5年前の6月、Edward Snowden氏は1万件近くに及ぶ大量の機密性の高い文書を報道関係者に引き渡し、これによって米国政府による大規模な国民監視活動や、多くの国際的情報収集パートナーによる情報収集の範囲と規模が暴露された。
第1に、米国の国家安全保障局(NSA)が毎日、膨大な数の米国人の通話記録を収集していたことが明らかになった。その後、米国の大手IT企業が、通信監視プログラム「PRISM」に同意の上で関与していたことで糾弾された。それ以降も情報の暴露は続いた。
報道機関は米政府の不正行為や非倫理的な侵入活動に焦点を当て、破壊力が大きいニュースを報じてきたが、これらはSnowden氏が勤務していたハワイにあるNSAの施設から持ち出された文書のごく一部にすぎないと言われている。同氏はたった数日の間に、政府が長年積み上げてきた仕事をひっくり返した。
最近行われたインタビューで、今や34歳となったスノーデン氏は(米国の政府機関の指名手配を受けており、現在はロシアのモスクワに亡命中)、情報を漏えいさせたことは後悔していないと語っている。
しかし、あれから5年間経っても、状況にほとんど進展がないことに失望している人もいる。米国内で米国人の通話記録を収集することを禁じる法律が制定されたものの、米政府は暴露前からNSAの盗聴を可能にしていた法的枠組みの下で、外国人(および米国人)に対する監視を続けており、2018年には、米議会が政府の通信傍受を行う権利をほとんど議論をしないまま再び認めてしまっている。また、一般にはあまり知られていないが、あらゆる情報が収集の対象になり得る大統領令が存在しており、政府に無制限に情報収集を行う権限を与えている。政府の監視行動を暴露したある元NSA幹部は、この大統領令は米国人のプライバシーに対する「直接的な脅威」だと述べている。
またその後、NSAの監視活動の重要なパートナーである英国でも、ある人権擁護活動家が「民主国家で制定されたもっとも過激な監視法制」と表現した法律を制定して、スパイ活動を強化している。
議会がまったく事態を改善できていない一方で、Snowden氏の暴露で糾弾を受けたIT業界では事態が好転している。
大手IT企業は、Snowden氏の暴露情報が公開された後、ユーザーの信頼を取り戻すために積極的に問題の解決に取り組んだ。IT企業は政府に情報を引き渡した際の秘密主義と口外禁止命令に縛られているため、可能だったのは将来的にこうした過度なアクセスができないようにすることだけだった。
Snowden氏の暴露は5年分の技術的な変化を引き起こし、NSAやそのパートナーの活動に打撃を与えた。