DeNAのKaggle日記

第2回:「Kaggle」の面白さとは--食品宅配サービスの購買予測コンペで考える - (page 3)

小野寺和樹 (ディー・エヌ・エー)

2018-08-29 06:50

Kaggleの楽しさ

 月並みですが、リーダーボード(ランキング表)の上位に入るのは達成感があります。それは仕事で得られるものとは全く別物です。仕事ではデータ分析以外のことも考えなければいけませんが、Kaggleでは自分のアイデアを自由に試せます。それで上位に食い込めたのであれば、自分の創造性が世界に認められたようなものであり、これほどうれしいことはありません。

 また、私は自分が賢いと思っている人に一泡吹かせるのが好きです。それも、Kaggleが楽しい理由の一つだと思います。「自分はドメイン知識があるんだエッヘン」みたいな人に勝てると非常に気持ちがいいのです。私には数学や機械学習、プログラミングのようなバックグラウンドがあるわけではないのですが、努力をすれば各分野の専門家にも勝つことができる。Kaggleはそうしたカタルシスを得られる場所だと思っています。

 Instacartのコンペでは、長い間1位をキープしていたのですが、不思議なことにその期間は全然楽しくなかったのです。おそらくこれは、競争して自己研さんできる環境をKaggleに求めているからで、トップになるとそれができなくなってしまうからだと考えます。そのため、皆が自分に追い付けるようにDiscussionへヒントを投稿したり、発破をかけたりすることで競争する環境をあえて作りました。

Kaggleの辛さ

 コンペに参加していると、ある段階で何をしてもうまくいかない時期が来ます。でもそれはそれで楽しいのです。まだ1位になれないということは、自分にはまだ見つけられていない何かがあるということ。つまり、まだまだ学ぶべきことが多くあり、謙虚な気持ちになれます。Kaggleはそういう謙虚な気持ちにさせてくれる場所でもあります。

 またコンペ中、何も進展がないと投げ出したくなりますが、これに耐え抜くとまた何かを学べるような気がします。たとえ不本意な成績に終わってもです。そのときに辛い思いをしたからこそ、上位の解法を見たときの衝撃、感動、内省が何倍にもなると思います。

 今後もKaggleへの挑戦を続け、DeNAや日本、世界を代表するKagglerとして活躍したいのです。Kaggleは日本ではまだ参加者が少ないのですが、データサイエンティストとして成長するのにとても適した環境です。参加をためらっている人はぜひ一歩を踏み出してみてください。

小野寺和樹
小野寺和樹
ディー・エヌ・エー システム本部 AIシステム部
Kaggle Master。大学卒業後、銀行系基幹システムの開発に従事。その後、金融コンサルタントとして、金融機関における審査モデルの構築に携わりつつ、2015年にACM/KDD 主催のデータマイニングコンテスト「KDD Cup 2015」で準優勝。2017年には、Kaggleの「Instacart Market Basket Analysis」で準優勝。現在はDeNAで各種サービスの機械学習活用に向けた開発を行っている。Kaggle世界最高ランク41位。

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