Acronisの日本法人アクロニス・ジャパンは、マネージドサービスプロバイダー(MSP)向けのサイバーセキュリティソリューションプラットフォーム「Acronis Cyber Protect Cloud Platform」に「Acronis XDR」を追加すると発表した。
2023年5月に発表された「Acronis EDR」を拡張し、Endpoint Detection and Response(EDR)ではPCなどの単一のエンドポイントのみを対象としていたのに対し、今回発表のAcronis XDRでは、複数のデータソースからの情報を統合してより高度な対応を行うことが可能になる。なお、今回の発表はグローバルに先駆けてまず日本で行われており、Acronisの日本市場重視の姿勢をうかがわせた。
アクロニス・ジャパン 代表取締役社長の川崎哲郎氏
国内での事業概要を紹介した代表取締役社長の川崎哲郎氏は「日本はアクロニスにとって重要な市場」だと改めて強調した上で、2023年度の実績として「対法人(B2B)ビジネスで前年度比64%増」「『Acronis Cyber Protect Cloud』の実利用ユーザー企業数が1万社を超えた」という成果を紹介し、2024年度の予測として「42%クラウドビジネス成長」「2.4倍のセキュリティ製品成長」という目標を示した。
川崎氏は同社がパートナー中心のビジネスモデルであることを踏まえ、「日本市場を非常に重要な市場と捉え、パートナー支援に関しても手厚い投資を行っている」ことも強調。MSP向けに提供されるプラットフォームのAcronis Cyber Protect Cloudについても「サイバーセキュリティやバックアップ/リカバリーやマネジメントといった全ての機能をネイティブに統合し、マネージドサービスを展開されるパートナー企業の効率を向上させることを目指したプラットフォーム」と説明した。
Acronis プロダクトマネジメント担当SVP Yury Averkiev氏
続いて、Acronis プロダクトマネジメント担当SVPの Yury Averkiev(ユーリ・アベルキエフ)氏がAcronis Cyber Protect CloudとAcronis XDRについて説明した。アベルキエフ氏はまずこれまでの経緯を振り返り、2017年の「Active Protection」の追加から年を追うごとに多数の機能追加を行い、2024年もさまざまな機能追加が予定されていると明かした上で、製品設計上の原則として「ネイティブな統合」「高い効率性」「MSPおよびIT部門向けに構築」の3点を挙げ、主なユーザーとして想定しているMSPやIT部門の運用担当者の運用効率を向上させることを強く意識していると強調した。
現在のAcronis Cyber Protect Cloudでは、バックアップ、セキュリティ、ディザスターリカバリー、マネジメント、オートメーションの大きく5種類の機能を統合しているが、これらはネイティブで密接に統合されており、それぞれ相互に情報をやりとりすることで高い運用効率を維持するよう配慮しているという。
アベルキエフ氏はEDRとExtended Detection and Response(XDR)の違いについて、「EDRはPC1台だけを対象とするが、XDRは対象ソースを拡張し、データの相関分析、真相理解と洞察を深めることで、侵害の検出、封じ込め、復旧から防止までの対応を効果的に行う」と説明。さらに、EDR/Managed Detection and Response(MDR)を自社で運用することが困難なユーザーには、マネージドサービスとしての提供もあることを紹介した。
Acronis XDRの提供開始時期は、6月を予定している。初回バージョンでは、「Entra ID」「Microsoft 365」「Acronis E-mail Security」「Endpoint」の4つのソースからの情報を統合して可視化する。情報ソースが4つというのは単独製品として提供されるAcronis XDRと比較すると少なく感じられるが、既存のさまざまな機能と密接に統合されており、特にバックアップ/リストアとの連携はほかのEDR/XDR製品にはないユニークな特徴であり、近年猛威を振るっているランサムウェアへの対策として、迅速な回復を実現するソリューションとして有効だと考えられる。