MetaのチーフAIサイエンティストであるYann LeCun氏によれば、深層学習時代の人工知能(AI)が持っている力が、IT分野の企業による研究開発の復活に繋がったという。
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LeCun氏は1月、報道関係者や企業の経営者がZoomを使って参加する小規模な会議で講演を行い、同氏らが取り組んできた技術は、これまでの時代のAIよりも「経済的にはるかに大きな影響を与えており、その影響範囲もはるかに広い」と語った。
「その結果、AIに多くの研究資金が集まり、IT業界の研究活動が復活した」と同氏は言う。
同氏によれば、ほんの20年前までは、ITの分野でそれなりの評価を得ていた企業の研究所はMicrosoft Researchだけだった。しかし2010年代には、「Google Researchが本格的に注目を集めるようになったほか、私が設立したFAIR(Facebook AI Research)をはじめとして2、3の研究所が立ち上がり、企業にも基礎研究は可能だという考え方が復活した」という。
企業の研究開発が再生したのは、「それらの技術が将来に及ぼす影響や、現在及んでいる影響に対しての期待が大きいからだ」と同氏は話した。
応用AIの価値の高さが、デュアルトラックシステムを可能にしている。デュアルトラックとは、長期的なムーンショットプロジェクトを継続的に進めながら、別のトラックでその研究の成果を実用的な製品に応用していく研究開発の進め方だ。
「Metaのような企業が、目指すべき究極の目標として、人間と同じレベルの知性を持つインテリジェントなバーチャルアシスタントを作るという長期的かつ野心的な目標を掲げる研究所を持ち、同時にその過程で開発された技術も利用していくのは、非常に合理的だ」とLeCun氏は言う。
LeCun氏は、OpenAIの「ChatGPT」をはじめとする多くのプログラムの基盤となった、2017年に公開されたGoogleの自然言語処理プログラムである「Transformer」に言及しながら、「例えば、多言語でのコンテンツのモデレーションや音声認識に関しては、自己教師ありの方式であらかじめトレーニングされた大規模なTransformerモデルによって、この数年で大きな革命が起きた」と例を挙げた。
「それは遠大な進歩であり、信じられないほどの進歩だったが、それは最新のAI研究によるものだ」
LeCun氏は、「B2Bセールスを最適化するために設計されたAIプラットフォーム」 を標榜するCollective[i]がオンラインで開催している対話的ディスカッションシリーズである「Collective[i] Forecast」に、講師として招待された。
この記事の内容は、米ZDNetがLeCun氏に尋ねた、IT業界や商業界のAIに対する関心の高まりが、AIの基礎研究に与えている影響についての質問への回答に基づいている。