【年頭速報:調査&分析】2025年 企業における業績とIT支出の見通しと要因(前編)

ノークリサーチは2025年の年頭に際し、企業において経営またはIT管理/運用に携わるビジネスパーソンを対象に業績やIT支出の見通しに関するWebアンケート調査を実施し、その分析結果を発表した。

株式会社ノークリサーチ

2025-01-14 12:00

<国内外の変化によって不透明さが増す中、年商/業種/世代の違いを踏まえた実態把握が重要> ■「業績とIT支出が共に上向く」という回答は約3割に達するが、年商規模による差が大きい ■小規模企業では「働き方改革や世代の違いに起因する企業文化の変遷」を好機とすべき ■建設業では価格転嫁や賃上げに伴う負担を軽減するためのコスト削減提案は奏功しない ■「海外企業による日本国内への工場誘致」への期待は20~30代の方が40~60代より高い
PRESS RELEASE(報道関係者各位) 2025年1月14日

【年頭速報:調査&分析】2025年 企業における業績とIT支出の見通しと要因(前編)

調査設計/分析/執筆: 岩上由高


ノークリサーチ(本社〒160-0022東京都新宿区新宿2-13-10武蔵野ビル5階23号室 代表:伊嶋謙ニ TEL:03-5361-7880URL:http//www.norkresearch.co.jp)は2025年の年頭に際し、企業において経営またはIT管理/運用に携わるビジネスパーソン(有効回答件数1304人)を対象に業績やIT支出の見通しに関するWebアンケート調査を実施し、その分析結果を発表した。


<国内外の変化によって不透明さが増す中、年商/業種/世代の違いを踏まえた実態把握が重要>
■「業績とIT支出が共に上向く」という回答は約3割に達するが、年商規模による差が大きい
■小規模企業では「働き方改革や世代の違いに起因する企業文化の変遷」を好機とすべき
■建設業では価格転嫁や賃上げに伴う負担を軽減するためのコスト削減提案は奏功しない
■「海外企業による日本国内への工場誘致」への期待は20~30代の方が40~60代より高い


有効回答: 1304人(2025年1月5日調査実施)
対象職責:企業で経営またはIT管理/運用に携わる職責
企業年商:5億円未満/5~50億円/50~500億円/500億円以上
対象業種:製造業/建設業/卸・小売業/サービス業
対象地域:全国(北海道地方、東北地方、関東地方、北陸地方、中部地方、近畿地方、中国地方、四国地方、九州/沖縄地方)


■「業績とIT支出が共に上向く」という回答は約3割に達するが、年商規模による差が大きい
例年、ノークリサーチでは「年頭リリース」として、前年の調査結果を元に今後予想されるIT活用動向について述べている。だが、2024年末の段階から国内外では様々な変化が生じており、2025年の動向を見極める上では既存の調査結果だけでは十分とは言えない。そこで年明け間もない2025年1月5日に、企業において経営またはIT管理/運用に携わるビジネスパーソン(有効回答1304人)を対象として、2025年の業績およびIT支出の見通しに関する調査を実施した。(サンプル属性の詳細は4ページを参照)
左下のグラフは回答者が勤める企業の業績(経常利益)とIT支出の2025年における見通し(2024年と比べた時の増減)を尋ねた全体集計結果である。「業績は増加、IT支出も増加」の値は29.1%となっており、2025年には業績とIT支出が共に上向くと考えるビジネスパーソンは約3割に達している。だが、「業績は増減なし、IT支出も増減なし」(17.4%)や「全く予想がつかない」(18.3%)といった値も踏まえると、日本企業全体が好転するとは言えない状況となっている。
さらに、右上のグラフは「業績は増加、IT支出も増加」の回答割合を年商別に集計したものだ。年商500億円以上の大企業に勤める場合には、5割弱( 47.1%)が業績とIT支出の双方が今後上向くと予想していることがわかる。一方、年商5億円未満の小規模企業では2割強(21.5%)に留まっており、大企業と小規模企業で明暗が分かれている状況が改めて確認できる。だが、大企業の数が約3,500社であるのに対し、小規模企業の数は約1,228,300社と圧倒的に多い。したがって、日本国内のIT活用を底上げしていくためには、広い裾野を意識した施策を進めていくことも大切だ。
次頁以降では業績やIT支出の増減に影響を与える要因を尋ねた調査結果などを交えながら、上記に述べた取り組みを進める際のポイントについて考えていく。


■小規模企業では「働き方改革や世代の違いに起因する企業文化の変遷」を好機とすべき
本リリースの調査では、以下の選択肢を列挙して「業績やIT支出における増減の背景/要因となる事柄」は何か?についても尋ねている。
<<ビジネス環境に関連する項目>>
・価格転嫁の停滞(コスト上昇に見合う値上げができない)
・働き方改革や世代の違いに起因する企業文化の変遷
・海外企業による日本国内への工場誘致(半導体など)
<<社会環境に関連する項目>>
・賃上げ要請や社会保障費の増加が足かせとなる人材不足
・少子高齢化による労働者人口の減少に起因した人材不足
・超高齢化社会の到来(5人に1人が75歳以上の後期高齢者)
・人材のリスキリング(従業員の職能を開発/転換する試み)
・石破政権が少数与党であることに伴う政策運営の鈍化
<<自然環境に関連する項目>>
・温暖化や気候変動による自然災害の増加および激甚化
・GX(グリーントランスフォーメーション)に向けた取り組み
<<政府/行政の取り組みや法改正に関連する項目>>
・業種毎や地域毎の様々な規制を緩和する法改正の取り組み
・社会生活に関わる法改正(選択的夫婦別姓、入国管理など)
・大阪・関西万博開催に伴う観光客の増加や経済の活性化
<<諸外国や世界経済に関連する項目>>
・米国新政権(トランプ政権)の経済方針(関税引き上げなど)
・台湾問題や貿易摩擦などに起因する米中対立の深刻化
・欧州(イギリス、フランス、ドイツなど)での政局の不安定化
<<ITの進化やIT関連の取り組みに関する項目>>
・個人レベルの仕事をAIが代行する「AIエージェント」の登場
・経産省が2018年にDXレポートで発表した2025年の崖
・「IT内製化」(企業が自力で情報システムを構築/運営)
<<その他>>
・現時点では判断できない
前頁では「業績は増加、IT支出も増加」の回答割合が大企業で高く、小規模企業で低いことを確認した。ここではグラフは割愛するが、その裏返しとして「業績は増減なし、IT支出も増減なし」は大企業で低く、小規模企業で高くなっており、小規模企業における同項目の回答割合は2割超に達する。したがって、小規模企業において業績とIT支出が共に上向かない背景/要因には何があるのか?を探る必要がある。それを示したものが以下のグラフだ。上記に列挙した背景/要因のうち、 「業績は増減なし、IT支出も増減なし」に該当する小規模企業における回答割合が全体平均と比べて±10ポイント超である2項目をプロットしたものだ。
業績とIT支出で共に増減が見られない小規模企業では 「価格転嫁の停滞」という課題を抱える割合が高い一方で、「企業文化の変遷」(※)という変化がないことが確認できる。
一方、以下のグラフは「業績は増加、IT支出も増加」である場合に、※の値を年商別に集計した結果だ。 いずれの年商帯においても、※を背景/要因として挙げる割合は全体平均と比べて高く、かつその差は年商規模の小さな企業ほど大きい。
したがって、従業員数の少ない小規模企業においても働き方改革や世代の違いに起因する企業文化の変遷を前向きに捉え、ITツールによる新たな情報共有や意思決定のプロセスを創り出していくことが、業績やIT支出の増加という点においても有効に働くと考えられる。
次頁では、業種別に見た場合の分析結果について述べていく。


■建設業では価格転嫁や賃上げに伴う負担を軽減するためのコスト削減提案は奏功しない
前頁までは年商規模による違いに着目してきたが、本リリースの調査では業種別の集計/分析も行っている。左下のグラフは業績(経常利益)とIT支出の2025年における見通し(2024年と比べた時の増減)を尋ねた結果のうち、「全く予想がつかない」(※)という回答の値を業種別にプロットしたものだ。※の回答割合は製造業と建設業では全体平均よりも低く、卸・小売業とサービス業では高くなっている。つまり、2025年の業績やIT支出について製造業と建設業は比較的見通しが立っている一方、卸・小売業やサービス業では不透明さが相対的に高まっている状況と捉えることができる。 建設業は4つの業種区分の中では「全く予想がつかない」の回答割合が最も低く、不確定要素が比較的少ない業種と言える。
ただし、右上のグラフが示すように建設業では「業績は増加、IT支出は減少」(A)と「業績は減少、IT支出は増加」(B)の値がいずれも全体平均と比べて高い。したがって、IT製品/サービスを提案するIT企業としてはAのケースとBのケースを見極めることが大切となってくる。そこで、AとBのケースで全体平均と比べた差異が顕著な背景/要因を示したものが以下のグラフだ。 「海外企業による日本国内への工場誘致」はBにおいて高い値を示していることがわかる。したがって、海外からの工場誘致の影響を受けている建設業の場合は業績の見通しは減少であってもIT支出の増加が見込める可能性がある。一方、「価格転嫁の停滞」や「賃上げ要請などが足かせとなる人材不足」はBにおける値が全体平均やAと比べて低い。したがって、価格転嫁が見込めない or 賃上げ原資確保のために収益が圧迫されている建設業に対してコスト削減を目的としたIT活用提案を行ったとしても、IT支出の増加はあまり期待できないと考えられる。 このように年商別だけでなく、業種別に見た視点も持っておくことが大切だ。さらに、次頁では本調査の対象となったビジネスパーソンの年代に着目した分析結果について述べる。


■「海外企業による日本国内への工場誘致」への期待は20~30代の方が40~60代より高い
通常、ノークリサーチにおける調査では「年商500億円未満&全業種&全地域の企業1300社(有効回答件数、1社1レコード)」といったように企業を単位としたサンプリングを行っているが、冒頭でも述べたように本リリースでは「企業において経営またはIT管理/運用に携わるビジネスパーソン(有効回答1304人)」といったように個人を単位としたサンプリングを行っている。そこで2ページに列挙した「業績やIT支出における増減の背景/要因となる事柄」のうちで、「海外企業による日本国内への工場誘致(半導体など)」および「賃上げ要請や社会保障費の増加が足かせとなる人材不足」の回答割合をビジネスパーソンの年代別に集計した結果が以下のグラフである。
「賃上げ要請や社会保障費の増加が足かせとなる人材不足」の値は年代によって大きな差が見られない一方で、「海外企業による日本国内への工場誘致(半導体など)」は20代と30代における値が40~60代と比較して高くなっている。このように海外から日本への投資については若い世代の方が期待感が強いと考えられる。このように今後は世代による意識の違いもユーザ企業を理解する上で重要となる。
ここでは調査結果のごく一部を紹介したが、本リリースの調査結果に基づく分析/提言は「ブリーフィングサービス」(IT企業毎のニーズに応じて本リリースの調査データを集計/分析)として提供される。(ブリーフィングサービスの詳細については下記資料を参照 (リンク ») )


本データの無断引用・転載を禁じます。引用・転載をご希望の場合は下記をご参照の上、担当窓口にお問い合わせください。
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当調査データに関するお問い合わせ
株式会社 ノークリサーチ 担当:岩上 由高
〒160-0022 東京都新宿区新宿2-13-10 武蔵野ビル5階23号室
TEL 03-5361-7880 FAX 03-5361-7881
Mail: inform@norkresearch.co.jp
Web: www.norkresearch.co.jp
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