日本テラデータは11月7日、都内で記者会見を開き、次世代アナリティクスプラットフォームと位置付ける「Teradata Vantage」の国内提供を開始したと発表した。代表取締役社長の高橋倫二氏は、多様なデータを統合分析し、ビジネスの成果を打ち出す事例を取り上げるとともに、「複雑な顧客需要に応えられるのはTeradata Vantageのみ」と語った。
日本テラデータ 代表取締役社長の高橋倫二氏
記者会見では、Teradataが10月に米国ラスベガスで開催した年次イベント「Teradata Analytics Universe」の内容がダイジェストで紹介された。主催者発表によれば、同イベントには約3000人の顧客が参加し、200以上のセッションが行われた。イベントでは最高執行責任者(COO)のOliver Ratzesberger氏が「Stop Buying “Analytics”(アナリティクスツールを買うのは止めよう)」と発言、高橋氏はこの発言に最初は戸惑ったという。
データのサイロ化が企業の課題となる昨今、部門を超えた分析が求められているが、「ツールを入れれば解決するのではない。ビジネスの回答を導き出す必要がある。だからこそ価値のある答えに投資」(高橋氏)と述べ、その投資に見合うのがTeradata Vantageと強調した。
併せてTeradataがテクノロジ専門調査会社Vanson Bourneに依頼した調査の結果も発表している。それによれば、米国企業の幹部社員の74%が「分析技術が複雑過ぎる」とし、全回答者の79%が「データへのアクセスが制限されている」という状況だ。ビジネス部門の意思決定者の25%は「データサイエンティストの手を借りずに分析から得た知見を活用できない」と回答した。
日本テラデータ テラデータ・コンサルティング本部 EC&COMアカウント部 ソリューション・アーキテクトの大谷森介氏
このように20兆円規模に拡大したアナリティクス市場でも多くの課題を含み、高橋氏は「複雑性の解決やコスト最適化が不十分。多くの企業をさらなる高見へ導くためには、簡素で一貫性のある分析プラットフォームが必要だろう」とした。その選択肢として同社が提供するTeradata Vantageの詳細をテラデータ・コンサルティング本部 EC&COMアカウント部 ソリューション・アーキテクトの大谷森介氏が解説した。
Teradata Vantageは、Teradata DatabaseやAsterの技術を統合したソリューションとなる。分析機能の核に当たるTeradata SQL Engineや、180以上の事前構築済み・分析関数でデータ加工から可視化まで行うGraph EngineおよびMachine Learning Engineで構成される。分析言語はSQL以外にPythonやR、分析ツールなど複数に対応し、データサイエンティストやビジネスアナリストが求める「分析でビジネスの解を得る」(大谷氏)ことが可能になる。
だが日本テラデータは、既存の分析エコシステムを否定せず、「全てをTeradata Vantageに置き換えるものではなく、多様なデータと格納するストレージ、分析エンジン、堅牢なエコシステムを構築する核になる」(大谷氏)と説明した。SQLベースで他のプラットフォームにアクセスするコネクタのQueryGridも、新たにドライバや分析パッケージを追加することで、「データサイエンティストやビジネスアナリストは使い慣れた環境で対話的に分析処理が可能になる」(大谷氏)という。
Teradata Vantageの初期リリースでの内容
また、データベース内で分析を実現するIn-DB分析については、SQL Extension for Jupyterの提供を開始した。ある実験では、従来240分を要した分析を10分に短縮、Verizon Wirelessの概念実証によれば、分析結果の正解率はチューニングなしで64%、チューニング後は69.8%という結果だった。パフォーマンスも100万件のモデルトレーニングが20分未満、2億件のモデルスコアリングも30分未満だったという。本格的な運用ではなく小規模環境で実施したものだが、「『本番稼働の条件をクリアしている』と評価いただいた」(大谷氏)とのことだ。
Teradata Vantageは、2019年3月にパフォーマンス改善やパブリッククラウドでの稼働を予定する。同年9月には、GPU対応済み深層学習機能の提供やAmazon Web Services(AWS)およびMicrosoft Azureのオブジェクトストレージアクセス機能の実装も予定している。
Teradata Vantageのロードマップ