NECは、コネクティッドカーやドローンなどの移動体向けに、安定した通信が可能な接続先を予測する高精度QoE(Quality of Experience)予測技術を開発した。
この技術は、マルチモーダルAI技術を活用し、モバイルネットワークの通信情報と移動体の映像情報から得られるデータを解析する。移動体のアプリケーション品質を高品質に維持できるネットワークまたは基地局を高精度に予測することで、効率的なネットワーク選択、基地局のセル選択、運転支援を可能にする。
開発した技術の活用イメージ
従来、移動体の映像や通信の品質は、移動に伴い変動するため、国際電気通信連合(ITU)が検討する車両遠隔監視、制御シナリオのQoE評価は、実際のQoEよりも高く評価されることがあった。
そこで同技術は、映像と通信品質の時間変動量がQoEに与える影響をスコア化し、ToD QoE(Tele-operated Driving QoE)を再計算することで、移動体に最適な評価基準を設定し、高精度なQoE予測を実現する。
また、走行環境や天候などによる無線通信品質の変化に対応するため、映像認識AIと大規模言語モデル(LLM)を組み合わせ、ドライブレコーダーなどの映像から走行環境や移動状況、運転特性を理解する技術を導入している。映像認識AIで環境を分析し、LLMで総合的に文脈を理解することで、将来起こり得る状況を判断し、最適な基地局を提案する。
さらに、アプリケーションごとに異なるデータ通信特性とQoE予測結果から、QoEを満たせないセルを特定し、RAN(無線アクセスネットワーク)に情報を提供することで、通信途中の不要なハンドオーバーを抑制する。
NECは、2024年度内に同技術の実証実験を行い、2025年度内の実用化を目指す。また、映像認識AIとLLMを組み合わせたAI技術を応用し、運転操作の滑らかさを基準とした運転支援ソリューションも提供予定だ。