さまざまなシーンで適用されるようになってきた顔認識技術に対し、米国で法規制を求める声が高まってきている。この動き、注視しておく必要がありそうだ。
議論の呼び水になったMicrosoftの提言
サンフランシスコ市が米国の都市として初めて、顔認識技術の使用を禁止するかもしれないという報道が先ごろ、一部メディアで流れた。同技術の使用禁止を含む条例案が1月下旬、市議会に提出されたからだ。
もし可決すれば、同技術の禁止に加え、市当局は新たな監視技術を使ったシステムを購入する前に、委員会の承認を得なければならなくなる。市当局は、そのツールを必要とする理由および潜在的な危険性について、公的に説明する義務を負うことになるという。
こうした動きが出てきた背景として、Microsoftが2018年来、高度化する顔認識技術に対応するために、政府による規制と業界における方策が必要だと訴えてきたことがある。12月6日には、同社のプレジデントで最高法務責任者を務めるBrad Smith氏が公式ブログで次のように述べている(写真1)。
写真1:Microsoftで最高法務責任者を務めるBrad Smith氏の公式ブログから
「当社は2019年中に、政府が顔認識技術を規制するための法律を制定することが重要であると考えている。何も行動を取らなければ、5年後には顔認識サービスが社会的問題を悪化させるような状況に直面する可能性がある。一度そうなってしまえば、課題を解決することは非常に困難となるだろう」
さらに、こう続けている。
「特に、社会的責任と市場での成功のいずれかを選択しなければならないテクノロジ企業が、徹底的な市場競争において世界のために最善を尽くすことは考えにくい。このような状況を避ける唯一の方法は、健全な市場を保つための責任の基準を作ることだ。その明確な基準を作るためには、この技術を開発し、活用する企業が、法の支配によって管理されることが必要だ」
その上で、Smith氏は現在の顔認識技術が抱える課題として、「偏見や差別の助長」「プライバシー侵害」「政府機関による監視やそれに伴う人権侵害」といった3つを挙げ、同社として取り組む6つの行動規範を掲げた。このSmith氏のブログは、日本マイクロソフトが翻訳して同社サイトに掲載しているので参照していただきたい。