ZDNet JapanおよびTechRepublic Japan主催、AWS Partner Network協賛で、クラウドの中心的存在である「AWS(アマゾン ウェブ サービス)」をテーマにした5週連続セミナーが開催された。第2回は「IoT」をテーマに2017年7月6日に行われたが、ここでは基調講演とパネルディスカッション形式で行われた特別講演についてレポートする。IoTのさらなる可能性が、産官学研究プロジェクトやビジネスでの具体的な展開を紹介することによって示された。
基調講演:IoTを活用してスマートシティへと前進させる
慶應義塾大学
大学院 政策・メディア研究科 特任講師
米澤拓郎氏
基調講演には、慶應義塾大学 大学院 特任講師の米澤拓郎氏が登壇。「オープン・ソーシャル・ビッグデータによるスマートシティ実現へ向けて 〜藤沢市との取り組みのご紹介」と題して、海外のスマートシティの事例や、米澤氏が藤沢市とともに取り組むスマートシティの産官学研究プロジェクトを紹介した。
米澤氏はまず、スマートシティとは何かについて「AwarenessとResponsivenessの2つを備えることが特徴」と指摘した。Awarenessとは都市状況の理解や予測であり、Responsivenessとは都市機能の変化や行動変容促進のことだという。
また、産業という視点でとらえると、実空間からセンシングを行う「第一次都市情報産業」、加工して富を生み出す「第二次都市情報産業」、サービスとしてIoT的な情報を扱う「第三次都市情報産業」に分けられる。その意味では、都市データをどう取得するか、どう共有するか、どう活用するかという「取得」「流通」「分析」「活用」がスマートシティのテーマになる。
そのうえで、先進的な事例として8200ヵ所のパーキングスペースにセンサーを設置して空き状況を可視化しているサンフランシスコ市などの例を挙げた。
清掃車がゴミとともに情報を収集
日本での実践例が、米澤氏が勤務する慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)の知的未来都市創造ラボと藤沢市による共同での取り組みだ。
ユニークなのは、清掃車を活用した細粒度環境情報のセンシングだ。清掃車にセンサーを設置してゴミとともに情報を収集する。得られた環境情報や画像情報は、市役所の関連各課でリアルタイムに共有して、自治体業務の効率化や即時対応に生かしている。例えば、清掃車の位置把握や、路面標示の劣化の分析、発災時の被災状況の把握などだ。
また、オープンデータを市民が活用しやすくするために、APIがないWebページから情報を定期的に取得できるようにする Webブラウザー用のプラグインを開発。行政がWebで公開している気象データや人口動態などの情報をセンサーデータとして活用できるようにしている。
さらに、人のセンサー化にも取り組んでいる。職員がスマートフォンを持って情報を共有することで、収集されないゴミの把握や不法投棄の確認、落書きの確認等をしており、業務効率化に寄与する。また、取得したデータを人口統計や不動産情報、天候などと重ね合わせ分析することで、市内のゴミの発生パターン等を導く取り組みを行っている。
米澤氏は「スマートシティは大企業やリッチな自治体だけのものではありません。IoT、Web、市民・職員などのセンサーを活用すれば、多くのデータストリームを得ることができます。既存の都市資産を最大限に活用し、そのデータを共有することで、第二次都市情報産業、そして第三次都市情報産業へとつなげていこうとしています」と話した。