのネットワークと買収前のArubaのソリューションを別々に導入していたこともあり、デジタルトランスフォーメーションを考えるにあたってネットワーク部分ではHPEと組むことにした。
まずは医師、看護士が血液やX線などの検査のリクエスト、結果の受け取り、共有を同一のシステムでできるようにした。また、資産にWi-Fiタグをつける追跡システムも導入した。急患部門が患者を運ぶ搬送具が常時不足していることから始めたもので、追跡したところ搬送具がある部門に集中していたことがわかったという。設備投資を効率化できるだけでなく、緊急時に看護士が搬送具を探すこともなくなった。
現在進めているのは、ペーパーレスへの移行だ。医療カルテは紙ベースだが、これをデジタル化して保存し、治療の現場でアクセスして利用できるようにする。合わせて、患者や訪問者向けの体験も改善する。例えば、施設に入るとその人を識別し、正しい時間に正しい場所に行くように案内したり、最寄りの出口を知らせるなどのことをデジタル面で支援するという。
同病院では職員以外に2500人の患者や訪問者がゲストWi-Fiを使っているという。これらのことを可能にするには、「事実上、固定されたコンピューターネットワークからモバイルコンピューターネットワークへの移行が必要」とHarder氏、Arubaの堅牢なネットワーク技術に期待を寄せた。

プリマス病院のITイフラを担当するRob Harder氏
9カ月でネットワーク刷新--リオデジャネイロ国際空港
もう1つの例が、ブラジル・リオデジャネイロ国際空港(アントニオ・カルロス・ジョビン国際空港)だ。Arubaの技術を採用し、今年の夏を沸かせた五輪に向けて古くなっていたネットワーク設備をわずか9カ月で刷新したという。
「年間8000万人が利用するブラジルで第2の国際空港で、毎日の利用者は4万5000人。これに加えて1万7000人の職員がいる。高密度のWi-Fiが必要だ」と最高情報責任者(CIO)Alexandre Villeroy氏はモダン化のニーズを説明する。ネットワークの刷新とともに、アプリも構築した。インドアロケーションサービスにより、着陸したばかりの利用者も、旅立つ利用者も、施設に入るとすぐに何がどこにあるのかわかるようにしているという。
もちろんアプリを通じたデータの収集から得られる洞察にも期待している。どのショップからどのショップに移動するのかなどの流れが分かるようになれば、プレミアムエリアを設ける、あるショップに行った顧客をターゲットにしたプロモーションを展開するなどの発展が考えられる。
小売りは同空港の売り上げの5割近くを占めており、「滑走路のついたショッピングモール」とVileroy氏、空港職員向けの堅牢なネットワークとショッピングモール並みのサービスの両方をArubaのソリューションが支えている。