ダイキン工業が取り組むDX人材の育成方法とは--2023年に約1500人のAI人材を育成へ

阿久津良和

2021-09-30 07:00

 日本ディープラーニング協会(JDLA)は9月16日、「ダイキンに学ぶ、DX(デジタルトランスフォーメーション)のための社内人材育成」をオンラインで開催した。DX推進時に課題となるデジタル人材の育成・確保を目指す組織・企業向け人材育成セミナーで、第1回は2017年12月にダイキン情報技術大学を設立したダイキン工業の担当者が講演した。今回はその様子をレポートする。

 JDLAの理事で事務局長の岡田隆太朗氏は冒頭、「デジタルを扱う人材のリテラシー(活用能力)が重要」との理由から、2021年4月20日にデータサイエンティスト協会や情報処理推進機構(IPA)とともに、「デジタルリテラシー協議会」を設立したことを紹介。同協議会は2021年10月10、11日に迎える「2021年デジタルの日」に合わせてイベントを開催する予定だ。

JDLA理事/事務局長 岡田隆太朗氏
JDLA理事/事務局長 岡田隆太朗氏

 ダイキン情報技術大学は、ダイキン工業の従業員を対象に2018年からAI(人工知能)人材の育成を目指している。その事務局として各講座の企画・運営に従事するダイキン工業 テクノロジー・イノベーションセンター データ活用推進グループ主任技師 下津直武氏は、同大学の設立理由として「テーマ実行力・分析力・(アルゴリズムを現場へ適応する)データエンジニアリング力。3つの基礎的なスキルを兼ね備えた人材」の育成を実現するためだと述べた。現段階では2023年に約1500人のAI人材の育成を目指している。

ダイキン工業 テクノロジー・イノベーションセンター データ活用推進グループ主任技師 下津直武氏
ダイキン工業 テクノロジー・イノベーションセンター データ活用推進グループ主任技師 下津直武氏

 同大学には、多様な教育課程が用意されている。例えば、AI演習講座では、協力体制にある大阪大学の講義内容と並行してPythonによる画像処理演習を実施。半日から数日をかけてAI実装と発表会を行い、知見の共有を目指す。他にもデータの可視化や時系列予測、自然言語処理、最適化といった講義も合わせて実施する。競技形式を採用しており、下津氏はその理由を「クライアントの要望に応えるため(のビジネス演習)。やはりコミュニケーションが大事」とAI人材が現場に出向いた際の訓練を重ねることが重要であると述べた。

 ダイキン情報技術大学では、IPAの「基本情報処理技術者」と統計質保証推進協会の「統計検定2級」を基礎スキルとしている。コース別の応用スキルとして、データ分析班は「JDLA E資格」、システム班は「AWS(Amazon Web Services)認定ソリューションアーキテクト-アソシエイト」の合格を習熟度の指針としている。

ダイキン情報技術大学における新入社員講座1年目の講義内容
ダイキン情報技術大学における新入社員講座1年目の講義内容

 モデレーターの岡田氏が改めて、ダイキン情報技術大学の設立理由を尋ねると、下津氏はダイキン工業 取締役会長 兼 グローバルグループ代表執行役員 井上礼之氏の「100人を2年間勉強させろ」という発言が発端になったと説明した。

 企業のDX推進はトップダウンが鍵を握ることが多いが、同社も同様だった。100人という数字も集合知の成立を目指していたという。また、受講するのは経営層向け人材に限らず、「製造現場の作業員も受講する。われわれはホログラム技術にも取り組んでいるが、工業高等専門学校出身の技能職もITスキルが必要。ただ、優秀な人材は幹部候補として選抜教育する機会を設けている」(下津氏)

 同大学設立の前後で社内文化の変化を問われると、「ソフトウェアファーストになりつつある」(下津氏)と述べ、大きく空気が変化していることを率直に語った。取り組みの成果について問われると、「まだまだこれから。短期間で成果が出るものではなく、将来に対する種まき」(同氏)だと述べつつも、状況が許せば人材育成システムをグローバルに展開したいという。

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