海外コメンタリー

暗号化をめぐる攻防、解決策を見出せるか

Steve Ranger (ZDNET.com) 翻訳校正: 編集部

2019-08-28 06:30

 欧米諸国の政府は、ある種の必然的な理由から、暗号化テクノロジーという長年の拒否しきれない敵に新たな一撃を加えようとしている。

 7月下旬、米国のWilliam Barr司法長官は、エンドツーエンド暗号化は「捜査令状を無効化する」技術であり、この技術を使用することは「犯罪者が罰を受けることなく、当局が介入できない場所で、秘密裏に悪事を働くことを可能にするものだ」と警告した。

 続いて英国の新しい内務大臣Priti Patel氏も、Facebook傘下の「WhatsApp」をはじめとするメッセージングサービスがエンドツーエンドでメッセージを暗号化していることを批判した。

 「犯罪者が悪用する可能性を知っていながら、エンドツーエンド暗号化を利用して、コンテンツへのアクセスを無差別に拒否するように設計されたシステムがある限り、われわれは行動をやめない」とPatel氏は言う。

 「これは抽象論ではない。Facebookは先日、すべてのメッセージングプラットフォームにエンドツーエンド暗号化を適用する計画を発表した。この決定は、われわれが連携して対処すべき、深刻な課題を突きつけている」(Patel氏)

 Patel氏は政府の具体的な行動計画には言及せず、Facebookやその他のテクノロジー企業に「政府と速やかに詳細を議論する」ことを求めるにとどまった。

 各国政府は近年、政府の暗号化解除要請に応じるようテクノロジー企業に繰り返し呼びかけているが、成果はほとんど出ていない。

 英国の労働党で「影の内務大臣」であるDiane Abbott氏は米ZDNetに次のように語った。「新しい内務大臣のPatel氏は、前任者たちの誤りを繰り返している。警察や公安組織が暗号化通信に無差別にアクセスできるようになれば、その通信は消滅するだろう。そのような通信を信頼する人はいないからだ。このことをPatel氏は理解していないようだ」

 「ご存じの通り、現政権はエビデンスを好まない。だが、裁判所が承認した、ごく一握りの通信だけに法執行機関や関係当局のアクセスを認める仕組み以外はうまくいかないことを現政権は理解すべきだ。内務大臣が提唱している方法では、犯罪者やテロリストは地下に潜り、一般市民だけがプライバシーの権利を奪われることになる」(Abbott氏)

 実を言うと、英国政府は理論上はすでに、メッセージングサービスの暗号解除をテクノロジー企業に要請する権限を持っている。

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