「1998年から1年半ほど日本に住んでいたが、現在の日本は当時とほとんど変わっていないことに気付いた」
自動化などマーケティングソフトウェア大手の米HubSpotで最高経営責任者(CEO)で共同設立者のBrian Halligan氏は話す。「大きな企業は大きなまま、小さな企業は小さいまま」との意味だという。
米HubSpotで最高経営責任者(CEO)で共同設立者を務めるBrian Halligan氏
米国では、Fortune 500の採用銘柄がこの10年で41%入れ替わったことがそれを示していると指摘。参考として、日本の日経225の銘柄入れ替え数は、今年8月までの10年間で、合併や買収などによる企業名変更などを除くと、29社、全体の12.4%(ZDNet Japanによる集計値)にとどまっている。
HubSpotは、クラウド型のインバウンドマーケティング基盤として、電子メール、ウェブサイト、ランディングページ、SEOなど、さらにソーシャルメディアを含めたコンテンツまで単一プラットフォームで管理できるようにしている。
生活や仕事、買い物、買い方の変化にもかかわらず、企業のマーケティング活動は変化していないことに気付いたことから、2006年にHubSpotを創業した。当時Halligan氏はベンチャーキャピタルで活動していた折、マーケティング手法が根本的に変化することを確信していたという。
例えば、デジタルビデオレコーダの普及で、テレビ広告がブロックされることなどを背景に、テレビでのプロモーションが非効率になるとの考えに至った。
現在では、ブログ、Facebook、Twitter、Instagramといったソーシャルメディアが広く普及したことで、旧来型メディアにはない、誰もが参加する多対多のコミュニケーションが当たり前の状況になってきていると認識。YouTubeなどの動画を交えながら、「個人の好みに最適化したメディアを柔軟につくれるようになっている」と同氏は述べた。
HubSpotが日本市場に進出した理由についても同様の理由だとする。「日本ではテレビなど既存の効率の悪いメディアがいまだに存在感を持っている。自動化をはじめとしたマーケティングソフトウェアが潜在的に普及しやすい環境である」と認識している。
「マスにそのままアプローチすると2%かもしれない反応率が、“福岡にいる製造業”のようにセグメント化すれば15%にも高められる」(Halligan氏)
日本には既に、Eloquaを持つ日本オラクルやMarketo、セールスフォース・ドットコム、日本IBMなどソフトウェア大手を含め多くの企業がMA事業を展開しており、今後はさらに普及期を迎えると考えられる。
その中でHubSpotは「ポイントソリューションを複数購入するのではなく、オールインワンの製品を提供することにより、ITスタッフが少ない企業が少しのコストでマーケティングを最適化できるようにしていく」考えだ。
「大きな企業は大きなまま、小さな企業は小さなまま」という日本の市場競争環境に新たな風を吹き込み、小さい企業でもマーケティング施策を通じて市場を引っ張る力を持てるように支援するのがHubSpotの日本における狙いだ。