日本AMDは、サーバー/ワークステーション向けとデスクトップPC向けの64ビットCPUに、2つのCPUコア(デュアルコア)を搭載した新製品を発表した。前者が「デュアルコア AMD Opteronプロセッサ」で、後者が「AMD Athlon 64 X2 デュアルコア・プロセッサ」という名前になる。
両製品ともデュアルコア化を実現することで、複数のプログラムを同時に処理するマルチスレッド環境により、高い性能を発揮できるようになる。また、CPUの処理能力の上昇に伴う消費電力の増大も抑えられる。この低消費電力を実現には、動作周波数と消費電力の関係が大きく影響する。
かつては、CPUの性能を引き上げるためには、CPU内のトランジスタ数を増やすとともに、動作周波数を引き上げるというアプローチをとってきた。しかし、動作周波数の向上は消費電力の拡大を促すことになる。これを防ぐために配線やトランジスタをより微細化することで、電流量を削減したり動作電圧を引き下げたりするトレードオフの策を講じてきた。
しかし動作周波数が4GHzに及ぶまでになり、非常に高速化している現在、数百MHzの動作周波数引き上げは単純計算でも数%〜十数%程度しか処理能力は向上しない。いわば、努力が実を結ぶ可能性が低くなってきたのだ。
これに対し、1つのCPUの内部に複数のCPUコアを装備するマルチコアのアプローチであれば、周波数を引き上げるよりも容易に性能を向上できる。加えて、CPUコアを複数詰め込むために微細化が必要になり、消費電力の上昇も抑えられるというわけだ。
AMDでは「最高の電力当たりの性能を提供できる」と、これまでとほとんど変わらない消費電力でコンピュータ能力を増強できる点をアピールしている。
今回、AMDが出荷する「デュアルコア AMD Opteronプロセッサ」は、90ナノメートルプロセスで製造され、4基あるいは8基のプロセッサを搭載するサーバ向けの865/870/875モデル(動作周波数は1.8GHz/2.0GHz/2.2GHz)が即日出荷モデルとして用意される。また、1〜2基のCPUを搭載すハードウェア向けの265/270/275モデル(動作周波数は1.8GHz/2.0GHz/2.2GHz)が5月末の出荷予定となっている。消費電力はそれぞれ、現在のプラットフォームと同様の30W/55W/95Wになるという。
一方、「AMD Athlon 64 X2 デュアルコア・プロセッサ」は、モデルナンバーが4400+、4600+、4800+の3種類が用意される。
デュアルコアAthlon、デュアルコアOpteronの両ラインアップとも、従来のシングルコア製品とピン互換を実現しているのも大きな特長といえる。既存のシングルコア製品から乗り換える場合でも、BIOSの更新は必要となるが、ボードにそのまま載せ替えることで性能向上を果たせるというメリットは大きな魅力だ。
ただ、Athlon/Opteronのコアが2つになったことで、そのまま性能が倍近く向上するかといえば、そうとはいいきれない。まず、多大なトランザクションを処理するようなマルチスレッド環境でないとシングルコアと同じような働きしかしないのに加え、AMD固有の問題もある。
ピン互換を果たすためにCPUに内蔵されるメモリコントローラが1つとなる点がその問題の1つだ。2つコアを搭載していても、メモリのアクセスは1つのコントローラで制御するため、多量の計算処理を行う場合にボトルネックとなり、性能向上を果たせない可能性がある。
なお、インテルのデュアルコアCPUも今月中に登場する予定となっている。インテルは、シングルコアで2つの処理を平行して行う「HyperThreading」をデュアルコアCPUにも搭載する予定であり、それをアドバンテージとしている。
今後、AMDとインテルが繰り広げるCPUの主導権争いの主戦場は、64ビット対応のデュアルコアCPUに移るのは確実といえる。実際にデュアルコアCPUを搭載システムが登場した際に、どちらが高い性能を発揮できるかは興味深い。だが、デュアルコア化によってCPU単位で課金されるソフトウェアライセンスをそれぞれの企業がどのような形で契約するかという問題や、低消費電力をどこまで実現できるかといった点も焦点となるに違いない。