いつものブラウザが AI アシスタントになる「Gemini in Chrome」の効果
業種業界を問わず、多くの企業が生成 AI の活用を競争力強化の重要な要素と捉え、業務への適用を急いでいる。こうした生産性向上のニーズに応えるのが、Chrome ブラウザに深く統合された AI 機能「Gemini in Chrome」だ。タブの右上にある「Gemini に相談」 アイコンをクリックするだけで、今まさに閲覧している Web ページの文脈を理解した AI アシスタントとの対話が始まる。さらには、タブを横断し、さらに Gemini 同様 web 情報をも参照しつつコンテンツに応じた内容を返答する。いままでの AI の使い方とは違い、別サービスへわざわざ移動しコピー & ペーストしつつ状況を説明する必要がなくなる。

サイドパネルでのチャット画面を使うことで、今閲覧しているページに関してタブを遷移せずに会話できる
その活用シーンは幅広い。長文のレポートや技術文書を瞬時に要約させたり、専門的で複雑な情報をかみ砕いて解説させたり、ページの内容に関する質問にその場で答えさせたりと、他のタブで開いている Web ページ の内容との比較や照合など、日常的な業務に直結する支援を受けられる。
サイドパネルとして常に手元に置けてバックグラウンドで処理を継続するため、作業を中断することなくマルチタスクをこなせる点も大きい。さらに、複数のタブを横断して情報を比較・集約したり、Gmail や Google カレンダー、Google マップ、YouTube といったアプリとも連携可能だ。
例えば Gmail との連携であれば、閲覧中のページを離れることなく、サイドパネルから Gemini にメールの文案を作成してもらって下書き状態にし、内容を確認した後必要に応じて編集してワンクリックで送信まで完了できる。

Gmail などのほかの Google アプリと連携することにより、ブラウザのサイドパネルでメールを下書きし送信できる
加えて、ユーザーに代わってブラウザ上の操作を自律的に進める「Auto Browse」機能※ や、サイドパネル上で画像をその場で編集できる機能も発表されており、ブラウザは単なる「閲覧の道具」から「業務を代行するパートナー」へと進化しつつある。いつものブラウザがそのまま AI アシスタントになる。これが、これからの Web 業務の標準的な姿になっていくだろう。
※2026 年 7月時点では米国のみでの提供
「AI が見えづらいところで動作する」時代の新たなデータ漏えいリスク
AI はビジネス パーソンの多くが生産性の向上を実感する一方で、市場には多種多様な AI ツールが登場しており、多くの組織では IT 部門が把握しきれない未承認の AI ツールが使われているという実情もある。そのため AI への期待が高まるほど、セキュリティやガバナンスへの懸念を持つ企業も少なくない。
AI 活用が当たり前になった現在、リスクはより見えにくいところに潜むことになる。プロンプトへの何気ない入力、Web フォームへのコピー & ペーストなど、ブラウザ上の何気ない操作を通じて、重要なデータが知らぬ間に外部へ転送されてしまう恐れがある。
実は、ブラウザ上でユーザーが「何を入力し、何を送信したのか」は、既存の対策で見過ごされがちな領域であり、多くの企業にとって対策の穴になりやすい。クラウドサービスが広がり、業務の大半がブラウザ上で完結するようになった今こそ、さらに AI 活用がより身近になる今こそ、ブラウザを起点とした新たなデータ保護の発想が不可欠だと言えるだろう。
攻めの AI 活用を安全に支える Chrome Enterprise
こうした課題に対して有効なのが、AI への入口となるブラウザそのものにセキュリティ機能を組み込むアプローチだ。AI 活用と統制を二者択一にせず、両立させる点に特徴がある。
Chrome Enterprise は、組織で利用されている Chrome ブラウザのポリシーや設定の一括制御・利用状況の可視化といった多彩な管理機能を備えたソリューションで、追加コストなく導入・利用できる「Chrome Enterprise Core」と、さらに高度な機能を備えた有償の「Chrome Enterprise Premium」の 2 つがラインアップとしてある。 ここからは、ここまで紹介してきた AI を組織が安全に利用できるようにするための機能を紹介していく。
第一歩となる具体的なソリューションが「Chrome Enterprise Core」である。追加コスト不要で導入でき、組織内の Chrome ブラウザの一元管理やポリシーの一括制御・配信が可能になる。IT 管理者は、どの AI 機能をどのユーザーに許可し、データをどう扱うかを管理できるほか、各ユーザーのブラウザ利用状況やリスクの高い行動を可視化することも可能だ。
AI のデフォルトポリシーも設定でき、Chrome Enterprise Core で管理されているブラウザであれば、デフォルトで AI への学習が許可されないように設定をすることができる。「AI 機能をまだ全社展開せず様子見したい」という企業であれば、AI 機能を段階的に必要な部署ごとに配布する設定もできる。
さらに、ユーザーに代わって自律的にブラウザ操作を行う「Auto Browse」機能についても、この無償の Chrome Enterprise Core で詳細にコントロール可能だ。管理者は、URL 単位の「許可リスト」や「ブロックリスト」ポリシーを設定することで、「安全な社内 SaaS ツールでのみ Auto Browse の自律動作を許可し、個人情報や財務データを扱う特定のウェブシステム上では自動操作をブロックする」といった、高度かつ安全な運用を追加コストなしで即座に実現できる。
AI 活用において強力なデータ保護を実現するのが、有償版の「Chrome Enterprise Premium」である。ブラウザの監視機能を使えば、この機能の管理対象となるユーザーの操作はすべてログとして記録されるため、「いつ・誰が・どの端末で・どのデータを扱おうとしたのか」を後から追跡できる。シャドー AI の利用をブロックすると同時に任意のメッセージで警告を表示し、会社が容認する AI サービスへ誘導するといった運用も可能で、禁止と啓蒙を両立しながら、攻めの AI 活用を安全に支えることができる。
また、ブラウザで利用されるあらゆる AI の利用に DLP(データ損失防止)機能を適用することができ、ブラウザ上で行われる特定のファイル アップロード・ダウンロード、コピー & ペースト、印刷、スクリーンショットなどをリアルタイムに監査し、事前に設定したポリシーに応じて警告またはブロックできる。

特定の文字列を含むファイルのアップロード制御、コピー&ペースト制御、スクリーンショットの防止、重要なファイルへの透かしの追加など、データ漏えいを防ぐ多彩な機能を提供
制御の対象は、あらかじめ用意されたデータセットに加え、自社独自の単語リストや、正規表現などでも設定可能だ。ほかにも URL フィルタリング機能を使うことで、未承認の AI サービスカテゴリ全体へのアクセスをブロックしたり、特定のユーザーやグループ、BYOD 端末など条件を変えて制御したりできる。日々生成 AI サービスが増えていく中でカテゴリ単位での制御は効率的になるだろう。
また、 DLP の機能は、冒頭で紹介した Gemini in Chome で情報を入力する際にも適用可能だ。例えば、顧客情報が表示された Web システムの画面を開いたまま「このページを要約して」と依頼した場合でも、ページ内の機密データが Gemini へ送信される前に、ポリシーに応じて警告やブロックを行える。
AI が日常化する時代こそ、すべての企業にブラウザ セキュリティを
先述した Gemini in Chrome のように、ブラウザ上に AI が深く統合され、データの処理ややり取りが高速化する現在。ブラウザは業務のプラットフォームへ進化すると同時に攻撃者にとっても価値のある攻撃対象となる。だからこそ、この接点を起点にセキュリティを固める「ブラウザそのもののセキュリティ基盤化」が不可欠なのだ。
Chrome Enterprise の最大の利点は、従業員が普段から使い慣れた Chrome ブラウザ上でセキュリティ対策をカバーできる点にある。専用エージェントを各端末にインストールする手間もなく、使い方の変更を強いることもない。ユーザーの操作性を損なわずに導入でき、自然と組織の重要データを守ることができる。
強力な DLP や URL フィルタリング機能はもちろん、ファイルのディープ スキャンによるマルウェア対策や、ユーザーや端末の状態に応じてアクセスを動的に制御するコンテキスト アウェア アクセスを備えた Chrome Enterprise Premium の導入は、現代の IT 管理者が選ぶべき現実的かつ最適な一手となるだろう。今回紹介していない Chrome Enterprise Premium の機能については、以下の参考記事でも詳しく解説している。ぜひ併せてご一読いただき、自社のセキュリティ強化のヒントにしていただきたい。
参考記事:AI 時代のセキュリティ対策 AI 普及によって生じるリスクをなくす現実解とは?
まずは Chrome Enterprise Core で自社のリスクを可視化し、そこから Chrome Enterprise Premium への移行が推奨される。AI 時代のセキュリティ高度化に向けて、できるところから着実に取り組んでみてはいかがだろうか。

