
ASUS インフラストラクチャ・ソリューションBG シニア・バイスプレジデント 兼 共同責任者
Paul Ju氏
AIインフラ構築に潜む、見えないリスク
生成AIの活用が本格化するにつれ、クラウドだけでは賄いきれないコストや制御性の課題から、自前のAIデータセンターを構えたいと考える企業が急増している。しかし、いざ自前のAI基盤を構築しようとすると、従来のITインフラとは次元の異なる難しさに直面する。ASUS インフラストラクチャ・ソリューションBG シニア・バイスプレジデント 兼 共同責任者のPaul Ju氏はAIインフラ構築における課題について次のように話す。
「サーバーを1台動かすときと、大量に束ねて同時稼働させるときでは、まったく別の問題が生じます。大量のGPUが高負荷で動き続けると、消費電力や発熱量が従来のデータセンターの想定をはるかに超えてしまうことがあるのです」(Paul Ju氏)
特に注意が必要なのは2つの問題だという。
1つ目は「冷却システムのトラブル」だ。液体冷却の配管からわずかでも水漏れが起きると、ラック内のサーバー全体に影響が及ぶ可能性がある。
2つ目は「通信品質の劣化」。高温・高負荷の環境下ではサーバーやGPU間を高速でつなぐインターコネクト通信(NVIDIA NVLinkなど)に信号の遅延や誤動作が生じることがある。どちらも小規模な検証環境では気づきにくく、実際に大規模に稼働させて初めて顕在化する問題だ。
「だからこそASUSは、システムを顧客のもとに届ける前に、実際のデータセンター環境を再現したラボの中でこれらの問題を徹底的に洗い出します。顧客が安心してAIサービスの稼働に集中できるよう、あらゆるリスクを事前に取り除くことがASUSの役割です」(Paul Ju氏)
なぜASUSが「AIパートナー」を名乗れるのか
ノートPCやマザーボードのメーカーとして知られるASUSだが、同社のインフラストラクチャ部門では、長年にわたりAIサーバーの設計・開発・提供を手がけてきた実績がある。
競合他社との違いについてPaul Ju氏はこう話す。
「ASUSでは台湾・桃園に独自の検証施設『ASUS AI Lab』を構えていますが、その最大の特徴は製造拠点との距離にあります。多くのメーカーでは、R&D(研究開発)は本社、検証は別のラボ、量産は工場と分散しており、問題確認だけで数週間を費やすケースも珍しくありません。ですが、ASUSでは、ラボから製造ラインまで徒歩数分の距離にあるため、問題の発見から原因特定・工程修正までの一連の対応を数時間単位にまで短縮できます」(Paul Ju氏)
さらに、ハードウェアからソフトウェアまでの全領域における開発を自社内で賄っていることも強みだ。ハードウェアの設計からファームウェア、運用管理ソフトウェア、検証まで自社で完結するため、修正が必要な際もサードパーティの対応を待つ必要がない。この開発スピードは、AIチップの供給がひっ迫し、すべての企業が時間を競い合う現在の市場環境において大きな競争優位性と言えよう。
その信頼性の証左として挙げられるのが、台湾国家高速ネットワーク・計算センター(NCHC)との長期パートナーシップだ。ASUSは2011年からNCHCのインフラパートナーとして、歴代の国家スーパーコンピューターシステムの構築を支援してきた。スーパーコンピューター「Formosa 4」の構築を皮切りに、最新の「Nano 4」(NVIDIA HGX H200およびNVIDIA GB200 NVL72搭載)まで、歴代システムの構築を一貫して支援してきた。技術世代が変わるたびに選ばれ続けてきたこの実績が、ASUSが「AIパートナー」として信頼される理由になっている。
その技術的基盤を支えているのが、ASUSとNVIDIAの緊密な技術的連携である。ASUSのAIインフラストラクチャは「NVIDIA AI Infrastructure」をベースに構築されており、次世代AIが求める高密度、高拡張性、そして安全性を備えたデータセンター環境を実現するため最先端のGPU、高速ネットワーク、効率的な冷却システム、エンタープライズ向けソフトウェアを1つのシステムとして統合した。計算能力の面では、NVIDIA Blackwell Ultra GPU、Grace CPU、およびNVLinkが性能の基盤を提供する一方で、GB300 NVL72世代では1つのラックに72基のGPUを格納しており、大規模で複雑なAIモデルが必要とする圧倒的なスケールと効率性を実現している。
この卓越した計算性能を支えるため、ネットワーク層にも高度な技術が投入されている。NVLinkはノード内およびノード間で超高帯域かつ低レイテンシ(低遅延)のGPU間通信を実現し、ラック全体を大規模AIワークロード向けの単一の統合計算リソースとして機能させる。
さらに、NVIDIA Quantum InfiniBandが圧倒的なスループットと超低レイテンシを備えたエンドツーエンドのネットワークを追加し、高度なSuperNICを備えたNVIDIA Spectrum-X Ethernetが高速で拡張性の高い接続性を保証。そして、NVIDIA BlueFieldがリアルタイムの脅威検知を行い、安全なマルチテナント環境下でのデータアクセスを強化している。ハードウェアのみならずソフトウェア面も強固であり、NVIDIA AI Enterprise(NVIDIA NIMやNeMoを含む)をはじめ、Blueprints、Omniverse、NVIDIA Dynamo、Run:ai、Mission Controlが一体となり、開発からデプロイ(展開)、運用管理に至るまでをシームレスに網羅する包括的なAIソフトウェアスタックを構成している。
出荷前の完成度を担保する「ASUS AI Lab」
ASUS AI Labは、「RDラボ」「QTRラボ」「サーマルラボ」の3エリアで構成されている。個々の部品や単体サーバーのテストにとどまらず、実際のデータセンター環境を再現した状態でシステム全体を一括して検証することを基本方針としている。3つのエリアの特長は次の通りだ。
・RDラボ
実際のデータセンター環境を再現し、ソフトウェアの動作検証を担っている。製造拠点に隣接しているため、ASUSのエンジニアがリアルタイムで問題を特定し、製造ラインに直接フィードバックできる。

本番さながらのデータセンター環境でソフトウェアを検証
・QTRラボ
大型テストチャンバー内で-40℃〜85℃・湿度10〜98%という極限環境を再現し、出荷前にあらゆる問題を洗い出す。これにより、現場で予期せぬ障害が起きるリスクを大幅に低減できる。

過酷な温湿度条件下での製品の動作・信頼性の検証
・サーマルラボ
サーバーの排熱と冷却の流れをシミュレートし、空冷・液冷システムが顧客環境で正常に機能するかを事前に確認している。データセンターに合った最適な冷却設計を出荷前に検証できるのがポイントだ。

出荷前に、最適な冷却性能を検証
このようにASUS AI Labによって、消費電力・冷却状態・ネットワーク動作を事前に把握できるため、顧客は自社で計画中のデータセンター環境を“出荷前に再現”でき、構築方針を決める前の重要な判断材料を得られる。
「最終的にお届けするのは、あらゆる条件下での動作テストをクリアしたAIインフラです。お客様の現場に届く前の段階で、そのAIインフラの動作限界をすでに把握した状態で納入します。お客様が安心してAIサービスの稼働に集中できるよう、あらゆるリスクを事前に取り除くことがASUSの役割です」(Paul Ju氏)
ハード×ソフト×サービスの“成功の方程式”
ASUSが提供するのは、ハードウェアだけではない。「AIDC(ASUS Infrastructure Deployment Center)」と「ACC(ASUS Control Center)」というソフトウェアプラットフォームを一体で提供し、インフラ全体をカバーする体制を整えている。
AIDCはAIインフラの立ち上げを自動化するツールだ。これまで手作業で行っていたOSやネットワークのプロビジョニングをワンクリックで完了できるため、導入にかかる時間と手間を大幅に削減できる。
一方のACCは、をはじめとする企業のITインフラ全体を一画面で一元管理できるプラットフォームである。複数のツールに分散していた管理業務を集約することで、運用コストの削減やセキュリティ管理の強化、CO₂排出量の把握まで対応できる。
「AIインフラは導入して終わりではありません。確実に動かし続けるには、立ち上げから日常の運用管理まで、ソフトウェアによる一貫したサポートが不可欠です」(Paul Ju氏)
ASUSのサポートはソフトウェアだけにとどまらない。ASUSでは、専門家チームによる「ASUS Professional Services」も提供しており、戦略コンサルティングとソリューション設計→カスタマイズインフラの構築→パフォーマンスチューニング→AIサービス・プラットフォーム開発→ライフサイクル管理とメンテナンスの5フェーズで、AIインフラの導入から運用まで一貫して支援している。
「PoC(概念実証)がうまくいっても、本番環境で使えるAIインフラとして仕上げるまでには大きな壁があります。ASUSの専門チームが体系的に伴走サポートすることで、AIの本番稼働を確実に実現できます」(Paul Ju氏)
ASUSでは、ASUS AI Lab内で数千回に及ぶテストを繰り返し、そこで得られたノウハウを生かすことで、最適な構成を企業に提供している。このように複雑なAIインフラ構築を「すぐ使える成功の方程式」として企業に届けられるのは、こうした積み重ねの成果と言えよう。
NVIDIA DSXを採用したASUS AI Factoryのような取り組みを通じて、AIインフラ構築の開始前にその設計を「モデル化」することが、成功のための重要なステップとなりつつある。
その中核を担うのが、OpenUSDをベースとしたシミュレーションによるデジタルツインの活用です。高精度な仮想環境を構築することで、導入要件の可視化が可能になります。これによりIT運用担当者は、物理的な構築が始まる前に、準備状況を評価し、インフラ計画を最適化できるようになる。
このステップは、従来のインフラプロジェクトにおける計画方法の大きな転換点と言えます。今後のプロジェクトの成否は、「構築開始前にどれだけ完成形を解像度高く理解できているか」にかかっていると言っても過言ではない。

個社ニーズに合わせてAIインフラをカスタマイズして提供できるのがASUSの強み
ビジネス変革を支えるパートナーとして日本企業のAI活用を積極支援
ASUSはいま、日本市場への展開を積極的に進めている。エンドツーエンドのAIファクトリー機能を網羅した最新AIインフラソリューションの提供を拡大するとともに、NVIDIA Vera Rubin NVL72を搭載した100%液冷のラックスケールプラットフォーム「ASUS AI POD(XA VR721-E3)」の量産を2026年下半期に予定。さらに、AIインフラの設計・導入から大規模なトークン生成・推論・実業務への活用まで、AIライフサイクル全体を支える基盤を提供することで、日本企業のAI活用を支援していく構えだ。
なおこうした最新のAIインフラソリューションは、2026年6月17日に東京で開催された法人向けイベント「ASUS Summit 2026」でも紹介され、NVIDIA Rubin世代のHGX AIサーバーが日本国内で初公開された。

納入前の徹底したシステム全体の検証で、あらゆるリスクを排除
「AIのビジネス価値を短期間で引き出せるITインフラを構築することは容易ではありません。日本では、AIの取り組みがPoC段階で止まってしまう企業が多く、素早く価値を実感できるソリューションへの需要が高まっています。ASUSの最優先事項は、日本企業がPoCで終わらないよう支援し、AIをビジネス変革の真のエンジンへと昇華させることです。DXを推進する企業にとって、AIインフラは競争優位の核となる存在です。ASUSは、日本語サポート窓口、明確なSLA(Service Level Agreement)、そして日本企業の期待に応えるサービス品質を備え、お客様がAIインフラを迅速かつ効果的に活用できるよう、これからも共に歩み続けてまいります」(Paul Ju氏)

