データインテリジェンスを再定義--テラデータが新ソリューションを展開

阿久津良和

2018-10-16 09:58

 Teradataは10月14日からの5日間、米国ラスベガスで年次イベント「Teradata Analytics Universe 2018」を開催している。「次世代のアナリティクスカンファレンス」と題して、多彩なユーザー事例を交えた講演が行われている。本稿では初日15日の基調講演で語られた内容を紹介する。

Teradata 最高執行責任者のOliver Ratzesberger氏
Teradata 最高執行責任者のOliver Ratzesberger氏

 基調講演では最初に登壇した最高執行責任者(COO)のOliver Ratzesberger氏が、同社について「これまではDWH(データウェアハウス)だったが、今後はユビキタスなデータを届ける企業へ変革する」と述べ、8日に発表した自社ロゴを含むブランドの再構築をアピール。既に米国の分析市場は2000億ドル規模に拡大しているが、多数のベンダーが乱立する状況を踏まえて、「(既存の)アナリティクスツールを買うのは止めよう」(Ratzesberger氏)と提案しつつ、アナリティクス市場における「パーベイシブ データ インテリジェンス」を定義した。

 「パーベイシブ データ インテリジェンス」とは、直訳すれば「データインテリジェンスの普及」だが、同社は独自のクエリ規模や量を問わずにデータを取得する分析技術を用いて、企業のビジネスを加速させることを聴講者に確約した。また、ブラックホールの衝突など宇宙の現象を測定するLIGO(レーザー干渉計重力波観測所)を引用しつつ、「われわれは宇宙に存在し、そこで意義を見いださなければならない。LIGOによって宇宙における新たな答えを発見できるように、われわれは企業におけるLIGOのような存在を目指す」(Ratzesberger氏)と戦略の一端を語った。

 合わせてRatzesberger氏は、幾つかの事例を披露。オーストラリアの航空会社Qantas Airwaysでは、年間の燃料費が32億ドルに上るが、200万以上のデータポイントをTeradetaのソリューションで見直し、燃料消費率を1.5%改善した。米通信キャリアのVerizon Communicationsは、業界標準の月間解約率3~4%を1.2%まで抑制させた。1億5000万ユーザーの動向をAI(人工知能)や予測分析によって、月間200万人におよぶ加入者の離脱を回避しているという。

 変わった事例としては、Kaiser Permanenteが薬局データを分析して、「処方薬を飲まない」「診察予約を守らない」患者をトラッキングし、全米で亡くなる年間12万5000人の10%を救い、3000億ドルの経費削減を実現した。

President 兼 最高経営責任者(CEO)のVictor Lund氏
President 兼 最高経営責任者(CEO)のVictor Lund氏

 続いて登壇した最高経営責任者(CEO)のVictor Lund氏は、「現在のビジネスは、保持するデータの位置や内容を知らなければならない」と語り、同社が以前から提言してきた「Teradata Everywhere」のプラットフォームとなる「Teradata Vantage」なら課題を解決できるとアピールした。2017年時点で概念を発表した分析機能と分析エンジンを単一の環境内に統合し、SQLやR、Pythonなどの言語や、Teradata Aster Database、Teradata Studioなどのツール統合を果たしている。

 別途設けたパネルディスカッションでは、「Vantageという基幹製品を活用することで、データやエコシステムに対するアプローチをシンプルにできる」(EVP of Product and TechnologyのReema Poddar氏)。「欧州の某企業は、Hadoopで運用していた業務維持に年間10億ドルを投資していたが成果につながらない。Vantageこそが解決策になる」(Ratzesberger氏)事例を交えて説明した。

米国政府で2015~2017年に「第3のCIO」を務めたTony Scott氏
米国政府で2015~2017年に「第3のCIO」を務めたTony Scott氏

 基調講演には複数のゲストも登壇。その一人が、米国政府で2015年から2017年まで「第3のCIO(最高情報責任者)」を務めたTony Scott氏である。MicrosoftやGeneral Motors、VMwareなど多くの企業を歴任してきた同氏は、「古い技術で顧客にサービスを提供してきた企業は、UX(ユーザー体験)が企業ブランドであることに気づいていない」と語る。その解決方法として、顧客体験を改善してユーザーの離反を防ぐ「ブランド体験」の向上や、顧客データに裏付けられた「ブランドの約束」、そして「ブランドの価値」を高めることで、ビジネスは成長可能と説明した。

 さらに、自身が自動車愛好者であることから、1965年型ムスタングと2017年型ムスタングを比較しつつ、ITセキュリティにおけるアプローチを語った。「1965年型に2017年型と同等の機能を備えるのは、コストを除いても非現実的」(Scott氏)であり、古いITシステムの改善に通じるという。この発想はビジネスプロセスも同様で、「古い技術で現在のビジネス需要に合わせるのはコストがかかり、同じ結果を得ることは難しい」とScott氏。だからこそ、経営層はテクノロジが提示する戦略的機会を捉えつつ、過小投資に伴うリスクへの理解度と技術を理解する人材を集めなければならないと述べた。

(取材協力:日本テラデータ)

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