レイヤー3スイッチ大手で米Extreme Networksの日本法人であるエクストリームネットワークスは8月31日、代表取締役社長に就任した井戸直樹氏の所信表明を実施した。「データ、音声、動画を1つのネットワーク上に統合化する」(井戸氏)というビジョンを示し、こうした統合ネットワーク分野での市場のリーダーになるという己のミッションを明らかにした。
井戸氏は1999年3月の日本法人設立時のメンバーの1人であり、社長就任までの6年間、技術畑を歩み続けた。直近の肩書きは技術本部長である。以下は、技術者としての視点が入った、社長就任所信表明の概要である。
井戸氏: エクストリームネットワークスが注力する分野は大きく以下の5分野、IP電話、ワイヤレス、広域ネットワーク、セキュリティ、性能向上のためのサーバ・クラスタ、である。いずれも今後成長が見込める大きなマーケットだ。
IP電話は急速に企業に普及する。市場にある現行機種のPBX(Private Branch Exchange、構内交換機)はIP化が完了している。企業はPBXをリプレースするタイミングでIP電話に切り替える。ワイヤレス環境も、唯一の課題はセキュリティであり、IEEE 802.1xの充実などセキュリティ対策さえ施せば需要は高い。
HPCC(High Performance Computing Clusters、性能向上のためのサーバ・クラスタ)は、急激に需要が拡大しているマーケットだ。従来はInfiniBandなど専用インタフェースを用いる高価なネットワークが用いられてきたが、ギガビット・イーサネットを使った方が費用対効果が高いことが分かっている。HPCC需要の高まりはネットワーク機器の売上げに直接結び付く。
以上がフォーカスするマーケットだ。こうしたマーケットに対して従来通りレイヤー3スイッチを提供する。事業を幅広く拡大するつもりはない。スイッチ・ベンダーとして、全アプリケーションが正しく機能するためのネットワーク・インフラを作りたい。
かつてはキャリア(通信事業者)とエンタープライズ(企業)のどちらに向かうのか、とよく聞かれたが、現在では意味をなさない問いだ。通信事業者を含め、顧客が求めているのは堅牢なIPスイッチ。企業向けのIP機器がそのまま通信事業者でも使われている。IP機器自体の信頼性が高まっているほか、冗長化構成も進化している。我々のEAPSと呼ぶ冗長化機構は50ミリ秒で処理を正常系に切り替える。
我々のスイッチの最大の利点は、独自開発のASICと、モジュール型のオペレーティング・システム「ExtreamWare XOS」にある。米Extreme NetworksはXOSの開発に投資を続ける。今後はまた、XOSなどのソフトウェア資産の他社への技術供与も視野に入れる。国内でもベンダーにソフトウェアを売り込む。
XOSはマルチタスクのモジュール型OSであり、単一のOSよりも可用性が高い。プロセスが停止してもOS全体が停止することはなく、リカバリが可能だ。新たなモジュールの追加やソフトウェアのアップグレードの場面でも、スイッチの機能を停止することなく業務を継続できる。これはちょうどWindows95とWindows XPの差に似ている。Windows XPは新規アプリケーションの追加やアプリケーションのクラッシュ時にOSをリブートする必要がない。
弊社の顧客には、8000台のスイッチを保有する企業がある。考えてみたまえ。ソフトウェアのアップデートで8000台のスイッチを止める運用管理コストを。こうした需要に適するのがXOSのようなモジュール型OSなのだ。
デモを見せよう。XOSを搭載したレイヤー3スイッチ「Summit X450-24t」にSSHサーバ・プログラムをインストールしてみる。動画を配信中にだ。こうしたXOSの拡張中にも、配信中の動画に一切の影響も及ぼしていない。